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デザイン審査の最優秀5校の車両設計第7回 全日本学生フォーミュラ大会 レポート(3)(1/3 ページ)

自動車の設計製作技術を競う、学生のためのモノづくりコンペティション 全日本学生大会最後の日程で行われる「デザインファイナル」では、デザイン審査の成績トップクラスの5校が登場する!

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 全日本学生フォーミュラ大会、最後の日程となる「デザインファイナル」。ここではデザイン審査で高得点を獲得した5校について、レビューが行われる。今年選出されたのは、上智大学、東京大学、金沢大学、豊橋技術科学大学、岐阜大学。今回は、それぞれの学校の車両設計やレビューの内容について紹介する。

東京大学

 まずは、ずっとサイドバイサイドレイアウトにこだわり、参加し続ける東京大学。今大会の優勝校だ。「以前の車両は率直にいってすごく大きく、重く、レーシングカーに見えませんでした。昨年あたりからしまってきて、レーシングカーらしく、今年はさらにひとまわり小さくなり、精かんさが増したと思います」という審査員からの講評。

 今年の車両開発では、シャシー剛性を高め、重心高を低くすることに重点を置いたという。剛性を高めることで、コーナリング時のキャンバ角の振れなどを抑え、安定した走行を目指した。シャシー剛性には、アップライトやハブなどコンポネントの剛性含まれているとのこと。


東京大学

 「具体的に、シャシーの中で一番大きい部品であるハブベアリングの種類と支持幅の変更を行いました。アンギュラを使っていた部分を円すいコロに変え、その配置間隔を倍にすることで荷重を受けやすくし、キャンバとともに剛性を改善できました」と東京大学のチームリーダーの後藤健太郎さんはコメント。問題個所の特定には、車両実機の測定を繰り返したという。昨年度の車両を定盤に固定し、ハブの部分に力を掛け、各点をアップライト、ハブ、フレームと、ダイヤルゲージを置いて変位を測りながら、各部位の剛性を切り分けていったとのことだ。

 フレーム設計については、重心高を下げることや、ねじり剛性向上を重点目標としたという。それとともに、サスペンションのレイアウトもなるべく重心を低くし、かつコンパクトにして、ヨー慣性モーメントが小さくなるようにしていった。フレームにおけるシャシー剛性は、従来の車両ですでに際立っていたため、基本的にそれを維持する設計としたとのこと。ねじり剛性については昨年度の1.5倍になるように設計し、実測でも達成したという。

4WSはどうしたの?

 東京大学の今年の車両では、昨年の車両についていた4WSの採用を見合わせた。「昨年度、4WSを付けて走行したところ、その機構にガタがあり、そのせいでシャシー剛性を悪化させていました。そのアクシデントにより、シャシー剛性の重要性に気付きました」(後藤さん)。今回のようにシャシー剛性が高まったことで、4WSなどの制御を入れなくても、ドライバーの思い通りに操れるようになったとのことだ。

ターボチャージャを改善

 今年のエンジンで最も重点的に開発した項目は、ターボチャージャのラグの改善、燃費の改善とのことで、とくに後者は大きな改善が見られたという。「まずハード面では、高圧縮比化により約2%、燃料消費率を改善しました。またアクセル開度が一定以下のとき、燃料カットする制御を入れたことで、7.1%燃料消費量を改善しました。またA/F(空燃比)のターゲットを見なし、A/Fが、トルクと燃料消費率にどのような影響を及ぼすか実験で把握し、その結果からターゲットとなるA/F を決定し、さらに7.3%改善しました」(後藤さん)。

 東京大学が、もっとも得意とするソフト面では、CVT制御により使うエンジンの領域について、実際に走行試験で計測して、加速中にどの回転数を採用するかを決定したとのこと。CVTとエンジンとを一緒に制御して、いいところを出し合うようにしている。

 「昨年度からエンジンのCVT制御について、随分頑張ってきました。両面実装基板を採用し、高密度かつ高精度な基板作成をしました。チップ部品を多用して、回路面積を縮小しています。ここでは特に信頼性の部分に大きな努力を割くようにしました」(秋元さん)。基板のパターンもハーネスも自分たちの手で設計しているという。

