エコアシスト機能も低コスト
IMAシステムによる燃費の向上を、ドライバーに最大限に利用してもらうために「エコアシスト機能」を開発した。この機能は、大きく3つの詳細機能から成る。1つ目は、インパネ(インストルメントパネル:計器盤)右下に配置した「ECONスイッチ」で開始する「ECONモード」である。ECONモードでは、通常走行時に比べて燃費が向上するようにエンジンの出力を制御し、アイドリングストップする領域を拡大し、ブレーキを踏んだときのエネルギーの回生量も増やし、エアコンの省エネ化も行う。
2つ目は、コーチング機能である。これは、速度メーターと、メーター中央のマルチインフォメーションディスプレイを使って、ドライバーの運転が燃費の面で良いか悪いかを知らせるというものだ(図3)。
3つ目は、ティーチング機能である。これは、より細かくは採点機能とアドバイス機能に分けられる。採点機能では、ドライバーが運転を終えた後で、マルチインフォメーションディスプレイの上段に、リーフ(葉)型のアイコンを使った「エコ運転度」を表示する。下段には、累積した成績から計算したエコ運転度のレベルを3段階で表示する。一方のアドバイス機能は、ホンダの純正カーナビゲーションシステム「インターナビ」を搭載した場合のみ利用できる。エコ運転度の採点の履歴やその詳細、燃費向上のためのアドバイスなどを、カーナビ画面上に表示するというものである。
これらのエコアシスト機能の導入においても、専用のECUを別途設けるなどして大幅にコストが増加することがないように工夫してある。「エコ運転度の演算などは、エンジン用のECUで行っている。エコアシスト機能のために増やした標準装備のシステムは、マルチインフォメーションディスプレイくらいだ」(ホンダ)という。
“世界初”のハイブリッド車
新型インサイトの開発責任者で、本田技術研究所の主任研究員を務める関康成氏は、「当社社長の福井が2006年5月に、『新型のハイブリッド車を2009年までに開発する』と発表したときには、まだ粘土で作ったモデルしか存在していなかった。しかし、その時点で、すでに5ドアハッチバックにすることは決めていた。全世界で年間20万台を販売できる自動車の形状となれば、5ドアハッチバックが最適だろうと考えている」と語る。
新型のインサイトは、完全な新型車であるにもかかわらず、1999年に発表された「インサイト」という名称を継承した。関氏は、その理由について以下のように説明する。
「初代のインサイトが2006年9月に生産中止になったこともあり、新型のハイブリッド車は別の名称にすることを考えていた。そこで、『インサイト』を含めたさまざまな名称の候補について検討したのだが、海外からの意見のほとんどは『インサイト』を支持するものだった。実は、海外市場におけるハイブリッド車の販売開始時期は、トヨタ自動車の『プリウス』よりもインサイトのほうが早い。つまり、インサイトという名称は、海外では世界初のハイブリッド車として広く認知されていたわけだ。全世界で年間20万台の販売を目指すのであれば、インサイトという名称のブランド力を利用すべきだろうと考えた」。
なお、発売から1カ月が経過した2009年3月9日時点で、インサイトの受注台数は、目標の3.6倍となる約1万8000台に達している。
(朴 尚洙)
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