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恐怖のケミカルクラック&ウェルドライン甚さんの設計サバイバル大特訓(3)(3/3 ページ)

変身度が非常に大きい樹脂部品は、設計も加工も非常に難しい。その理由が、ケミカルクラックとウェルドラインだ。

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 ケミカルクラックの回避策……それは簡単です。「お客さまは次工程」の「お客さま」と、図面を出す前に打ち合わせをすればOKです。この場合の「お客様」とは、加工側というよりも素材屋、材料屋さんです。

 きっと、その「お客さま」は、真剣な態度のあなたこそを「お客さま」として迎え入れ、ケミカルクラックに対して最適な材料を推奨してくれるでしょう。

 そして、以下の「設計サバイバル術」を忘れずに!

設計サバイバル・レシピ

ケミカルクラックから逃れる設計サバイバル術は、樹脂部品への「常時負荷」を避けること。



良

なるほど! 図面を出す前に、設計開始と同時に、材料メーカーと相談すればいいんですね。


甚

そうだ、良君! もっとも、学校やセミナーで後部の両端に座るようなヤツは、相談すらしねぇってもんよぉ。


良

甚さん! 僕は必ず前席に座ります。次は、ウェルドラインに関する設計サバイバル術をお願いします。


甚

これも2つある。再度! 耳の穴、かっぽじって、よく聞きやがれ!


 ウェルドラインの回避策も簡単です。ケミカルクラック同様、「お客さまは次工程」の「お客さま」と、図面を出す前に打ち合わせをすればOKです。この場合の“お客さま”とは、加工側、つまり、金型屋(かながたや)さんと射出成形屋さんです。

 きっと、その“お客さま”は、真剣な態度のあなたこそを“お客さま”として迎え入れ、最適なウェルドラインを決定してくれるでしょう。


図4 樹脂ギアのウェルドライン(「ついてきなぁ! 加工部品設計で3次元CADのプロとなる!」日刊工業新聞社刊より)
良

じっ、甚さん! 実は、そのぅ、僕が気が付かなかったことは、『人に聞く』ということでした。すべて、自分で設計しようとしていたんです。


甚

てやんでぇ! よく気が付いたなぁ良君。そのとおりだ。仕事とは、設計とは……人脈だ。出世逃げの連中には分かるめぇ!


 そして、2つ目の「設計サバイバル術」は、前回の応用である「断面急変」を探索し、そこに「設計サバイバル術」を施します。

 例えば図4は、樹脂製ギアですが、良く観察してください。左上のギアの流動方向は紙面の上下方向であり、右下のギアの流動方向は、紙面の左右方向です。ウェルドラインは、ほぼ断面急変部に現れます。図5の断面急変スキャンで確認しましょう。


図5 樹脂製ギアの断面急変探索スキャン

 断面急変探索スキャンについては、第1・2回をご覧ください。

 もう一度図4を見てください。左上と右下、それぞれのギアにウェルドラインが発生する個所が明記されています。ここに「設計サバイバル術の大道具(第2回の図6参照)」を適用します。おそらく、「R」か「リブ」が選択されると思います。

良

スッ、すごい! 大学では習いませんでした。マサシク、職人ワザ! マサシク、設計サバイバル術です。


甚

そうか! そんなに感動してくれたか? 確か良君、オメェは、3次元CADで設計するのは苦手だが、CAEは得意だっていってたよなぁ? あん?


良

甚さん、その先は……今晩、手羽先とホッピーをおごりますから、もう、いわないでください。僕に、何でも教えてください。一気に先輩に追いつきたいのです。


 例えば、樹脂ギアの強度計算をCAE解析(コンピュータを利用した強度解析)をするとき、この加工法知識、つまり、ケミカルクラックやウェルドラインや材料の得手不得手を知っている技術者と知らない技術者では大きな差が生じます。

 樹脂が割れる強度上のトラブルのほとんどが、ウェルドラインの部分です。ウェルドラインの割れ対策、つまり、ウェルドラインという猛獣から襲われない設計サバイバル術は、その部分の安全率を高めに設定する必要があります。

設計サバイバル・レシピ

樹脂割れのほとんどがウェルドラインであり、そこでは、安全率を高めに設定する必要がある。



 昨今、3次元CADが高速、高機能の高性能化して筆者もうれしいのですが、マニアックな操作や機能に奔走してはいけません。「2001年CAD元年」といわれますが、その2001年から急激に社告・リコールが発生していることは、何度もお知らせしています。

 誤解しないでください! 3次元CADが悪いのではありません。われわれ、設計者も3次元CADと同様に向上すべきです。中国や韓国の若き積極的な技術者のように……。

 「猫に小判、豚に真珠、日本人技術者に3次元CAD」といわれないように!

 次回の第4回は、樹脂設計における各種の「設計サバイバル道具」を紹介していきます。ぜひ、ご期待ください。(次回に続く)



Profile

國井 良昌(くにい よしまさ)

技術士(機械部門:機械設計/設計工学)。日本技術士会 機械部会、埼玉県技術士。横浜国立大学 大学院工学研究院 非常勤講師。首都大学東京 大学院理工学研究科 非常勤講師。

1978年、横浜国立大学 工学部 機械工学科卒業。日立および、富士ゼロックスの高速レーザプリンタの設計に従事。富士ゼロックスでは、設計プロセス改革や設計審査長も務めた。1999年より、國井技術士設計事務所として、設計コンサルタント、セミナー講師、大学非常勤講師としても活躍中。「ついてきなぁ!加工知識と設計見積り力で『即戦力』」(日刊工業新聞社)と「ついてきなぁ! 『設計書ワザ』で勝負する技術者となれ!」(日刊工業新聞社)をはじめとする多数の書籍を執筆。


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