検索
連載

設計者と解析者をつなぐために、できることMONOistゼミ レポート(2)(3/3 ページ)

MONOist編集部が開催するゼミナールに関するレポート集。本稿で「MONOistゼミ 設計者と解析者をつなぐ 3D活用術」のセッションとパネルディスカッションの内容をお伝えする。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

設計者と解析者がうまく連携を取るには

設計者と解析者の間における問題

  • シミュレーションは解析者の聖域か?
  • 解析者の視点から:設計者の解析は信用できない
  • 設計者の視点から:解析者に設計現場の理解できる言葉で話してほしい
  • 設計者の視点から:解析は設計に本当に有効なのか?
  • 設計者と解析者のコミュニケーションが図れていない
  • 会社内の部門の壁。どちらに決定権?

佐藤:「CAEは解析専任者の聖域なのか」と聞かれることが非常に多いです。それだけ、解析専任者が自分たちの領域に部外者を入れなくなってきているんですね。解析者が設計者の解析を信用できない、 つまり解析を任せられないというのも問題ですね。

 設計者の視点からいえば、解析専任者の言葉が理解できない、「この人、何いっているの?」っていう状態になってしまうんです。栗崎さんの基調講演でも同様の話が出てきましたが。

 会社の組織構造が原因である場合もありますね。部門間でどちらに決定権があるか、という言い争いに発展してしまうこともありますし。

 とにかく、お互いが意地を張り合っているんです。お互いにコミュニケーションを取ろうとしないんですよ。ですから、お互いができる限り、歩み寄らないといけませんね。

 解析専任者は難しいことをやりたがりますが、それをどんどんやればいいと思います。ただし、それを大衆化していくことが大事ですね。それを誰もが使える技術へ落とし込んでいくんです。そういったことが技術者としてのモチベーションもあげていくことにもなります。

 先ほど申し上げましたように「私たちは、何をするべきか?」という本質を見極めながらも、材料力学や有限要素法について設計者たちも努力して習得するようにして、解析技術への理解を深めることも大事でしょう。

栗崎:設計者と解析専任者の理想的な関係とは、どういうことだと思いますか?

佐藤:同じ言語で話せるか、それにつきますね。つまり両者が同じツールを使えるようにすることです。設計者と解析専任者とでは、大体が違うツールを使っていることが多い現状ですね。例えば私が解析専任者だったら、いきなり3次元CADを使いなさいといわれても、使いませんね……。業務で忙しいでしょうから覚えている暇がないでしょうし。

 解析専任者が3次元CADを使えば、自分で形状を修正でき、条件設定もでき、シミュレーションもできます。それで、いろいろな設定をどんどん試していき、その結果を評価しながらノウハウが溜まっていく。

 そこでツールが使いにくければ、ギブアップしてしまうものです。使いやすくあれば、自分でどんどん実験できて、ノウハウが溜まっていきます。 ツールの使いやすさは大事だと思います。 当社も含むツールベンダは、どこもユーザーの敷居を下げようとしています。

設計者と解析者の理想的な関係

  • 同じ土俵で同じ言語で話せる環境
  • CAE を用いる目的(製品をより良くするため)の共通認識
  • 設計者と解析者の役割分担・分業
  • 設計者と解析者の信頼関係 

3次元CADのトレンド

栗崎:先ほど紹介されたモデリング機能は、いいとこどりっていう感じですね。形状認識技術の塊というか。

榑谷:まさにそうですね。

栗崎:最近のパソコンはCPUのグラフィック性能も高いからなのか、ダイレクトモデリングのような形状認識技術はCADの業界で流行っているじゃないですか。CATIAもそうですし、御社のNXやSolidEdgeも。3次元CADは今後、そういう方向に行くんですかね?

榑谷:確かに最近のトレンドでありますね。

 以前在席した会社で、私は2つのCADを経験しました。最初に使ったのは、フィーチャーパラメトリックを使った素晴らしいソフトでした。しかし会社から、ある日、別のものに切り替えなさいといわれたんです。それは100人の設計者がいたら、30人ぐらいしか使えなかった事情からなんです。それを70人が使えるようにしなさいとのことでした。ですから、とにかく操作が簡単な3次元CADの導入をしようと考えました。

 その後も、まだまだ壁は感じました。フィーチャーパラメトリックがある限りは、作業の手数が増えてしまうのは宿命です。そこをなるべく減らしていこうという動きは、自然な成り行きではないでしょうか。

日本人の誇りを大切に

解決策

  • CAE を利用する共通目的の認識
  • 設計者と解析者の役割分担・分業の確立
  • 解析者から設計者への CAE 技術の伝承と CAE 社内教育:問題の本質を見極める力の育成
  • 目的に合った CAE ツールの選択:CADと解析の垣根を取り払えるCAEツール、複合領域解析に対してハブとして使用できるCAE ツールなど

栗崎:日本人の誇りを大切に……インターナショナルな時代ですから、何だか違和感がある表現とは思いますが、大事な想いではないでしょうか。小さい国で、資源も少ない国が、世界に多大な影響を及ぼすには、やはり製造業が鍵でしょう。日本の製造業を皆さんの手で、どうか盛り上げていってください。私も精一杯皆さまのお手伝いをしていきます。


「これは責任重大な役だなぁ……。外れた方は本当にスミマセン」といいつつ、くじを引く栗崎氏。イベントラストの抽選会にて

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る