マスワークス ジャパン(MathWorks Japan、正式名称「マスワークス合同会社」)は2009年7月1日、日本法人の設立を発表した。同社の社長には梨澤利隆氏が就任した。梨澤氏の前職は、IDSシェアー・ジャパンの日本法人担当社長。「100年に一度の不景気だが、マスワークスはそれがチャンスだと思っている。こういう時期だからこそ当社のサポートのよさを知ってもらい、長期的観点で顧客とともに伸びていきたい」と梨澤氏は意気込む。
「日本は世界第2位の経済大国であり、自動車産業においては抜きん出ている。日本における顧客満足度をより高めるために緊密な協調を図る」と梨澤氏は日本法人設立の理由について述べた。今後は日本とじかに接することで、日本ユーザーのサクセス事例やトラブル関連のデータベースなどの情報の質をより高めていき、密な情報共有を図っていく。またこれまでと比べ、日本でのサポートにあてがう人員も大幅に増えることになる。
もともと同社の日本における代理店だったサイバネットシステムとは円満に話し合いが済んだと梨澤氏は述べた。「サイバネットは非常に優秀なパートナーだった。ただ、どんなに優秀だといっても、両社間で情報のフィルターがまったく掛からないようにするのは極めて難しいこと」と梨澤氏。
ムダは高くつく!
今回は米マスワークス(The MathWorks) フェローのジム・タン(Jim Tung)氏が来日し、同社製品を利用したワークフローに関する説明をした。
開発プロジェクトの遅延理由として(「無理なスケジュール」を抜かして)大きなものは、主に以下の3つだという。
- 仕様変更
- 仕様が不明瞭
- アプリケーションが複雑
「ムダ(muda)は高くつくもの。エラーは最終テストの段階で見つかることが多く、開発の最後でバグをいっぱい抱える羽目に。開発過程でエラーがエラーを生み、修正が後になれば後になるほどコストは膨大になってしまう。業種を問わない多くの企業が、このような問題に直面していることを理解していながら、解決ができていない」(タン氏)。各企業では大勢の技術者を投入しているはずなのに、検証における問題(ムダ)が解決できない。
開発の早い段階でエラーを検出して修正してしまえばいいのだが、そうするにはさまざまな課題がある。
タン氏は、早期検証の適用について次の3つのグループに分けて説明した。
- モデルベースデザインの早期導入グループ
- 小中規模の開発グループによる制御システムの開発
- アルゴリズム中心の信号処理、画像処理、通信システムを手掛けるグループ
1.については、大規模チームによる複雑な制御システムの構築を行う開発を指す。該当するのは、航空宇宙、自動車分野。このグループの問題点は、要件とシステムの分析がシミュレーションと連携していない点だと指摘する。この解決策として、統合設計環境による試作、モデリング、試験や制御方法の改善の実施を行うことを挙げた。
2.の「中小規模」とは、企業そのものの規模ではなく、開発チームの規模を指す。産業機械、コンピュータ、OA機器、コンシューマ製品、計測機器などの分野がここに該当する。このグループの問題は、一昔前ならほぼ手動で検証が行えていた工程において、システムが高度化し制御が複雑化したことで、手動で対応できない部分が増えている点だという。開発プロセスの中で手動で対応できない部分により起こるミスなどが積み重なり、品質低下や納期遅延につながっていく。そこで、システムのモデルをリアルタイムシミュレーションし、制御アルゴリズムが要件を満足するか検証する。そこには、CADやCAE(FEA)などのデータも活用していけばよい。
3.のグループはソフトウェアやデジタルハードウェア、通信、エレクトロニクス、半導体などの分野を差す。ここでの問題点は「検証時間とコストの増加」であるという。
その要因としては、下記を挙げた。
- 実際のシステムでアルゴリズムが想定しない動きをする
- 技術者のアプリケーション領域の知識不足
- ソフトウェアやデジタル、アナログそれぞれが別々のツールやワークフローを使用している
- 技術者の作業時間の半分以上が検証コード作成をしている
これらを解決するには、早期のアルゴリズム設計をハードウェアとソフトウェアのワークフロー内に統合していくことが肝心だとタン氏はいう。
すなわち上記3つのグループの問題を解決するには、同社の技術計算言語「MATLAB」、モデルベースデザイン環境「Simulink」を活用し、モデルベースデザインを行うことで早期検証していけばよいという。また同社製品を実際に活用したことで、トヨタやマンローランド、フィリップスなどが開発プロセス改善したことを紹介した。
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