PTCジャパンは2010年3月3日、3次元CADおよび管理ツール「CoCreate 17.0」を発表した。同製品は2010年の第2四半期(4〜6月)より世界同時に出荷開始される。価格は、従来製品と同じく113万5000円(税抜き)。従来製品のユーザーには保守費用(年間で24万9600円、税抜き)の範囲内で提供する。最新OSのWindows 7にも対応。
今回の製品は、「新規の場合だと、3次元CADに移行していない2次元CADユーザーあるいは現状の3次元CADで苦労しているようなユーザー、既存ユーザーなら昔のバージョンのまま使い続けている、またはメンテナンス契約が切れっぱなしのようなユーザーに訴求したい」とPTCジャパン コクリエイト事業本部長 宮川 公延氏は述べた。
CoCreate 17.0は2次元設計の考え方をできるだけ3次元設計で生かせるようにしたという。「2次元CADの設計では、さまざまなスキルの人が使え、生産性はそこそこ向上します。しかし3次元CADは優秀なエンジニアだけが十分に使いこなして生産性を大きく向上させていた状況でした。これでは、後世へのナレッジ継承も厳しいし、3次元を導入したのに2次元へ戻ってしまうなど起こり得ました」(宮川氏)。同製品では、そのジレンマを解消したいとのこと。
さらに同製品の大きな特徴である「エクスプリシットモデリング」も機能強化した。「最近は他社製品でも、ダイレクトモデリング(あるいは、そのような)機能を実装するケースが増えました。しかしCoCreateは、HP(ヒューレット・パッカード)の時代を含め約18年、ノンヒストリモデリングやダイレクトモデリングの技術に従事してきたし、その老舗であるという強い自負があります」(宮川氏)。
注:エクスプリシットモデリング」は、CoCreateのベースとなっているテクノロジーの呼称で、従来は「ダイナミックモデリング」と呼んだ。「ノンヒストリ」としても知られ、フィーチャ履歴や寸法拘束に縛られないモデリング手法のことを指し、面や形状を直接選択して変更する「ダイレクトモデリング」とは一線を画す。
17.0では、1つのワークプレーンで複数のプロファイル(閉じたスケッチ)が扱える。また下図のように雑多に引いた線もトリムして閉じた形状にしなくても、閉じた部分を自動認識し、押し出しをすることが可能だ。押し出しに使う部分も適宜、選択できる。従来バージョンのような下書き線を基にした作図や、複数のワークプレーンを駆使しての作図が不要だ。なお、修正の際には、プレビューしてから形状へ反映というプロセスはなく、リアルタイムで形状修正が進行していく。またテクスチャを張った状態で、修正を進めることもできる。
3次元駆動寸法機能は、2次元設計に近い感覚の作図を配慮して改良。寸法線の矢印を直接選択することで、基準を固定しながら、ドラッグ&ドロップでモデルの寸法値を伸び縮みさせること(寸法駆動)が可能だ。矢印ではなく線の半ばを選択すれば、対称に寸法値が駆動する。また、基準面を複数固定しての寸法駆動もできる。
パターン機能(同形状を規則的に複数複写する)も改良。アセンブリ上でパターンフィーチャを修正でき、アセンブリ拘束の条件も巻き込んだパターン寸法修正が可能だ。
新たなGUIとして「対象依存型ミニツールバー」を追加。進行している作業に合わせ、頻繁に使うだろう機能のアイコンを自動でピックアップして表示してくれる機能だ。この機能により従来バージョン比で、マウスの移動距離やクリック数を大幅短縮できるとのことだ。
米PTC コクリエイト製品開発バイスプレジデント ライナー・ツァイファン(Rainer Zeifang)氏は「17.0は、2次元設計から3次元設計へ移行する際の立ち上げ期間短縮に大きく寄与すると考えています。ユーザーの操作習熟も早くなり、コストを抑えながら短期間で生産性を高められます」と述べた。
CoCreateのモジュールでデータ管理ツール(PDM)の「CoCreate Model Manager」(以下、Model Manager)は、PTC製品開発システム(PDS)の「Windchill」との親和性を向上。WindchillのPLM環境をCoCreateユーザーでも利用可能とした。例えば、製造や加工データと設計モデルとを関連させて管理でき、製造側と設計側との連携効率化を図れる。
Model Managerでは「分離不可機能」という、外部の企業や組織にアセンブリモデルを提供する場合などでモデルを分解させないようロックできる機能も新たに追加した。また、Oracle 11gとSQL Server2007に対応。
ほかに「CoCreate Sheet Metal」(板金モジュール)、「CoCreate Cabling」(電子基板のケーブルモジュール)といったモジュールも機能強化しているとのことだ。
「CoCreateを中心としたデスクトップ製品のビジネス強化をしたいと考えています。CoCreateの営業部隊はデスクトップ製品に関する知識や経験が非常に豊富なので頼りにしています」 とPTCジャパン 社長 桑原 宏昭氏は述べた。
PLMの息吹、感じて
PTCのグローバルでの売り上げは、PLMが50%近く占めるという。欧米圏の同社ユーザーにおいては、エンタープライズPLMが順調に拡大しているとのことだ。
「2009年度は苦戦しましたが、2008年度の実績にようやくキャッチアップしました。大幅な成長は厳しそうですが、今後、確実に伸びていくだろうと考えています。これからの当社のビジネスの中心も、これまで同様にCADやPDMとなります。PLMはようやく息吹が感じられるようになったというところ。日本でのエンタープライズPLMの展開は大きな課題です」(桑原氏)。
「日本については、エンタープライズPLMの普及はまだまだです。ERPには投資をするけれども、PDMとPLMの区別がつかないからとPLMへの投資を控えてしまう傾向です。『利益が取れたか、取れなかったか』が分かるのがERPですが、プロセスから利益の判断できるのがPLMです。ここのところの日本でも、景気の後退のせいか、結果が出てからの判断では遅いという考え方が浸透し出しており、ユーザーのニーズは増えています」(宮川氏)。
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