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ポメラのメカ設計〜日中をつなぐ3次元モデル隣のメカ設計事情レポート(3)(3/4 ページ)

デジタルメモツールの「ポメラ」を設計したのは、文房具メーカーのキングジム。機械設計者がいない同社の開発チームの力になったのは、中国・香港のメーカーだった!

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 A社の技術者は香港人だから英語が得意だが、日本人であるキングジム側のスタッフの英語はあまり流暢(りゅうちょう)ではない(広東語のやり取りよりははるかに楽だろうが)。そんな中、3次元CADのモデルの運用は、彼らの共通言語として有効に働き、双方のコミュニケーションを大いに助けた。

 彼らが飛び越えたのは、言葉の壁だけではない。専門や部門の壁も飛び越えることができた。機械設計に明るくなかった立石氏や佐久間氏も、3次元CADのモデルを通して、協力会社の持つナレッジを吸収していくことができた。手描きや2次元CADの図面ベースの時代では、このような設計連携、もといポメラの誕生はありえなかったかもしれない。


DM20の3次元モデル(表)

DM20の3次元モデル(裏)

 ポメラの開発中、キングジムのメンバーが中国に飛んだのは、月に1週間ほど。プロジェクトを通してだと3分の1(佐久間氏は半分)は中国にいたと立石氏は答えた。

 以下では、キングジムとA社による共同設計で取り組んだ課題の一部にクローズアップしていく。

キーボードの折りたたみ機構とすき間

 キーボードを展開した状態では、ストロークさせる関係でキーボード本体と土台との間にすき間がどうしてもできてしまう。このすき間は打鍵感にも響いてくる。各社の折りたたみキーボードでは、このすき間に対し、さまざまな機構で対策している。そのような他社の機構と被らないように配慮した。同社のポメラでは、なるべく設計ですき間を詰めていくようにしつつ、キーボード右翼下に設けられたスライドアーム(後述)ですき間が隠れる構造になっている。

 上記のすき間は、ストロークさせる関係上ゼロにすることはできない。すき間による打鍵時のがたつきを防ぐために、キーボード筐体の底面、右側に支えの脚(スライドアーム)を設けた。しかし……いざ、モノが完成して触ってみると、立石氏たちが考えていた以上の安定感があったとのことだ(記者自身、スライドアームを使用したことがほとんどない)。


スライドアーム(DM10・20共通)

 設計検討の前半では、キーボード(展開時)を支えるベースはプラスチック製だった。ただ、キーボードを試作してみると、折りたたんだ際、ロックの力だけで筐体がゆがんで浮きが出てしまったという。


プラスチック土台の試作品:うまく閉じられない……

 そこで、プラスチックからステンレス(SUS)製に変え、筐体の強度を確保したという。このことにより、すでにキーボードの打鍵時の安定感は確保されていたと考えられる。


ステンレス製 キーボードの底板:閉じたときは液晶に面する(DM10・20共通)

 3次元CADで見るすき間というのは、画面の中で自由に拡大できるせいか、現物で見るより大きく感じられる(もちろん、個人差はあるだろうが)。そんな感覚も、一因しているのではないだろうか。

 ともあれ、将来のモデルでは、もしかしてスライドアームが消えるかもしれない!?

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