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いまさら聞けない!? 製図の素朴な疑問たち「技術の森」モリモリレビュー(5)(3/3 ページ)

「外形線と寸法補助線は接して描かなければならないのか」「φは『パイ』と読むのか」などいまさら聞けない素朴な質問ばかりを集めてみた。

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私たちがいつも使う記号、欧米ではどう呼んでいるの?

φの読み方

本当に単純な質問で申し訳ありませんが、常日頃気になっていたので皆さんにご意見伺いたいです。

φの読み方なのですが、本当の読み方は何て読むのでしょうか。私自身、学校で習ってきた読み方は”ファイ”です。しかし実際に製造現場等で多く聞かれるのは”パイ”です。むしろ”ファイ”と読む人に出会った記憶がありません。

 直径寸法を示す「φ」(まる)については、日本独特のものではない。φは「○」と「0」を区別するために縦棒を立てた記号だという説もあるが、実際、ISOおよびANSIに定められた文字はギリシャ文字の「φ」であり、その読み方も「ファイ」である。日本人では、「ファイ」の発音がうまくできないからなのか、「パイ」と読む人も結構いる……。JIS的には「まる」または「ふぁい」と読むのが正解のようだ。

 いまの日本の製造業はどんどんグローバル化している。もちろん、日本で書かれた図面が海外で読まれることも多くなってきている。ISO(国際規格)とJISの情報も徐々に統一されてきているが、まだそろっていないものもある。

 以下では、日ごろ欧米の技術者とやり取りすることが多いというソリッドワークス・ジャパン 技術部 水野 哲氏に、英語の製図記号の事情についてお答えいただいた。φのほかにも、RやC、□なども欧米で運用されているのか、あるいはどう呼ばれているのか尋ねてみた。

 45度の面取りの記号『C』は、JISでは定義されていますが、現行のISOやANSI(ASME)では『C』は定義されていません。日本企業を相手にした図面で『C』を使っている会社もあるらしいですが、一般には『C』は使われず、『JIS B0001』にも規定されている『C』を使わない方法、例えば 『2 X 45°』で指定されています。会話をするときにも『2チャンファーズ バイ 45ディグリーズ』というと思います。

 除去加工に関する記号は、ISOもANSI(ASME)もJIS(下図)と同じです。ヨーロッパで作られる図面にも同じ記号が使われています。

 ちなみにISOでは、それぞれの記号に対して、左から

1.『除去加工の有無を問わない』=『Any manufacturing process permitted』

2.『除去加工をする』=『Material shall be removed』

3.『除去加工をしない』=『Material shall not be removed』

と呼んでいます。

 一番右の記号『部品一周の全周面、同一表面性状』は、左から2番目の記号(除去加工をする)の補足として『All surfaces around a workpiece outline』を表現するために丸印が付けられています。

 やはり日本と同様、これらの記号について、短い言葉の俗称はまだないと想像します。

(回答:ソリッドワークス・ジャパン 技術部 水野 哲氏)

▽は日本独自の表現ではなかった

 続いて、「技術の森」モリモリレビュー(4)「あなたは、まだ「▽」や「〜」を使っている?」で話題になった、面粗さを示す旧JISの三角記号「▽」についても、水野氏にコメントをいただいた。

 表面粗さの三角記号は、日本独自のものではなく、ヨーロッパでも以前は使われていたようです。

 1980年代から当時の通産省の指導により、JISはできる限りISOと同じにするよう改定されてきていますが、図面の基本規格の『JIS B0001』では一部、日本特有のものが残っています。

 それに対し、この分野のISOは、ドイツ、イギリスを中心とするヨーロッパが中心となって合理的に改善する動きが強いです。まずヨーロッパ各国のDINやBSを改定してから、それがそのままISOになり、ISOに追従してJISが変更になるという傾向があります。ですから、ヨーロッパではいち早く新規格が普及し、日本では普及が遅いという現状になっているという側面もあります。

 またヨーロッパでは、新しい規格に基づいた図面でないと国際取引ができないというような規制もあり、そうせざるを得ないとも聞いています。ほかにも、日本の加工者はインテリジェントなので(だったので)、論理的に完璧でない図面でも、ものができてしまう(しまっていた)ので、新しいより論理的な図面の表記の導入がヨーロッパに比べ遅れたという話も聞いたことがあります。

(回答:ソリッドワークス・ジャパン 技術部 水野 哲氏)

 次回もお楽しみに!

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