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モノづくりIT化の基礎情報ガイダンス競争に勝つための失敗しないIT導入(1/3 ページ)

そろそろモノづくりの仕組みをIT化しないとマズイ! そんな危機感はありつつも、どこからどう手を付けたらいいのか、自社の戦略とマッチした製品は何か、などなど、謎だらけだ。セールストークにだまされた気分にならないためにも、事前にしっかり準備しておこう。

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そもそも製品ライフサイクル管理の必要性はどこにある?

 PLM(製品ライフサイクル管理:Product Lifecycle Management)とは、生産からメンテナンス、あるいはリサイクルに至るまでの、製品のライフサイクル全般にわって管理するという概念です。具体的には、CAD/CAM/CAE、デジタルモックアップ、デジタルファクトリー、PDMといったエンジニアリング系アプリケーションを、ERP、SCM、CRMといったエンタープライズ系アプリケーションとの連携をはかることととらえることができます。

 PLMは比較的新しい概念です。しかし、製造業においてはPLMが登場する以前から、CAD/CAM、PDMなどといったエンジニアリング系アプリケーションは、1980年代から広く普及しています。

 それらは主に製品開発期間の短縮や生産工程の効率化のみを実現するものでしたが、日本国内でモノづくりを行う限りにおいては、それらのエンジニアリング系アプリケーションだけでユーザーのニーズはほぼ満たされていたといっても過言ではないでしょう。

コスト削減と納期短縮、グローバル化の流れ

 PLMが普及する転機になったのは、モノづくりのグローバル化が挙げられるでしょう。ひとことでグローバル化、といっても、そこには2つの側面があります。

 1つは、需要のある国・地域での設計および生産の進展が挙げられます。

 米国や欧州を中心に、現地の市場ニーズに合った製品を迅速に投入することで、売れるモノづくりを目指す方向性です。

 もう1つには、生産体制そのもののグローバル化が挙げられるでしょう。

 中国や東南アジアを中心とした現地メーカーや、EMS(電子機器受託生産:Electronics Manufacturing Service)、ファウンドリーメーカーなどの生産拠点を活用することにより、コスト削減と納期短縮を実現していく方向性です。このような生産体制は、現在の日本の製造業にとっては、すでに常識となっています。

 このように2つの側面からモノづくりのグローバル化が進展していくなかで、ユーザーにとっては、製品の企画・開発から設計、製造・生産、出荷後のサポートやメンテナンス、生産・販売の打ち切りまで、製品に関するすべての過程を包括的に管理することが必要になってきています。

 モノづくりにおいて、PLMが重要になってきた理由はここにあります。

もはや大企業だけの課題ではない

 PLMはこれまで、グローバルに企業活動を展開してきた大企業が中心となって導入されてきました。しかしながら、今後は中堅企業、中小企業を巻き込んで展開していくことは、ほぼ確実と見てよいでしょう。

 大企業に部品や素材を納入している中堅・中小企業はもちろん、独自で製品を企画し、製造・販売している中堅・中小企業にとっても、グローバル化への対応は、もはや必須といえます。

 そこで、今回の記事では、中堅・中小企業の担当者を対象に、PLMの製品・業界動向を紹介していきます。

図1 PLM概念図
図1 PLM概念図

PLM製品は多々あるけれど……業界整理マップ

 現在、PLM分野では、さまざまな製品を提供するベンダーが存在しています。しかし、それぞれのベンダーごとに持っている製品や技術、あるいは目指す方向性によって以下のように分類できるでしょう。

エンジニアリング系製品ベンダー

 CAD/CAM/CAEやPDMなど、エンジニアリング系ソフトウェア製品を提供するベンダーです。現在のPLM業界では中心的な存在といえるでしょう。この中でも、PLM全体をカバーする製品ラインアップをそろえたベンダーと、個別製品に特化したベンダーの2つに分類できるでしょう。以降でそれぞれを見ていきます。

PLMトータルベンダー

 PLMをトータルで提供できる製品ラインアップをそろえたベンダー。

 グローバルで展開する企業として代表的なのは、仏ダッソー・システムズ、米シーメンスPLMソフトウェア、米PTC、米オートデスク、日本の富士通などが挙げられます。

PLM個別製品特化型ベンダー

 CAD/CAM/CAEやCAEなど、PLMを構成する個別製品に特化したベンダー。

 米MSCソフトウェア(CAE)、米アンシス(CAE)、米ダッソー・システムズ・ソリッドワークス(CAD・CAE)、CDアダプコグループ(CAE)、日本ユニシス(CAD)などが挙げられます。

Sier系ベンダー

 特定のPLMメーカー製品に依存せず、それぞれの製品を組み合わせて、顧客に対して最適なソリューションを提供することを目指すベンダーも多数存在します。

 日本アイ・ビー・エム、富士通、NEC、電通国際情報サービス、新日鉄ソリューションズ、伊藤忠テクノソリューションズなどが挙げられます。

エンタープライズ系製品ベンダー

 ERPやSCMなど、エンタープライズ系ソフトウェア製品を提供するベンダーも、PLM製品を市場に出しています。

 エンジニアリング系製品ベンダーとは異なった思想のもとで、各社が特徴的な製品を開発しています。独SAP、米オラクルなどが挙げられます。

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