機械の健康診断「非破壊検査」の世界:メカ設計 イベントレポート(12)(2/3 ページ)
今回は「非破壊評価総合展2009」の展示内容を紹介。日本非破壊検査協会のキャラクター「ノンディ」や古い検査装置も登場する
センサ技術が得意なNECのサーモグラフィ
NEC Avio赤外線テクノロジーは、同社で開発する赤外線サーモグラフィシステムを展示。同社の販売するサーモグラフィは、つまり機械用の体温計。機械も人間同様、ある部位で発熱をし過ぎれば、さまざまなトラブルを発生する。
同社の赤外線サーモグラフィ装置「H2640」は、640×480画素の国産センサを搭載した機種。下の写真のような、ハードディスクの電子基板上にある細かいチップ部品や配線、フットパターンなどの温度分布も細やかに表現することが可能だ。
「アドバンストサーモ TVS-500EXZ」は標準レンズを含めて2倍視野拡大レンズと2倍望遠レンズの3本分のレンズをあらかじめ搭載している。サーモグラフィカメラでは、ズームコントロールのできるレンズが付いた(レンズ交換式でない)機種は、現状ではまれだという。下の写真のように、街全体を広角で映して温度分布を表現することができる。道路が真っ赤になっており、熱が路面近辺に滞っていることが伺える。将来、ここを電気自動車が走行した場合、例えばリチウムイオン電池の発熱がどう影響するかなど考慮しなければならないことも分かる。
同展示会の会期中は冬季に差し掛かりつつあり、インフルエンザも流行っていたこともあり、同社は「パンデミック対策ソリューション」である体表温度スクリーニングシステムのデモ展示を行った。会場では分かりやすくするために、アラートされる温度は少し低めに設定してあった。もちろん本番のパンデミック対策では、平熱以上に発熱している人を感知しやすい設定にする。
またカメラはユーザーの状況に応じて、3種類の機種を用意している。その中のうちの1つ、新製品の「F30 IS」は一般的なデジタルカメラのようなデザインをしていて、例えば、カメラが受付に置いてあるのを見かけたときの心理的なストレス(「監視カメラ!? なんか不快……」という気持ち、など)を少しでも軽減しようというねらいとのことだ。
上記のカメラは、可視画像と赤外線画像を同時に撮影でき、その両者を合成したモード(ただしF30 ISは切り替え)も選べる。
同システムは金融機関や工場などで採用されているという。また私立幼稚園での採用もあるとのことだ。
また上記のカメラに使われているセンサモジュールを同社から購入することも可能だ。
X線撮影を世界で初めてデジタル化した富士フイルム
機械の世界で行うX線検査もやはり、その原点は医療用。健康診断でおなじみのレントゲン撮影だ。もともとレントゲン用フィルムを作っていた富士写真フイルムは、その技術を生かしてX線撮影を世界で初めてデジタル化した。イメージングプレートに記録したX線画像情報を読み取り、デジタル画像処理のコントラストや濃度を調整し、検査画像を作成する(「FCR」、Fuji Computed Radiography)。
富士フイルムビジネスサプライが展示した工業用X線検査システム「AC-7HR/ST」は、50μmの分解能を持ち、コントラストのコントロールも容易に行え、撮影者の技術は問わず、高精細なX線画像を出力可能だ。従来のX線撮影は、撮影者ごとで、その技術や経験による画質の差が出てしまうものだった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.