 東京大学の車両は、他の学校の車両と比べ、決して軽い方ではない。今後は、さらなる軽量化が課題となるようだ。

 「エンジン周りはまだ軽量化の余地があります。今年から、エンジン周りの部品の一部でCFRPを初めて使用し、1kg以上軽量化しました。CFRPを採用する部分をもう少し増やしていこうかなと思います」(後藤さん)。

関連リンク:
東京大学「UTFF」

金沢大学

 静岡理工科大学と並び、自作ECUで有名な金沢大学。「(学生フォーミュラ大会の車両は)アマチュアレーサーを主な対象としているため、運転補助装置を充実させたクルマを目指しました。トラクションコントロールシステムや、セミアクティブサスペンションシステム、シフトアップダウンの電子制御などを行っています」と同校のチームリーダー 安井 潤一郎さんはいう。

 ドライバーの負担を軽減することを目的とするほか、初心者だけではなく、上級者の場合も、スキルに合わせた設定で、より速く走れることを目指しているという。今年は、そういった制御関連の開発で、進歩があった。


金沢大学

 「昨年度はシフトが手動でした。今年は電動シフトです。シフトもクラッチも電動モータ制御です」(安井さん)。

 ドライバーが ステアリングのボタンを押すと、その入力をコンピュータが検出し、シフトとエンジンを制御しているコンピュータに信号を送り、クラッチのモータを動作させている。また点火カットを自動で行うことで、シフトモータを動作させ、シフトのアップ・ダウンを自動化した。「この部分なのですが、実は開発時に、かなり暴走しました。ドライバーが、ボタンを連打するなど、想定外の状況が起きても、想定内の範囲の動作で収まるよう、がんばってプログラムで調整しました」と安井さんはその苦労について述べた。

 制御の回路基板も、自分たちで設計しているという。「回路を自分たちで設計し、さらに半田を握りつつ試作しています。試作基板で実験を重ねた後、試作結果と等価となるように、表面実装部品で基板を構成し、外注しました」(安井さん)。

フレームについて

 「昨年までのフレームの設計では、車体のねじり方向の剛性のみを検討していました。今年度からは、サスペンションからの入力が重要ではないかと考え、その影響でキャンバ変化がどのように起こるかを検討しました。そのキャンバ変化量から『対地キャンバがこれくらいずれると、これだけコーナリングフォースが下がってしまう』といったことを参考にし、スキットパッドの際のタイム変化を計算し、どれくらいのキャンバ変化が許容されるのか見ていきました」(フレーム班リーダー)。

 スキットパッドのタイム変化については、昨年の大会の上位10校をサンプルとし、タイムがどれくらい変化すると、順位がどれくらい変動してしまうのか見たとのことだ。その結果によれば、許容できるキャンバ変化は0.38度以下だったとのことだ。さらに、それを基にフレームを解析していった。またサスペンションアームにひずみゲージを張り、実測したデータを基にキャンバデータを算出したとのことだ。

サスペンションの低重心化

 低重心化が目標の1つであるサスペンションの中で、チョックが一番重たい部品。それをシートまたはフレームの下にすることで、低重心化を図ったという。また、ベルクランクをアルミにし、さらに下に配置することで、軽量化と低重心ともにかなえたとのことだ。

フラットなトルク

 パワートレインでは、データロギングにより、昨年のエンデュランスの走行時の回転数でよく使うところを検証したところ、4000〜6000回転あたりだったという。その回転数でもってトルクを向上させていくようにしたという。

治具に鋳鉄を使用

 昨年度、シャシーのフレームなどの治具に、角パイプを使っていた。耐久性や精度の面から、角パイプだとボルトを締めるとゆがんでしまった。その実際の変位などを測定した結果を踏まえ、変位を減らしながら耐久性が高くなるよう、今年は鋳鉄を採用したとのことだ。

 金沢大学のデザインレポートについては、「学生フォーミュラのデザイン審査が、どのような点に着目しているか、よく把握して書かれていた」との講評だった。


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