空気が流れる空間をメッシュで細かく刻む:実務経験者が教える! ターボ機器の設計解析の勘所(3)(2/3 ページ)
解析の頭脳「ソルバ」をうまく動かすには、適切なメッシュ作成が肝心だ。今回はメッシュの基礎から解説する
メッシュの種類
前ページの例では、空間を4角形のメッシュで刻みました。3次元では6面体のメッシュで刻みますので「ヘキサメッシュ」と呼ばれます。
メッシュの種類には数多くありますが、まず大きく「構造格子」と「非構造格子」に分類できます。構造格子とは、構造解析に使うメッシュではなく、4角形(正方形・長方形・台形など)や6面体が上下左右に規則正しく並ぶ構造を持ったメッシュです。これに対して非構造格子とは、主に3角形や4面体、あるいは3角柱(プリズム型)、4角錐(ピラミッド型)などの多面体で構成されるメッシュです。また、構造格子と非構造格子をミックスした「ハイブリッドメッシュ」も広く使われています。
それぞれに一長一短があるのですが、CFDでの解析精度は一般に4角形や6面体などの構造格子の方が高いとされていますが、規則正しくメッシュが並ぶために複雑な空間、例えば自動車のエンジンルーム内やコンピュータの内部などにはメッシュを切りにくいという欠点があります。反対に非構造格子は3角形などの多面体で空間を埋めるので複雑な形状にも柔軟に対応できメッシュが切りやすいというメリットがあります。最近では、これらの両方を兼ね備えた非構造6面体メッシュもあります。
解析に上記のどのメッシュタイプを使用するとしても、最も重要なのは「品質の良いメッシュ」を切ることになります。
メッシュの「品質」
「品質」といえば、一般には「確かさ」や「信頼性」などを意味しますが、メッシュでも同じで「精度」とも呼ばれます。では、メッシュの品質とは何でしょうか。
メッシュの品質を評価する基準には
- 面積・体積
- スキューネス(歪度)
- アスペクト比
- 拡大率
- 壁面直交性
などがあります。
それぞれの評価基準の計算方法は、流体解析を行うソルバや手法によって異なることがありますが、ここでは一般的な内容で説明します。
先ほどの風が木に当たる例をもう一度見てみましょう(図3.5)。
メッシュは規則正しく縦横に並んでいます。このうち横のラインが折れ曲がっていたとすると、折れ曲がった先の格子は裏表がひっくり返った状態で、計算上は面積が負になります(図3.6)。
先の例では風速だけで説明しましたが、実際の計算では密度や圧力、温度などがどう伝わるかも計算されます。つまり、これでは計算が成り立たなくなります。
次にスキューネスです。これは、メッシュのひずみを意味します(図3.7)。
先の例のように、流体解析では各格子点と隣り合う格子点から現在の状態を計算します。図のようにメッシュがひずんでいると、この隣り合う格子点は計算している格子点から遠いところに位置し、計算に使わない格子が近くに存在するという矛盾した状況になります。この結果、反復計算で流れが正しく伝わらない、悪い場合だと流れが落ち着かない、計算が発散するという状況を引き起こします。
では4角形がすべて直角に並んでいればいいのでしょうか? いくら直角に並んでいたとしても、この図3.8のように極端に薄いメッシュや間隔が広く開いたメッシュが存在すると、そのメッシュの間で流れが変化する場合はその状態を正確にとらえることができなくなります。
もしこの広いメッシュの前に小さな木があればその後ろの流れの渦は再現できません。これが、拡大率とアスペクト比の考え方です。
このように、メッシュ品質を評価する基準はさまざまなのですが、実際のCFDではこれらをすべて十分に満足することは非常に難しいことです。ひずみや拡大率、アスペクト比などの品質はメッシュを所構わず細かくすることで向上することができ、実際そのような手法もありますが、先の風が吹いたときの計算の表が横に数千も並ぶ、さらに3次元で数千の3乗に及ぶと、いくらコンピュータが高速になったとはいえ膨大なハードウェアのパワーが必要になります。
このため、メッシュを切るときには、重要な流れをとらえる個所ではメッシュを細かく品質よく、あまり重要ではない個所ではメッシュを比較的粗くして、若干の品質低下は許容するということも必要かもしれません。
その流れの中で最も重要な個所は壁面、つまり上の木の例では地面となり、それを「境界層」といいますが、次ページで詳しく説明していきます。
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