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Windows Embedded Standard 2009の新機能特集 Windows Embedded最新動向(2/2 ページ)

従来のWindows XP Embeddedとの“違い”を交えながら、Windows Embedded Standard 2009」の概要と新機能について解説!!

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Windows Embedded Standard 2009から新たに追加されたコンポーネント

 最後に、Windows Embedded Standard 2009から新たに追加されたコンポーネントについて紹介します。

 Windows Embedded Standard 2009には、前述したようなWindows XP Service Pack 3準拠のモジュールだけでなく、新たに以下のモジュールがコンポーネントとして追加されています。

Silverlight 1.0

 「Silverlight 1.0」は、Windows Embedded Standard 2009で新たに追加されたコンポーネントの中で最も重要な機能といえます。Silverlightとは、Web上でリッチなユーザーインターフェイスを提供するもので、XAMLというXML形式のマークアップ言語を使い、ユーザーインターフェイス部分と開発部分とを分離して作業することができます。

 組み込みデバイスでのサーバ−クライアントアプリケーションにおいて、Webアプリケーションは大変有用なものであり、従来の開発を大きく変える手法の1つといえます。ただし、現在Silverlightのバージョンは『2.0』となっており、デスクトップ環境との互換性の点において注意が必要です。

Internet Explorer 7

 Windows Embedded Standard 2009は、Webアプライアンスへの採用も考えられており、Internet Explorer 6と比較して大幅にセキュリティが向上している「Internet Explorer 7」のコンポーネントが追加されました。また、Internet Explorer 7からタブ・ブラウジングも可能となり利便性が向上しています。

 ここで気を付けなければならない点は、Internet Explorer 7コンポーネント“のみ”が提供されているという点です(Internet Explorer 6コンポーネントは用意されていません)。

Windows Media Player 11

 Windows Media Playerについても、最新版「Windows Media Player 11」をコンポーネントとして搭載しています。Windows Media Player 11ではデザインが一新され、検索機能が強化されました。

 組み込みデバイスでは、Windows Media Playerをそのままメディアプレーヤとして利用するケースはほとんどありませんが、今回のユーザーインターフェイスの強化により、KIOSK端末などで、Windows Media Player 11がそのまま使用されるといった例が増えてくるのではないでしょうか。

Remote Desktop Protocol 6.1

 「Remote Desktop Protocol 6.1」の追加について、組み込みデバイス視点で見ると、特に以下の2つが有用な機能として挙げられます。

  • Terminal Services RemoteApp (TS RemoteApp) 
    Windows Server 2008上にインストールされたアプリケーションを利用することができます。「TS RemoteApp」はデスクトップ全体の画面を転送せずに、アプリケーションのウィンドウのみを転送することが可能です。また、アプリケーションをサーバへ集約することでアプリケーションのアップグレード、データの管理が容易になります。
  • Terminal Services Web Access(TS Web Access) 
    「TS Web Access」とは、前述のTS RemoteAppの機能をWebブラウザから利用する機能です。クライアントはWebに表示されたアプリケーションの一覧から利用したいアプリケーションを選択し、使用することが可能です。

 Windows XP Embeddedが多く採用されるカテゴリとして“シンクライアント”があります。TS RemoteAppやTS Web Accessはシンクライアントとしての用途を広げるのに有用な機能であるといえます。

.NET Framework 3.5

 さらに、「.NET Framework 3.5」が搭載されたことで、アプリケーション開発の幅が広がり、.NET Framework 3.5ベースのマネージドコード資産もWindows Embedded Standard OSイメージに流用可能になりました。

 Windows Embedded Standard 2009では、.NET Framework 1.1/2.0/3.0/3.0 SP1/3.5のそれぞれのコンポーネントが存在しますので、動作させるアプリケーションによってバージョンを選択することが可能です。ただし、Target Designer上で異なるバージョンの.NET Frameworkコンポーネントを追加した場合には、.NET Frameworkの各バージョンのコンポーネントが依存関係のチェック時にコンフリクトを起こす場合があります。

 しかし、例えば.NET Framework 3.5のコンポーネントの場合、その実態はコンポーネントにFile情報として.NET Framework 3.5のインストーラーファイルだけを保持しています(図5)。「First Boot Agent(FBA)」中にこのインストーラーを起動させることにより、.NET Framework 3.5の機能をOSイメージに対してインストールするため、.NET Framework 2.0/3.0/3.5の機能が扱えるようになります。

.NET Framework 3.5 SetupコンポーネントのFileメニュー
図5 .NET Framework 3.5 SetupコンポーネントのFileメニュー

Sysprep(Windows System Preparation)

 今回「Windows System Preparation(Sysprep)」が追加されたことで、「System Cloning Tools(fbreseal)」は? と思われる方がいると思います。しかし、SysprepはSystem Cloning Toolsコンポーネントの代わりではなく、“System Center Configuration Manager(SCCM)でOSイメージを展開する際にのみ利用可能”という位置付けになります。

Sysprepコンポーネントの設定
図6 Sysprepコンポーネントの設定

 本稿で取り上げたもの以外にも、Intel、VIA Technologies、AMDの最新チップセットドライバの追加やKernel Mode Driver Framework(KMDF)の搭載が挙げられ、それぞれOSイメージの開発やドライバの開発において、コスト削減につながるアップデートんも含まれています。



 いかがでしたでしょうか? 今回紹介したWindows Embedded Standard 2009は、製品名が変更されたことやサポートライフサイクルがリセットされたことなどの細かな変更はありますが、(開発者にとってうれしいニュースとして)開発ツールの大幅なアップデートが“ありません”でした。いい換えると、『従来の開発手法を踏襲でき、新たに学ぶべき要素、スキルがなく、作業・コストを圧迫しない』ということになります。

 また、一部繰り返しになりますが、Windows Embedded Standard 2009は、堅牢(けんろう)性を増したWindows XP Service Pack 3をベースに、従来のWindows XP Embeddedで提供されてきた「EWF(Enhanced Write Filter)」「FBWF(File Based Write Filter)」などのライトフィルタに代表されるEEF、また、さまざまなデバイスカテゴリに柔軟に対応できる各種モジュールの追加、アップデートを含んでいます。

 日々、高機能化・多様化が進む組み込みデバイスを扱う開発者にとって、今回紹介したWindows Embedded Standard 2009の登場、つまり、こうした機能要求の高まりに対応できる組み込みOSの登場は、大きな選択肢の1つになるのではないでしょうか?


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