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受注生産と見込み生産の混在を乗り切る方法こうすればうまくいく生産計画(5)(4/5 ページ)

今日の製造業が抱えている根本問題は「大量・見込み生産の体制を残したまま、多品種少量の受注生産に移行しようとしている」ことにある。生産計画を困難にするさまざまな要因を乗り越え、より良い生産計画を実現する方法を検証してみよう。

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「繰り返し受注生産」の正体

 では、最初に挙げた工場において、かんばんで動く自動車部品はどう位置付けられるべきなのか。私はその知人に、製造に要する全体リードタイムを尋ねた。素材の購買手配期間を除いても、成型から検査までの工程を足すと4〜5日かかるという。しかし、顧客の自動車会社から来る納入指示のリードタイムは、1日未満である。ここで、本連載第3回「納期と在庫のトレードオフを解決する知恵とは?」の「図1 製造業の4つの生産形態」をもう一度見てほしい。繰り返し受注生産におけるリードタイムは、材料購買+加工組み立て+物流に要する時間の合計が、本来は必要なはずである。それよりも短納期で持ってこい、と要求されるということは、つまり見込みで途中まで生産しておくしかないことを意味している。

 私は、自動車会社からの先行内示について尋ねた。内示で生産量を決め、かんばんでその分納のタイミングを制御する、というのが各社の建前だろう。だが、知人の答えは、こうだ。「愛知向けの仕事は、翌月内示量はまあ、ほぼ信頼できます。しかし、ほかの仕向け先はかなりブレるので、ほんとに目安程度ですね」。つまり、翌月内示を信用してその数量だけ作っていては、月中で足りなくなる可能性が高いため、自分で生産量を設定しているのである。

 以上が何を意味するか、お分かりだろうか。実は、日本の多くの部品メーカー・材料メーカーは、「顧客仕様の品目を繰り返し作る」という意味では受注生産だが、実需ではなく見込みで作らざるを得ないという点では、見込み生産なのである。この知人の会社では、ほぼ全品が実は見込み生産品なのだった。もう一度、繰り返そう。

 

受注後に十分なリードタイムを与えられているケースのみ、真に受注生産の名に値する

 

 リードタイムが足りない場合は、需要を想定して途中まで作りだめし、未引当のストック在庫を持つしかない。これはちょうど、ウナギ屋で食べることを考えればよい。昔風の本格的な鰻屋は、注文を聞いてからウナギを割き、蒸して、焼いてタレで味を付けてから客の前に出す。当然、かなり待たされる。一方、現代風の食堂では、あらかじめウナギは割いて蒸し、白焼きの途中まででストックしておく。そして、客の注文を聞いたらすぐタレ焼きにして出してくる。リードタイムは短い。しかし、需要を見込んで途中まで製造しストック在庫を持つ必要があるのだ。

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