ハイレベルな制御戦略に会場も興奮、ETロボコン2009:ETロボコン2009、挑戦記(8)(3/3 ページ)
審査員の想像を超えた高度な戦略が次々と登場――今年の全国大会は新走行体の登場で制御の幅が広がり、全体的な質の向上が見られた。
強い強い、東海地区!
ここからは総合結果を紹介する。ETロボコン2009 チャンピオンシップ大会の総合結果は、下表に示したとおり、1位 サヌック(明電システムテクノロジー)、2位 HELIOS(アドヴィックス)、3位 BAMBOO(富士通コンピュータテクノロジーズ 豊橋事業所)。なんと、すべて東海地区チームからの入賞となった。
強豪揃いの東海地区の実力は、やはり全国区レベルだった。以前、座談会の記事でも登場していただいたサヌックの渡邉さんとHELIOSの酒井さんも見事に入賞を果たした。東海地区では3位だったひものエンベダーズ(沼津工業高等専門学校 牛丸研究室)も1回目の走行ではスピードが出すぎたためか坂道で転倒しまうという悔しい結果だったが、2回目の走行ではINコースからOUTに侵入してショートカットを高スピードで走りぬけるなど、見事な走行を披露していた。
RCXの総合結果は競技でも上位に入賞したコアファイター(コア 九州カンパニー)とBERMUDA(富士通コンピュータテクノロジーズ)が1位、2位に入賞した。3位の忠犬ニ号(秋田職業能力開発短期大学校)は北海道・東北の代表チームで、後に紹介するモデル審査で1位に入賞している。走行は2回目が途中リタイアとなってしまったが、1回目の走行では難所も攻略した安定走行で見事上位に食い込んだ。
順位 | チーム名 | 所属 | 地区 |
---|---|---|---|
1位 | サヌック | 明電システムテクノロジー | 東海 |
2位 | HELIOS | アドヴィックス | 東海 |
3位 | BAMBOO | 富士通コンピュータテクノロジーズ | 東海 |
ETロボコン2009 総合結果(NXT) |
順位 | チーム名 | 所属 | 地区 |
---|---|---|---|
1位 | コアファイター | 九州カンパニー | 九州 |
2位 | BERMUDA | 富士通コンピュータテクノロジーズ | 南関東 |
3位 | 忠犬ニ号 | 秋田職業能力開発短期大学校 | 北海道・東北 |
ETロボコン2009 総合結果(RCX) |
チームとしては4回目の出場、ついに優勝! サヌック
昨年度のチャンピオンシップ大会で、モデル1位、総合3位の成績を残しているサヌック。今年の目標は、ずばり“優勝”だった。大会終了後、メンバーからは「うれしい。サポートしてくれた会社の方々にあらためて感謝をしたい」といった喜びの声が聞かれた。
サヌックはこれまで、大会本番になるとなぜか(走行が)失敗してしまうという悔しい思いをしてきた。そうしたトラウマもあり、競技会当日は祈るような思いで走行体を見ていたが、蓋を開けてみれば、難所もクリアしての安定した走行で、モデルも2位の好成績を残した。
サヌックのメンバー
大会終了後、メンバーの顔からは安堵の表情が伺えた。役割分担は左から長島 徹さんが基礎となる走行の部分、今井 渉さんがモデル(主にSysML)、渡邉 真由美さんがドルフィンジャンプなどの走行部分を実装した
彼らは今回、モデルでSysMLに挑戦し、NXTの制御部分では連続系ダイナミクスと離散系ダイナミクスという2つの側面を組み合わせたハイブリッド型の設計をしてきた。基礎部分のステートマシンフレームワークを作成した長島さんは「制御自体は難しいことはしていない。数年前からETロボコンでは一般的になっているPID制御、そしてライントレースと走行速度の最適化の2つの制御を行った」と語る。
SysMLやハイブリッド走行など、今回、ETロボコンでは新しい手法を用いたサヌックだが、そこに行き着いたキッカケは何だったのだろう。その訳を渡邉さんに伺うと「SysMLは事前に行われた技術勉強会で、ハイブリッド走行は東海地区大会のモデルワークショップの中でこんな手法もあるよ、と紹介されていて、じゃあ挑戦してみよう! ということでやってみた」という。
今年を振り返りサヌックのメンバーは「(今年は)昨年に比べると開発の時間がほとんど取れず、また、とくに奇抜な走行をしたわけではないが、基本を忠実に押さえて、それを積み重ねた結果が優勝につながったと思う」と述べた。来年度についてはまだ参加するか分からないとしているが、「もし参加するとしたら、今年あまり時間を取ってやらなかったコースのマップを作り、それに合わせて常に現在位置を補正しながら走行するなど、そういったところに挑戦したい」と語ってくれた。
また、これからETロボコンに挑戦する方へのメッセージとして、「ものすごく時間もかかるし大変だが、やったことに対するフィードバックはあるので、日々かかんに攻めてほしい。ある問題を解決するためにがんばって作っていくのは非常に楽しい。これから挑戦しようと思っている方は、楽しんで参加してください」と述べた。
次回はモデル審査の内容を中心に紹介します。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.