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進化の分岐点を迎えるカーナビ(5/5 ページ)

カーナビが進化の分岐点を迎えている。2006年以降、PNDがナビゲーション機器市場の急拡大をけん引し、携帯電話機のナビゲーション機能も大幅に性能が向上した。こうした動きを受けて、組み込み型カーナビにも変化が求められている。本稿では、まずカーナビ開発の歴史と現在の市場の状況をまとめる。その上で、次世代カーナビ用の最新プロセッサ/リアルタイムOSの動向を紹介する。

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標準プラットフォーム

 カーナビが高機能化する上で、高性能プロセッサと同様に重要な役割を果たすのがリアルタイムOSである。カーナビがDVD-ROMベースであった2000 年ごろまでは、主にμITRONが利用されていた。しかし、HDDを搭載してカーナビの高機能化が始まったことにより、さまざまなリアルタイムOSが利用されるようになっている。

 そして、現在は、このリアルタイムOSを主軸として、カーナビ用の標準的なソフトウエアなどを統合したプラットフォーム(以下、標準プラットフォーム)の構築が進んでいる。表1に、そうした標準プラットフォームについてまとめた。


表1カーナビの標準プラットフォーム
表1カーナビの標準プラットフォーム 

 米Microsoft社は、リアルタイムOS「Windows CE」のカーナビ用パッケージ「Windows Automotive」と、携帯電話機や携帯型音楽プレーヤとの接続を行う車載情報端末プラットフォーム「Microsoft Auto」を統合した新たなプラットフォーム「Motegi(仮)」の構築を進めている。2010年夏までに統合を完了する予定である。Windows Automotiveは、日本製カーナビのOSのシェアの約50%を占めている。また、Microsoft Autoは、米Ford Motor社とイタリアFiat社の車載情報端末に採用されている。カーナビの標準プラットフォームとしては、最も有力な位置にある。

 同社製品の最大の課題は、マルチコアプロセッサのSMP利用への対応である。Microsoft AutoのベースOSである「Windows CE Embedded 6.0 R2」は、まだSMPに対応していない。Windows Automotiveの最新バージョン5.5も、ベースOSがWindows CE 6.0の前の世代に当たる「Windows CE 5.0」であるためSMPには対応していない。これについて、「Motegiの完成までに発表される次期Windows CEがSMPに対応する予定であり、MotegiのベースOSにはそれが採用される」(Microsoft社)という。Motegiは、2015年以降に発売されるカーナビに採用される見通しである。

写真4QNXCARの利用イメージ
写真4 QNXCARの利用イメージ 左側のメーターは、米AdobeSystems社の携帯電話機向け動画再生ソフトウエア「FlashLite」を利用して、液晶ディスプレイ上に表示している。

 カナダQNX Software社は2009年2月に、リアルタイムOS「QNX Neutrino」を中心にした「QNX CAR(Connected Automotive Reference)」を発表した。QNX CARは、カーナビやMicrosoft Autoが対象とする車載情報端末だけでなく、メーター部の表示などをつかさどる制御OSとしても展開する方針である(写真4)。

 QNX Neutrinoは、欧米市場で販売される自動車に搭載される純正品のカーナビや、QNX社の親会社である米Harman International社の製品などに採用されている。最大の特徴は、OSのカーネルとドライバを互いに独立に動作させる「マイクロカーネルアーキテクチャ」を採用していることだ。これにより、あるドライバに不具合が起きても、システムを再起動することなくドライバだけを再起動できるので、高い安全性を確保できる。また、1997年から開発を行ってきたSMP対応については、有力なプロセッサコアのほとんどをサポートする。

 QNX CARは、カーナビをはじめとするシステムの開発に必要なOS、ミドルウエア、HMI(Human Machine Interface)とともに、サンプルとなるシステムも提供する。そして、「このサンプルを基に当社がサポートを行い、顧客の求めるシステムに最適化するところまでが、QNX CARのサービスだ」(QNX社)という。自動車メーカーもしくはティア1サプライヤの技術者であれば、QNX社のウェブサイトに登録することで、QNX CARの評価版を無料で入手することができる。

 2009年3月、ドイツBMW社、Intel社、米Wind River社など8社が非営利団体「GENIVI Alliance」の結成を発表した。カーインフォテインメントシステムの開発コストを削減する、OSやミドルウエアを含む標準プラットフォームの構築を目的としている。ただし、HMIについては、各社の競争領域であるとして対象にしていない。

 GENIVIは、OSにLinuxを採用する。このLinuxは、Intel社のAtomを採用しているネットブック向けに開発されている「Moblin(Mobile Linux)」に準拠する予定である。2009年夏には、AtomとWind River社の「Wind River Linux」で構築したリファレンスプラットフォームを発表する。「ただし、GENIVIが対象とするプロセッサがAtomだけというわけではない。すでに、ARMコアのプロセッサを展開する米Freescale Semicondutor社や米Texas Instruments社などもGENIVIへの参加を表明している」(Intel社の石山氏)という。

写真5Androidを使ったPNDのデモンストレーション
写真5 Androidを使ったPNDのデモンストレーション 2009年5月に開催された『第12回ESEC組込みシステム開発技術展』で、富士通ソフトウェアテクノロジーズが展示した。地図データを内蔵しておらず、地図サーバー、経路計算サーバーと通信することでナビゲーションを行う。

 また、デンソーやアイシン・エイ・ダブリュ(アイシンAW)などが供給しているトヨタ自動車の純正品カーナビでも、標準プラットフォーム化が進められている。現在採用されているOSは、デンソーが「T-Kernel」、アイシンAWがμITRONである。しかし、将来的にはT-Kernelベースに統合される見込みだ。なお、デンソーが採用しているT-Kernelは、イーソルが独自にチューニングした「eT-Kernel」である。

 さらに、スマートホンのプラットフォームとして注目されている「Android」も、カーナビ用途で展開される可能性がある。ただし、組み込み型カーナビではなく、PNDに利用されることになりそうだ(写真5)。AndroidのベースOSは、GENIVIと同じくWind River Linuxである。

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