本格化するEV/PHEV開発(2/4 ページ)
国内自動車メーカーによる電気自動車/プラグインハイブリッド車の量産に向けた取り組みが本格化している。すでに、三菱自動車と富士重工業は電気自動車の量産を開始しており、2009年末からはトヨタ自動車がプラグインハイブリッド車を、2010年秋には日産自動車が電気自動車の量産を開始する予定である。本稿では、まず『第41回東京モーターショー』に出展された電気自動車、プラグインハイブリッド車、各自動車メーカーの開発姿勢についてまとめる。その上で、電気自動車開発に向けた半導体メーカーと開発ツールベンダーの取り組みを紹介する。
再利用で電池コストを削減
日産自動車と三菱自動車は、車載リチウムイオン電池を再利用する事業を推進することも明らかにしている。
現在、EVの価格は、高級車と同等の400万円〜500万円となっている。このうち約半分を占めるのがリチウムイオン電池のコストである。つまり、リチウムイオン電池のコストを下げられれば、その分だけEVの価格を安くすることができ、普及も進められるようになる。そこで、車載リチウムイオン電池の再利用は、その価格低減をけん引する有力な手段として期待されている。
日産自動車と住友商事は2009年10月、この再利用を促進するための事業会社を2010年後半までに設立することを発表した。この会社の目的は、車載向けでの利用を終えたリチウムイオン電池を、太陽光発電による電力を蓄える蓄電池など向けに再利用をできるよう推進することだ。車載リチウムイオン電池は、車両での利用が可能とされる寿命を過ぎた後でも、初期と比べて容量が70〜80%程度まで落ちるだけである。そのため、車載向けほど厳しい仕様を求められない家庭用の蓄電池などに利用できるとしている。
三菱自動車は、EV用リチウムイオン電池の生産会社に共同で出資している三菱商事を含め、複数のパートナーと事業化を検討している。また、東芝も、同社のリチウムイオン電池「SCiB」を扱う電力流通・産業システム社を中心に、再利用事業に対して積極的な姿勢を示している。
コミュータ用としての提案
ハイブリッド車市場で先行するトヨタ自動車と本田技研工業も、EV/PHEVのコンセプトカーを展示した。
トヨタ自動車は、ハイブリッド車の次に実現可能なエコカーとしてPHEVを考えている。その最初の市販モデルに限りなく近い完成度を持つのが、新型プリウスをベースに開発された「PRIUS PLUG-IN HYBRID Concept」である。基本的な仕様は新型プリウスと同じだが、EV走行距離を増やすために、2次電池としてニッケル水素電池に替えてリチウムイオン電池を採用している。リチウムイオン電池パックは、パナソニックEVエナジー製で、容量は5kWh。新型プリウスの4倍となっており、EV走行距離は新型プリウスの10倍となる20kmまで拡大した。
EVについては、未来的なデザインのコンセプトカーとして「FT-EV II」を出展した。電動システムを床下に収納することで、全長2730mmという小型化を実現した。また、運転システムにステアリングバイワイヤーを採用して、従来のインストルメンタルパネル、アクセル、ブレーキなどをなくしたことも小型化に貢献している(写真3)。同社は、EVを2012年ごろに発売する計画だが、その本格的な普及時期は充電インフラが整う2020年ごろと想定している。
本田技研工業は「EV-N」を展示した。同社はEVの用途として、都市内部における近距離走行用のコミュータを想定している。EV-Nは、そのコンセプトカーである。量産を視野に入れた現実的なデザインとなっているものの、EV-Nの仕様や、同社におけるEVの発売時期は明らかにされなかった。一方、電動2輪車については、電動スクータ「EVE-neo」(写真4)と「スーパーカブ」の電動モデル「EV-Cub」を公開するなど、より積極的な姿勢を示した。
スズキは、PHEV「スイフト プラグイン・ハイブリッド」を展示した。排気量660ccの軽自動車用エンジン、出力50kWの走行用モーター、出力40kWの発電用モーターを搭載しており、2次電池の残量が少なくなったときにエンジンと発電用モーターを使って発電するシリーズハイブリッド方式を採用している。センターコンソールに搭載するリチウムイオン電池の容量は2.66kWhと、他社のEVやPHEVと比べて少ない。EV走行距離は20kmである。基本的には、近距離移動のためのEVとしての利用を想定しているという。
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