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“進化するケータイカメラ”を支えるモルフォの組み込み技術組み込み企業最前線 − モルフォ −(1/2 ページ)

手ブレ補正、顔検出、撮影シーン自動判別……。画像処理技術に特化し、枠にとらわれない自由な発想で次々と携帯電話向け新技術を生み出すベンチャー企業「モルフォ」。同社がこれまで開発してきたケータイカメラ向け技術を紹介しながら、組み込み機器としての携帯電話の未来について話を聞いた。

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進化するケータイカメラ

 携帯電話にカメラ機能が搭載されたとき、「ケータイカメラはデジカメにいつか追いつく日がくるのだろうか」という議論で編集部が盛り上がったことがある。

 その時の結論としては、「ケータイカメラも進化するだろうが、デジカメも同様に進化する。ボディサイズの制約が携帯電話(ケータイカメラ)ほど厳しくないデジカメは、レンズやイメージセンササイズなどで有利。また、デジカメは専用機なので、合焦スピードなどレスポンスはなかなか追いつかないだろう。最新機能を含め、トータルな“カメラとしての使い心地”はデジカメが今後もリードするのでは」というところに落ち着いた。

 その当時から約8年。ケータイカメラの画素数は当初の11万画素からいまや1000万画素超時代へと突入し、1〜2世代前のコンパクトデジカメを凌駕するぐらいの機能性を持った。それどころか、いつでもどこでも手元にあるという携帯電話のウェアラブル性を生かし、撮影した画像をすぐに誰かへ送ったりブログに掲載したりといった、通信機能を持ったケータイカメラならではの使い方も提案。もはやケータイカメラは生活に欠かせないものとなった。

 そんなケータイカメラの“進化”を、とあるベンチャー企業が支えているのをご存じだろうか。それが、東京大学の構内にオフィスを構える「モルフォ」だ。

 同社がこれまで開発してきたケータイカメラ向け技術や、今年の夏モデルに搭載された新技術、そして組み込み機器としての携帯電話の未来について、モルフォ代表取締役社長の平賀督基氏に話を聞いた。

画像処理でブレを解消

モルフォ代表取締役社長 平賀 督基氏
画像1 モルフォ代表取締役社長 平賀 督基氏

 同社の高い技術力を業界に知らしめたのは、2004年に発表したケータイカメラ向け手ブレ補正技術「PhotoSolid」だ(2006年のNEC製ドコモ端末「N902iS」に初採用)。片手で撮影することが多くなるケータイカメラは、手ブレが発生しやすく、ぼやけた写真になりがち。とはいえ、筺体スペースが限られた携帯電話では、デジカメのように光学式の手ブレ補正機構を組み込むのはなかなか難しい。

 ソフトウェアでブレ補正を行う電子式手ブレ補正は従来からいくつかあったが、PhotoSolidが画期的だったのは、ブレの原因となる動きを画像処理によって検出し、ソフトウェア処理で瞬時に補正を行うというコンセプト。動き検出にはジャイロセンサのソフトウェア版「SoftGyro」という同社技術が使われている。最新のPhotoSolidでは、横ブレ、縦ブレ、前後のブレ、横の回転ブレ、上下方向の回転ブレ、光軸周りの回転ブレなど6自由度に対応した手ブレ補正を行えるようになっている。

 「特殊なハードを使わずに、ソフトウェアですべてやってしまおうというのが当社の開発コンセプト。PhotoSolidは取り込んだ画像から6方向の動きを検出して補正計算を行うので非常に高精度な補正が行える。動き検出に追加のハードが必要ないので、ソフトウェアさえ動けばあらゆる端末に応用可能。現在、ケータイカメラ向けの手ブレ補正では、ほぼデファクトスタンダードな機能になっている」(平賀氏)。

手ブレ補正技術「PhotoSolid」
画像2 手ブレ補正技術「PhotoSolid」

 同社では、このコンセプトを動画に応用した動画手ブレ補正技術「MovieSolid」も開発。こちらもSoftGyroによって4自由度での手ブレ補正を行う。動画撮影時にリアルタイム処理が行えるのも、開発したエンジンが高速だからこそだ。

顔検出も独自アルゴリズムで高速・軽快に

 さらに同社は画像処理技術を応用して、最近のデジカメではスタンダードな機能となっている顔検出機能「FaceSolid」も開発した。顔を自動検出して追尾し、AFや逆光補正などに応用するなどデジカメの顔検出と同じ機能がケータイカメラで利用できる。最新のVer.2.0では、笑顔検出機能も備えた。2009年夏モデルでは、ドコモのSH-05A/SH-06A(同NERV)/SH-07AやauのSH002/biblio/T002、ソフトバンクの933SH/934SH/935SHなどにこのFaceSolidが採用されている。

顔検出機能「FaceSolid」
画像3 顔検出機能「FaceSolid」

 この顔検出機能がことのほか優秀で、へたなデジカメなどでは検出できないような顔の傾きの強いケースや、複数の顔でもしっかりと検出するほか、検出した顔にAFを合わせ続けるといった自動追尾も非常にレスポンスがいい。そのあたりのノウハウを平賀氏に聞いてみた。

 「アルゴリズムは企業秘密だが、とにかく顔のデータをひたすら学習させた。学習させたデータを基にどれだけ高速に顔検出ができるかが腕の見せ所なのだが、テスト段階からPC上ではなく最初から組み込み機器(携帯電話)をベースに開発を行っているところが当社の開発の特徴。携帯電話のような組み込み機器で、どういう計算を行うとパフォーマンスを落とさずに処理できるかなど、これまで蓄積したノウハウが生かされている」(平賀氏)。

 携帯電話のようにリソースが限られた組み込み機器で高速に動く技術は、ほかのソリューションへの応用も容易だ。この顔検出機能も携帯電話以外への展開を視野に入れており、フォトハイウェイ・ジャパンがauのEZweb公式サイトで展開するサービス「フォトこみゅ」で2009年4月から追加された“人物の顔の自動切り出し機能”には、実はモルフォのFaceSolidが採用されているという。

 「普通は、アルゴリズムの開発はまずPCで行っていく。デジカメメーカーでも“PCでまず開発”が一般的なのだが、PC上で開発した技術をデジカメに持っていくとなかなかスピードが出ないため、結局は専用のハードを起こしたりする。われわれの場合は、携帯電話のような組み込み機器であらかじめ100%動かすことを前提に開発するので、ソフトウェアのみで高速動作の機能を実現できる。特別なハードを使っていないので、ほかの携帯電話への展開もしやすい。携帯電話のような組み込み機器では、これが最も重要」(平賀氏)。

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