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設計者がCAEを成功させる10の方法MONOistゼミ レポート(1)(3/3 ページ)

MONOist編集部は2009年6月29日に「MONOistゼミ 設計者と解析者をつなぐ 3D活用術」を開催しました。本記事ではキャドラボ 取締役 栗崎彰氏による基調講演の内容を紹介します。

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解析の簡略化について

 皆さん、やたらアセンブリ解析をしたがりますね。ですが摩擦や接触、大変形などの不確定要因がたくさん入ってくるほど、解析精度は落ちますよ。そんな当たり前の事実を理解していない方が、あまりにも多いのです。

 それでも、ちゃんと解ける人は解けますよ? ですが解析が専門でない設計者の人では、相当きちんとお膳立てしてあげなければできないでしょうね。先ほども出ましたスナップフィットの例ですが、接触もして、大変形して、パチンと留めたいということですから、そこそこのスペックのパソコンで14時間ぐらいかかるでしょう。「それじゃ、待っていられないよー」と設計者の人はいうと思いますよ。

 ここで、まずあなたが何が知りたいのか? 例えば応力なのか変形なのか、まずは解析の目的を明確にすることが大事です。


解析の目的の明確化

 上図の右側にいけばいくほど、解析の精度が必要になってきて、コストが上がっていきます。例えば、変形量だけなら「要素の品質」だけとなります。応力で降伏を判断し「壊れるか壊れない」「補強案はどれがいいか」など、降伏などの判断をするには、このように、いろいろなことをします。もしもコストが実験よりも解析をした方が上回るなら、いっそ部品を作って壊してみたほうがいいでしょうね。


コストと解析の効果

 アセンブリ解析をやってしまうと、どんどんコストが膨らんでしまうのです。そこで、上記の範囲に収まるようにモデルや解析の内容を簡略化するのです。スナップフィットの計算なら、健全性の算出や計算書作成などをしてくれるツール、それから板バネ設計ツールなど、便利なものがたくさんあります。Excelベースのツールもたくさんあります。

 これらを使えば済んでしまうような、単純なスナップフィットの解析に14時間もかける必要はありません。

 例えば設計者のスナップフィットの解析は、どのように簡略化しているか。

 スナップフィットですが、オス部品とメス部品とのオーバーラップ分が、例えば0.5mmだとして、カタカタせずにパチンと収まるようにしたい。つまり両側が変形することで重なって組み立つというわけですね。これをCAEで解析しようとしたら、非常に難しい解析になってしまいます。


バネ部品の設計とCAE

目的と判断条件は?

 オスとメス側、両方の部品が壊れないように解析を使って調査します。また「最大応力が材料の降伏応力に対して安全率が2.0以上である」という判断条件を決めておきます。この「判断条件がある」ということが非常に重要なんですよ。そのうえで、以下の図のようにCAEを使っていきます。


設計者のCAEアプローチ

 それぞれが押し込められる方向に、単位荷重を与えていき、それぞれの変形量を求めます。

 グラフまで書かなくてもいいけれど、それぞれのバネ定数は求めておきましょう。以下のような0.5mm分オーバーラップする荷重を求めるための連立方程式を作ってやって解けばいいのです。決して難しい式ではありませんよ?


スナップフィットの荷重算出式

 よって3.482Nの荷重を掛け、両方から押してやればよい。変形量も出てきて、応力も一応出ます。

 これを「接触がドウシタ!」「大変形がコウシタ!」といいながら頑張りつつCAEで解くことも可能です。その方が確かに結果の精度は高いかもしれません。しかしそれでOKかどうかの判断ができるかは分かりません。

 線形解析の範囲では、いま述べてきたような簡易なソフトウェアや計算を使うことで済んでしまうことが多いのです。

 皆さんの部品を線形静解析での範囲で、ある程度精度判定ができるようにしましょう。そのためには解析対象を単品部品に絞り込むようにします。

 また解析精度の判定には、4つの要因があります。

  1. 要素形状
  2. メッシュパターン
  3. 形状近似
  4. メッシュ数と密度

 メッシュの切り方は、解析精度に大きく作用しますので、試行錯誤が必要になります。私が共同研究している「OK法」とは、解析精度を高めるためのメッシュを切る方法です。いまMONOistで連載している「設計者CAEを始める前にシッカリ学ぶ有限要素法」の最後の方の回で解説する予定です。そちらもよろしければ参考にしてみてください。

設計者がCAEを成功させる10の方法とは


設計者がCAEを成功させる10の方法

 樹脂材料は温度が掛かっただけで、耐力がぐんと落ちてしまいます。材料メーカーの出しているカタログにあるヤング率は妄信しないでください。

 使用するアプリケーションのアイコンも理解してください。アイコンは分かりやすいのですが、実際にその機能を使ってみると、自分が思っていたのとぜんぜん違う挙動をすることが結構あります。まずは簡単なモデルを作って、その機能を評価してくださいね。そのうえで思ったとおりに解析が進むか確認をしてから、実機モデルの解析を進めるようにしましょう。

 そして、できるだけアセンブリは使わずに、なるべく単品で評価しましょう。中学高校レベルでいいですから数学や力学を総動員しつつ解析を簡略化していきます。

 最大(主)応力はCAEですぐ出てきます。しかし特異点を出していることが非常に多いのです。そこを基準にすると大変なことになります。ポスト図を妄信してはいけません。特異点はきちんと省いて評価するようにしましょう。

3次元モデルが商品の価値を創造する

 私たちが日ごろ使っている携帯電話も3次元CADを使って設計しています。つまり携帯電話が普及するということは、その3次元モデルの価値もどんどん上がっていくことになります。商品価値とその付加価値が上がり、その商品をお客さまに提供していくことで企業の価値と存在価値、資産価値も上がり、お客さまはその商品の利用価値と市場価値を高めてくださいますね。

 つまり何がいいたいのかといえば、商品全体の価値は3次元モデルにつながっていると思うのです。そこで大切なのは、解析なのだと私は思います。皆さんのお力によって、ぜひ正しい解析をたくさん行って、設計・製造における解析の地位を、ひいては日本製造業の地位を高めていってほしいと思います。

※この講演のプレゼンテーション資料はここからダウンロードしてください(PDF)。

 次回は、スポンサーセッションとパネルディスカッションの内容を紹介します。

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