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ビジネスの競争に勝つ戦略はたった2つしかないマイケル・ポーター教授のものづくり競争戦略(2)(2/3 ページ)

競争優位とは、ROICを評価指標として、プレミア戦略か低コスト戦略かを決定し、価値連鎖の活動から生み出すものだ

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業界構造を分析し、在るべきポジションを考える

 戦略を考える際には、全社戦略(コーポレート戦略)と事業戦略(ビジネスユニット戦略)の違いを明確に理解しましょう。多くの方はご存じでしょうが、非常に重要なことなのであらためて説明します。

 個別の事業に関する戦略は、例えばカメラ事業や複合機事業といったレベルの話です。これはコアなレベルの戦略で、競争優位を持つことが事業を継続させます。もう一つの戦略は、全社的なレベルでの戦略です。これは、各事業を企業活動全体の中でどうやって相互に結び付けるかです。全社戦略は重要ですが、経済的な成果という点では事業戦略に次ぐ位置付けとなります。今日は事業戦略に重点を置いてお話ししましょう。なぜなら事業戦略こそが競争優位を生み出し、企業競争の勝ち負けを決めてしまうからです。

 戦略を作り出すのには、まず経済的成果を生み出すのは何かを明確に理解しなければなりません。企業にとって真の目標がROICだとしたら、投資した資金を上回る利益を得るために、何によって投資の決断を下したらいいのか、何が利益を生むのだろうか、という疑問がわいてきます。利益を上げながら成長するにはどうしたらいいか。

 これらの答えとして、まず事業の成果は2つの異なる環境要因に左右されることを理解してください。1つは、ある事業で競争に参加しようとしている業界固有の要因です。これを業界構造(インダストリーストラクチャ)と呼びます。業界構造は、事業の収益率に大きな影響を与えます。皆さんもよく理解していると思いますが、企業が事業から得られる収益率の平均値は業界ごと大きく異なります。そしてこの業界ごとの収益率の違いは、とても安定的です。これは世界的に見ても安定的です。もう1つの業績に与える要因は、その業界において企業が獲得しているポジションです。業界ごとに収益率の平均値は異なりますが、問題なのはその企業が業界平均を上回っているか、下回っているかです。

 事業の成果に影響を与えるこの2つの要因は、どちらも等しく重要なインパクトを持ちます。非常に収益性の悪い業界でも、良いポジションを獲得できれば満足いく業績を上げられます。逆に苦しいポジションしか獲得できなかったとしても、その業界が大変収益性の高い業界だったとしたら、同じように良い業績を上げられるわけです。ここで指摘しておきたいのは、企業の業績について、業界構造によるものと自社のポジションによるものをきちっと切り離して認識することが非常に重要です。

 事例を紹介しましょう。この2つの企業についてお聞きになったことがあるかもしれませんね。レブロンは化粧品メーカーで、パッカーは大型トラックメーカーです。この2社のROICを業界平均の業績と比較して見ると、レブロンは13.6%ですが業界平均は約28%です。これは先ほど挙げた例の1つで、非常に魅力的な業界に参入しているけれども、業界平均を下回る業績に甘んじている例です。なぜなら競争力の弱いポジションしか獲得できていないからです。競争優位を持たず、他社にないユニークな価値を持たないからです。ライバルに負けてしまっているわけですね。

 一方パッカーは、ビックリするほど高い収益を上げています。大型トラックメーカー業界の平均は10.5%程度だというのに、この企業は非常にユニークな優位性を獲得して、この魅力ない業界にあって31.6%の数字を残しています。この2社はまったく異なった環境に身を置いています。パッカーは強力な戦略を獲得しましたが、問題は魅力のない業界にいることです。レブロンの根本的な問題は、せっかく魅力的な業界にいるのに、ポジションが悪いことです。彼らはまったく異なる問題を心配することになります。

 皆さんは、自社が抱えている問題がビジネスのどこにあるかを理解すべきです。皆さんが身を置いている業界の平均ROICはどのくらいですか。皆さんの会社はその平均値を上回っていますか、下回っていますか。ROICの値はどれくらいですか。ここが戦略を考えるうえでふさわしい出発点です。つまり業界構造に関する戦略と、業界内のポジションに関する戦略とを明確に分けて考えるべきです。

 今日は、業界内のポジションに関する競争戦略をお話しします。なぜならこの部分は皆さんの関心が高く、また製品開発にとって重要なのはポジショニング戦略を理解することだからです。

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