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ドコモが認めた技術を“ケータイ以外”へ組み込み企業最前線 − レッドベンド・ソフトウェア −(1/2 ページ)

FOTAと呼ばれる無線ファームウェア配信技術で、一躍携帯電話市場に名をはせたレッドベンド・ソフトウェア。NTTドコモも認めたそのモバイル機器向けソフトウェア管理ソリューションが、M2Mの世界でも注目を集めている。携帯電話で培われた技術で“ケータイ以外”の組み込み市場を狙う同社の強みとは?

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FOTAで一躍名をはせたレッドベンド

 さまざまな組み込み機器が世の中にあふれているが、その中でも近年目覚ましい技術革新を続けているのが携帯電話の分野だろう。今、その激戦市場で培われた最新技術を生かして、“ケータイ以外”の新たな組み込み機器市場へアプローチしようという企業が増えている。

 レッドベンド・ソフトウェア(Red Bend Software:以下レッドベンド)は、「FOTA(Firmware Over The Air)」と呼ばれる無線通信を使ったファームウェア配信技術で一躍携帯電話市場に名をはせた米国ベンチャーだ。LG/Motorola/NEC/三洋電機/シャープ/Sony Ericssonなど世界各国の主要携帯電話メーカーが、こぞって同社のモバイル機器向けソフトウェア管理(MSM)ソリューションを採用。現在、全世界の300機種以上/5億3000万台以上のモバイルデバイスで利用されているという。

 同社マーケティング担当エグゼクティブバイスプレジデントのロリ・シルビア氏は「FOTA搭載携帯電話の60%がレッドベンドのソリューションを採用しており、当社の技術はすでに携帯電話のデファクトスタンダードになりつつある。ユーザーは常に最新のソフトウェア環境をスムーズかつ安全に入手でき、メーカーはサポートコストを大幅に減らすことができる」と語る。

高機能化に伴うリスクを回避するソリューション

 携帯電話の高機能化は、メーカーにとって諸刃の剣といえるだろう。他社に先駆けて市場に送り出した高機能モデルは常に不具合のリスクを抱えており、ひとたびリコールの憂き目にあった場合には、端末の自主回収などで多大な費用がメーカーにのしかかってくる。特にシーズンごとにモデルチェンジを繰り返す日本の携帯電話市場では、開発期間も短いことからこのようなリスクが高くなりがちだ。

マーケティング担当 エグゼクティブバイスプレジデント ロリ・シルビア氏
画像1 マーケティング担当 エグゼクティブバイスプレジデント ロリ・シルビア氏

 NTTドコモが2009年夏モデルを発表した日の前日となる5月18日、レッドベンドはNTTドコモとMSMソリューションのライセンス包括契約を結んだことを明らかにした。これにより、NTTドコモおよびNTTドコモとiモードのライセンス契約を締結した通信事業者は、レッドベンドが提供するMSMソリューションを包括的に利用できるようになった。

 「日本のモバイルユーザーは、世界で最も要求が高いと言われている。その市場をリードするNTTドコモが、レッドベンドの技術を必要とした」(ロリ氏)

 NTTドコモが結んだ包括契約では、無線ネットワーク経由でファームウェアが更新できるFOTA製品「vCurrent Mobile」のほかに、ソフトウェアコンポーネントを無線経由で配信できるSCOTA(Software Component Over-the-Air)技術「vRapid Mobile」と、モバイル機器のプロビジョニング/設定/サポートなどに利用できるデバイス管理用クライアント「vDirect Mobile」も、ライセンスの対象となっている。

ユーザーに意識させない“アップデート”

 レッドベンドのFOTA製品「vCurrent Mobile」の特長は、ファームウェアのアップデートを迅速かつ安全に行えるところだ。携帯電話のネットワーク速度が近年高速化されているとはいえ、ファームウェアの更新といった重要な作業はできるだけ素早く済ませたい。移動中に更新作業を行うケースも十分想定される携帯電話なら、なおさら更新作業のスピードアップは必要だ。vCurrent Mobileでは、独自の圧縮化アルゴリズムと効率良い差分更新技術により、少ない通信データでアップデート作業が行えるようになっている。

 また、携帯電話の使用を中断しなくてもファームウェアのアップデートを実行できる機能「バックグラウンド・アップデート」や、更新前のバージョンに復帰させる機能「復帰可能アップデート」なども、vCurrent Mobileのセールスポイントだ。

レッドベンド・ソフトウェア・ジャパン 阿部 一博 代表
画像2 レッドベンド・ソフトウェア・ジャパン 阿部 一博 代表

 レッドベンドの日本法人、レッドベンド・ソフトウェア・ジャパンの阿部 一博 代表は、「バックグラウンドで作業が行われるため、ユーザーはアップデート中もそれを意識せずいつも通り携帯電話を利用できる。この機能は緊急時に通話が必要となったときなどにその有効性を発揮する」と、そのメリットをアピールする。

 「また復帰可能アップデートでは、独自技術によって更新後でも前の状態を保持しているため、ダウングレード用のファイルをダウンロードすることなく更新前のバージョンに復帰できる。これも、アップデートで通信系の不具合が起こった際に欠かせない機能。そもそも、通信トラブルが発生している端末でダウンロードするなんてナンセンスですよね」(阿部氏)

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