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超重要! メッシュサイズと8つの質問設計者CAEを始める前にシッカリ学ぶ有限要素法(6)(2/3 ページ)

解析精度を高めるため設計者自身でコントロールできる唯一のパラメータは、メッシュサイズだ。

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有限要素解析は要素が命

 有限要素解析は、要素が命です。一般的な有限要素ソフトウェアには有限要素の良し悪しを定量的に計測するコマンドが必ずといっていいほど機能として備わっています。要素がどれほど大切か、いい証拠ではないでしょうか。

 要素の良し悪しを表わすパラメータには、四角形要素の内角をチェックするカンタンなものから、「ワープ率」「ヤコビアン」などワケの分からないものもあります。ここでは、有限要素の良し悪しを判断する複数のパラメータがあるということだけを覚えておいてください。


図6 要素の良し悪しを判断するパラメータはたくさんある

 このパラメータのしきい値をどのように決めるかは、解析の種類にもよりますし、解析する対象や条件などによりますので、一概にはいえません。

2.解析精度を上げるために設計者がいじれるのはメッシュサイズ

 さて、ここまでで有限要素法は要素が大切である、ということを説明してきました。要素の良し悪しを決定する4つのパラメータ、要素の形状、メッシュパターン、形状の近似度合、要素の密度は、多少強引ですが、1つのパラメータに集約できます。

 それは、メッシュサイズです。

 つまり、メッシュサイズこそが解析の精度を決定するのです。 設計の現場では、それほどメッシュに神経質になっている時間はありません。要素の良し悪しについてのパラメータをチェックして、精度の高い解析結果を導き出す要素に調整していくのは非常に手間と時間のかかる作業になります。精度の高い解析結果を出すためには、非常に重要なプロセスですが、これは解析専任者の仕事といっていいと思っています。

 要素の品質を突き詰めていく作業の、最大公約数的なパラメータがメッシュサイズです。設計者が忙しい仕事の中で解析をある程度正確に使おうとした場合、解析精度を高めるために設計者自身でコントロールできる唯一のパラメータ、それがメッシュサイズというわけです。

 ところで、このメッシュサイズ、設計者向けの解析ソフトではどのように決められているかご存じですか? いくつかの方法があると思いますが、例えば、解析対象物の最大長さの何分の1、とかで非常に適当に決められている感じがしています。設計者向け解析の精度を制御するという意味で一番大切なものはメッシュサイズです。もちろんメッシュサイズのほかにも、荷重条件や拘束条件の設定の方法も大切です。今後の回で詳しく説明しますが、荷重や拘束は節点に対して作用するものです。その節点の数はメッシュサイズによって決まってくるのです。

 そんな大切なメッシュサイズなのに、根拠を持って決定しているソフトはほとんどありません。根拠を持ってメッシュサイズを設定しているソフトがあれば、ぜひその決め方を教えてほしいものです。

栗サンの「一休みコラム」:「エレガント」から「パワー」へ

 ここまでくると感覚的に理解できると思いますが、節点数が多くなればなるほど、つまり、メッシュが細かければ細かいほど、コンピュータに負荷が掛かり、解析には時間がかかります。つい30年前までのコンピュータとは、それはそれは高価なものでした。僕が駆け出しのころは科学技術計算を生業(なりわい)にしている会社にもかかわらず自社内にコンピュータを持っていませんでした。提携したアメリカの会社のコンピュータを海底ケーブルでつながったラインをつないで使っていました。急にラインが止まるとハワイで台風があって……など、そんな環境で構造解析をしていました。コンピュータの使用コストは1秒で1000円……。そのコンピュータの性能といえば、いまのネットブックの何百分の1程度です。ですから、メッシュの数が増えないようにケチりにケチりました。

 大きくて粗いメッシュで一度解析してみて、応力集中したところだけを細かいメッシュでメッシュ分割をし直して再度、解析。節点の数=解析のコストだったので、こんな努力をしたものです。この作業そのものが解析エンジニアの腕の見せ所であり、メッシュ分割さの美しさとエレガントさを自慢し合いそれを肴(さかな)に酒を飲んだものです。

 いまとなっては、パソコンで相当な節点数の解析ができます。エレガントさよりもパワーの時代なんでしょうね。少しでも解析の精度を上げるために、このパワーを利用しない手はありません。



一度きりの解析は解析ではない!

 仕事がらデザインレビューに出ることがあります。最近のデザインレビューでは解析結果をよく目にするようになりました。キレイに描かれたコンター図をプロジェクターで表示しながら、

設計者「これが解析結果です」

上司「おお、解析やったんだ。だったら大丈夫だなっ!」

……って、これで次に進みそうになるので、

「ちょっと、待ってください! 質問させてもらっていいですか?」

  1. 解析の種類は何ですか? 線形静解析ですか?
  2. 要素の種類と次数は?
  3. 表示している応力は何ですか? ミーゼス応力? それとも主応力?
  4. 応力の前に、変形量はどれくらいですか?
  5. その材料の降伏応力はどれくらいですか?
  6. 解析は何回やったのですか?
  7. どんな荷重条件と拘束条件なんですか?
  8. 応力の最大値はいくつですか? それは特異点ではないんですか?

と矢継ぎ早に質問を繰り出します。材料力学の連載を読んだ方なら6番目までなら意味は理解できるはずです。これくらいの質問に答えられないようであれば、その解析結果は信頼できません。その解析結果がいかにコワイ内容であるか、この連載の読者の方にはお分かりいただけると思います。

 この中で一番重要なこと。それは、

「解析を何回やったか」

ということです。

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