2次元データもちゃんと生かす。ニッポンのCAD:開催直前! DMS2009速報
2009年6月24〜26日の3日間、東京ビッグサイトで「第20回 設計・製造ソリューション展」(以下、DMS展)が開催される。3次元CADが普及したとはいえ、日本の設計現場から2次元データはまだなくならない。アンドールは、日本ならではのニーズに細やかに対応した製品を同展示会で出展する。
アンドールのDMS展内ブースでは、2次元/3次元統合CAD「CADSUPER Works」、2次元CAD「CADSUPER FXII」、2.5次元CAD/CAMの「CAMCORE EX」などの製品を展示する。また大型パネルディスプレイでプレゼンテーションを披露する。そこでは、ユーザーからどういった要望が挙がっているかを紹介し、それに応える同社の製品の機能を紹介していく。
同社はCADの開発や販売のほか、汎用のCADでは 手の届かない部分の細やかなカスタマイズや、ユーザー個別の要望にマッチした専用ツールの受託開発も強みとしている。
「日本の設計者は、3次元CADを使っていても、2次元での製図と同じように考えて設計します。例えば、中心線を引いてから外形線を描きますし、座標入力で作図していく方法を好みます。当社のCADはそういった日本人好みの作図に対応した機能になっています。改善意欲おう盛なユーザーさんたちの要望を丹念にヒアリングしながら機能を作っています」とアンドール 関東支店長の村田幸雄氏は話す。
現在、アンドールの本社は東京にあるが、生まれは神戸で鉄筋構造物の自動設計システム開発からスタートした。後にそのノウハウを生かし、CADの分野へも進出。やがて同社のCADは、世の中へ大きく認知を拡大していった。そのきっかけは、1990年に同社の2次元CAD「CADSUPER SX III」が「ソフトウェア・プロダクト・オブ・ザ・イヤー」を受賞したことだったという。その後のWindowsまたは当時のパソコンの普及も、同社にとって追い風となった。
同社の製品は2次元CADを中心にして製品を構成してきた。いまもその基本概念は変わらないという。
2007年には、ソリッドワークスからOEMを受けて同社の2次元CAD「CADSUPER」に3次元モデリング機能を実装したCADSUPER Worksを発売した。使い慣れた2次元CADの環境で、3次元CADも利用できるのがその利点の1つとしている。2009年2月に発売した新製品「CADSUPER Works 2009」では、2次元の3面図を基にして3次元モデル化を行える機能や、3次元モデルの穴形状を2次元作図機能の中で「機械要素部品」として自動認識してくれる機能などを追加した。
「設計・製造におけるすべてを3次元データで管理できることは理想といえます。しかしその一方、すぐにすべてを3次元化できないという現実を抱える企業はまだたくさんあります」と村田氏はいう。
大手メーカーの自動車やコンシューマ製品のような量産品の場合なら、設計から製造まで、3次元データによる統一管理はメリットが大きい。人員にも設備にも恵まれていれば、過去製品のデータを利用せず、3次元データで一から設計をしたほうがかえって効率がいいという場合も多々あるという。
一方、受注生産、一品一様といった装置を設計しているような企業では、2次元CADデータや紙で設計している場合がいまだに多い。またそのような企業は、中小企業が多い。過去のデータもうまく生かして設計・加工としていかなければ、リソースが豊富な大手企業に太刀打ちできない。3次元CAD設計を推進しようとすると、例えば2次元CAD時代のデータ(過去の遺産)をどう運用するかが、まず問題となってくる。これは簡単にクリアできる問題ではないと村田氏はいう。
3次元CADでの設計が進んでいるような企業であっても、設計データを受け渡す先、つまり加工や生産の現場ではCADの環境自体がない場合が多い。また世の中には、CADにしても加工システムにしても、多くの種類が存在し、それらを組み合わせて使う。つまり設備の構成も、企業によりさまざまであり、状況は複雑となる。加工設備が、設計元が使用しているCADのデータと相性が悪い場合は大いにあり得るということになる。
いまはたいていの3次元CADには2次元製図の機能が付いている。3次元モデルを作れば、そこから投影図を落としてきて、寸法を振り、2次元図面が作成できる。切削加工やプレス加工に渡すときは、線画だけにしてから中間ファイルに変換し、加工データ作成用に送る。外形寸法や精度が必要な寸法を記入した図面は、2次元製図機能で作った2次元図面をpdf変換して送ればよい。
実際、これが簡単にいかない。その裏では大抵、加工に使えるデータにするための修正、ひどければ書き直しといった作業が発生する。3次元CADで作った2次元図面の線データは、そのまま加工データに使えないことが多い。
まず、機械加工にデータの基になる線データは、一筆書きのようにつながっている必要がある。例えば3次元モデルを基にして2次元製図機能で投影図を作成すると、曲線部分などはとぎれとぎれになる。
また、3次元CADに付属する2次元作図機能で、曲面に開いた穴を真上から投影した場合、穴のエッジは忠実に投影され、円弧や曲線が組み合わさることで円に見えるデータになり、正確な円のデータとしては認識されなくなってしまう。つまり、機械加工の手がかりとなる穴の中心点座標を正確にとらえることができなくなる。同社のCADSUPERシリーズでは、このような加工に不向きな線データを自動補正し、加工に使えるデータに直してくれる機能が付いている。
産業機械の部品などに見られる溝(ポケット)やコーナーの角は、3次元CAD上ではRの付いていない角(通称「ピン角」)でモデリングする場合が多い。加工する装置の条件によって、角の加工形状を決めるためだ。加工現場用に2次元図化する際に、Rや逃げ丸など、適切な角の形状に修正する。2次元の図が修正された後も、装置や工場を変えた場合などに対応できるよう3次元モデルはピン角のままにしておく。2次元CADでの逃げ形状作図は、面倒だ。修正が度重なると、作図ミスも起こりやすくなる。CADSUPER FX IIは、この逃げ形状を自動で付加し、形状パターンもその都度自動変更できる機能を持っている。
同社では、上記のような、2次元CADのデータ活用や設計/製造現場間のデータの橋渡しを支援する機能を得意としている。上記で紹介したのは、あくまでその一例。設計で2次元データや紙図面を参照することが多い方、加工現場へのデータ受け渡しなどで課題を持たれているような方はアンドールのブースでどんどん相談してみよう。同社のCAD/CAM製品の情報を通していまの部品加工事情を尋ねてみるのもいいかもしれない。
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