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カーエレの進化を支える組み込みソフトウェア開発第2回 国際カーエレクトロニクス技術展レポート(2/2 ページ)

カーエレ JAPANの組込みシステム技術ゾーンに注目。開発効率化、品質向上、コスト削減に向けたツールやサービスを紹介する。

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ソフトウェア品質を可視化するテストツール ― ハートランド・データ ―

 カーナビ、カーオーディオなどのソフトウェア開発を手掛けるハートランド・データは、組み込みソフトウェア品質を可視化するテストツール「ダイナミック・トレーサ DT10」を展示・デモンストレーションを行っていた。

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ハートランド・データ

 車載機器におけるソフトウェア開発規模は増大し、それに伴う不具合などによるトラブルも増えている。ソフトウェア開発を行う同社もこうした問題を“肌で感じていた”そうだ。「車載機器のソフトウェア開発を行っていく中で、自社の開発品質について問題意識を持ちはじめ、テストツール(DT10)の開発を行うこととなった」(説明員)。テストの重要性は十分に分かっていてもソフトウェアの大規模化、短納期化、コスト削減などにより不十分となってしまう……。そんな現実を感じてきた同社ならではの思いから生まれた製品だ。

ダイナミック・トレーサ DT10
画像7 ダイナミック・トレーサ DT10

 DT10は、ソース・コード内にテストポイントと呼ばれるプログラムの実行経路を出力するためのソース・コードを挿入し、そのプログラムをターゲット機器で動作させて、DT10でモニタリングし、動的に解析を行うというもの。なお、解析結果はテスト報告書という形でドキュメントとして出力される。「設計段階から最終的なシステムテストまでをカバーできる」(説明員)。

解析結果はテスト報告書という形で出力可能
画像8 解析結果はテスト報告書という形で出力可能

 C/C++で書かれたソース・コードを対象とし、関数のIN/OUT、if文、switch文などの分岐命令を構文解析し、テストポイントのマクロを自動的に埋め込むことができる。1ファイル当たり最大6万個程度のテストポイントの埋め込みに対応。ファイル数で最大90万ファイルまで対応可能だという。モニタリング画面には通過・未通過個所、処理の流れ、実行時間などを示すさまざまなビューがあるほか、フィルタリング機能や変数ダンプ機能、設計値の入力とテスト結果表示機能などが備わっている。


クラウドによる新しい組み込み開発のスタイル ― 日立ソフトウェアエンジニアリング ―

 最後に、新しい開発スタイルを提案する日立ソフトウェアエンジニアリングのサービスを紹介する。


組込み開発環境 SaaS型サービスについて
画像9 組込み開発環境 SaaS型サービスについて

 同社は、仮想化環境提供サービス「SecureOnline」を活用した「組込み開発環境 SaaS型サービス」を展示。

 組み込み開発向けの環境をクラウド型で提供するというもので、利用者は組み込みソフトウェア開発に必要なITリソースと開発ツールを必要なとき、必要な数だけ月額で利用できる。

 仮想化技術により、マスターからコピーするだけで簡単に同一の開発環境をセットアップすることが可能で、開発環境の構築の手間を省き、さらに起こりがちな環境不一致によるトラブルを未然に防ぐことができるという。また、仮想クライアント一式をバックアップすることも可能で、環境の保守管理も容易に行えるとのこと。

 「組み込み開発の現場では、開発人員の増減が激しかったり、開発拠点が分散していたりするなどのケースがあるが、同サービスを活用すれば、維持管理コストや拠点間の出張コストなどの削減に貢献できる」と説明員。

 エミュレータによる実機デバッグに対応しているのも特徴の1つ。仮想クライアントにインストールされたデバッガソフトから、ローカルにあるエミュレータデバッガをネットワーク経由で操作することも可能だ。また、USBキーで端末をシンクライアント化することにも対応している。インターネット経由であればどこからでも利用できるため情報漏えいを気にすることなく、オフショア開発が行えるという。「開発データはサーバ側で一元管理され、ローカルPCにデータが残らない。ソース・コードや仕様書などのソフトウェア資産の流出リスクが軽減できる」(説明員)。

組込み開発環境 SaaS型サービスのデモ
画像10 組込み開発環境 SaaS型サービスのデモンストレーションの様子

 2010年1月よりサービス開始を予定しており、当面、同社ツールのほか、ルネサス テクノロジ、キャッツが提供する各種開発ツールが提供される予定で、その後、順次提供ツールを増やしていく計画だという。携帯電話や情報家電などの分野だけでなく、自動車分野でもこういった新しい開発スタイルが浸透するのかどうか非常に興味深い。

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SecureOnline



東京ビッグサイト
画像11 会場となった東京ビッグサイト。今年のカーエレ JAPAN/EV JAPANの来場者数は3日間合計で1万6606名。昨年比36.4%増だという

 EV/HEVによる次世代自動車開発競争が幕を開け、自動車開発におけるエレクトロニクス化はさらに加速する。動力機関がガソリンエンジンからバッテリによるモータ駆動に変化し、さまざまな電子部品がモジュール化していく。そして、こうした新たな制御対象が増えることでECU制御を担う組み込みソフトウェアは、さらに大規模・複雑化していくものと考えられる。新時代を迎えた自動車開発にとって、これまで以上に「効率化」「コスト削減」「品質向上」などのさまざまな課題が、ソフトウェア開発者の肩に重くのし掛かるのではなだろうか。今回紹介したようなツールやサービスの担う役割は大きい。

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