オートデスクは2010年2月19日、同社のCAD新製品「AutoCAD 2011」と「AutoCAD LT 2011」を発表した。出荷予定日は、いずれも3月19日。バージョンアップ時の機能強化の項目は、同社製品のユーザー会(AUGI)の「ウィッシュリスト(Wish List)」に基づいているとのことだが、今回は特に要望が多く上がっていた機能を盛り込んだという。
AutoCAD 2011では、サーフェスモデリングを強化した。「サーフェス自動調整」という機能をオンにしておくことで、サーフェスのトリムを簡単に行えるという。NURBSをサポートし、より自由な曲面形状を作成できるようになったという。今回からは点群データもサポートした。3次元スキャナの測定データ(点群データ)を直接取り込み、サーフェスモデリングを利用して形状作成ができる。
2010から実装した2次元パラメトリック機能では、2011から新たに「推測拘束」を追加。この機能をオンにしておくと、作図時に自動的に拘束条件を付加してくれる。
また同社の3次元ファイルフォーマット「FBX」にも対応した。FBXは、3次元モデルデータにマテリアル(材質)やアニメーションデータなどを含むことが可能だ。他社の3次元CADでFBXファイルを生成するには、同社のWebサイトで提供する無償プラグインをダウンロードする必要がある。
注:「AutoCAD LT 2011」には、3次元モデリング機能および2次元パラメトリック機能が含まれない。
AutoCAD 2011とライト版のAutoCAD LT 2011共通の新機能としては、以下。
「クイック寸法」機能とは、複数の寸法記入対象を選択してから実行すると、直列の寸法を自動的に記入できるというもの。寸法の表示タイプは、「直列」「並列」「段重ね」「座標寸法」などがある。
スプライン、ポリライン編集の新機能としては、「第2グリップ」を追加。第2グリップとは、作図の際に指定した点の間に表示されるグリップのことで、これを編集対象として選択しての形状変更が可能で、連続線がより作図しやすくなったという。AutoCAD 2010までのスプライン機能は、フィット点のみの表示で、制御点を指定しての編集は不可だった(3次元サーフェスを作成する際にも利用できる。ただしAutoCAD 2011のみ)。
新機能の「位置合わせ」を使うと、例えばこれまでのバージョンで「移動」コマンドの「参照」オプションなどを使っても、8ステップかかる処理(例えば、「クイック計算機などを使用」→「計測して回転」→「拡大などをする」という手順)を2ステップで処理できるという。
今回はオブジェクトの選択や表示に関して便利な機能もいくつか追加。注釈や文字要素について、同一レイヤ内の表示順が1クリックで変更可能だ。「注釈を全面に移動」「ハッチングを背面に移動」「文字を前面に移動」などがある。ハッチング機能では、透過色もサポートした。
選択した一部の図だけを表示させる機能(「オブジェクトを選択表示」)を追加。また「色」「線種」「尺度」などオブジェクトのプロパティから任意の条件を選択し、図のデータ選択をコントロールすることも可能だ。選択したオブジェクトを作成したときと同じコマンドを自動実行し、画層などのプロパティを継承して作図を行える。
今回発表の新製品の価格(税込み)については、以下。
- AutoCAD 2011(スタンドアロン): 61万4250円
- AutoCAD LT 2011(スタンドアロン):19万9500円
- AutoCAD LT 2011 サブスクリプション バンドルパック(スタンドアロン):23万2050円
LTを除く製品で、通常パッケージよりも価格を落とした教育機関・学生用パッケージなども提供するとのことだ。
AutoCADの3次元
同社の調査(AutoCAD 2010 サマーセミナーのアンケート)によれば、AutoCADユーザー(LTユーザーを含まない)の62パーセントは3次元機能を使用しないという。例えば、コンセプトデザインなど、設計の用途によっては、業種情報がついた3次元データを作成する必要がなく、むしろ邪魔になることがある。AutoCADユーザーにとっては、本格的な3次元CADのような機能はあまり必要がなく、ごくシンプルな3つの3次元オブジェクト(ソリッド、メッシュ、サーフェス)による機能の方が扱いやすいだろうと同社は考えるという。なおAutoCADで作成した3次元モデルは、同社の3次元CAD「Autodesk Inventor」に取り込むことも可能だ。
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