方法改善の手順:目標の設定と詳細分析:実践! IE:方法改善の技術(2)(3/3 ページ)
人・設備・モノのムダを見つけて改善する。製造業の原価低減に欠かせない3つの要素のムダを発見するために、インダストリアル・エンジニアリングにおける方法、改善の技術を紹介していく。
3. 詳細分析
分析の目的と目標が決まれば分析に移りますが、問題の本質や要点と思われるものが分かったとしても、ただちに具体的な対策が立案できるとは限りません。従って、その問題について、さらに詳細な事実を集めて分類、計量、評価などを行って実態を正確に把握することが必要です。そして、取り上げた問題が本質的なものであるか否かを検討します。この分析の良否は、改善効果を大きく左右するもので、安易な分析は改善方向を誤り、間違った結論を導く危険性もあります。
また、現状分析の方法は、問題の状態や性質によって決定します。分析は目的に対して行うものですから、決して「手法のための分析」にならないように注意しなければなりません。分析の手順を大別すると、「表4 分析の手順」の3段階に分けられます。
No. | 項目 | 手順 |
---|---|---|
1 | 現状調査 | 目標に対して、原価、生産量、品質、製造期間(リードタイム)など、各関係項目の予備データを集めて、目的に適合した分析が行えるように準備する |
2 | 手法の選択 | 現状調査の結果を基に、目的に適合した分析手法を選ぶ |
3 | 分析 | 分析結果を具体的に検討できるように、すべて、数量(数値)として問題を摘出して、改善の方向が的確につかめるようにする |
3.1 現状調査
(1) 現状調査の意義
方法改善を最も効果的に行う前提として、分析に先立ち、分析するための基礎資料を集め、改善の目標に対してどの手法を適用するか、また真の問題がどこにあるかなどを知るために事前の現状調査が必要です。
現状調査のためのデータ蒐集は、一般的には、
- 既成資料を集める
- 聞き込みなどにより資料を作成する
- 工程分析、大まかな稼働分析などの簡単な観測を行う
の3つの方法があります。データの内容は、分析の目的によって変わってきますが、一般に「表5 データ情報の蒐集」に示すデータを蒐集します。
No. | 項目 | 手順 |
---|---|---|
1 | 現状調査 | 目標に対して、原価、生産量、品質、製造期間(リードタイム)など、各関係項目の予備データを集めて、目的に適合した分析が行えるように準備する |
2 | 手法の選択 | 現状調査の結果を基に、目的に適合した分析手法を選ぶ |
3 | 分析 | 分析結果を具体的に検討できるように、すべて、数量(数値)として問題を摘出して、改善の方向が的確につかめるようにする |
表5 データ情報の収集 |
(2)分析範囲の検討
現状調査の結果を系統的に整理し、問題はどこにあるかを把握し分析しようとする範囲を明確にします。収集したデータは、管理、材料、設計、工程、設備、作業などの各項目別に整理すると問題の評価付けや分析範囲の検討に便利です。分析は、この評価付けの順序に従って行います。
3.2 分析手法の選択
分析を進めるに当たっては、各種の分析手法の中からどの手法を選ぶべきかを、まず慎重に検討をしなければなりません。分析手法は、各種ありますが、いずれも長所と短所を持っており、選択を誤ると労多くして何らの成果も得られない恐れが出てきます。
手法選択の基準としては、「分析目的」「対象作業(特質)」「分析費用(期間)」の3つが考えられるので、これらの3つの面から総合して判断をします。選択基準を内容別に示すと、「表6 手法選択の基準」のとおりとなります。
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表6 手法選択の基準 |
3.3 分析のやり方
各種の分析手法に従って分析を行う場合、観測者は「表7 分析のやり方」の手順に従って進めていくことが大切です。ただし、分析手法や手順におぼれて詳細分析を行うのではなく、簡易分析で目的の分析結果が得られればその方が経済的でいいわけです。また、そういう意味でも分析そのもの(観測方法や観測用紙の書式など)の改善を実施して、さらに分析効率を上げていくことも大切なことです。
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表7 分析のやり方 |
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以上、「方法改善」の手順における「目標の設定」と「詳細分析」について説明をしました。IEを身に付けるには、現場での実践を積み重ねていくほかはありません。ぜひ、地道に現場での経験を重ねて、改善技術を自分のものにしていく努力をしていただきたいと思います。
次回の「詳細分析-ii-」では、活用頻度の高い分析手法とその利用方法について説明します。ご期待ください!!
筆者紹介
MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)
日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、および日本IE協会、神奈川県産業技術交流協会、県内外の企業において管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。
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