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受注生産と見込み生産の混在を乗り切る方法こうすればうまくいく生産計画(5)(1/5 ページ)

今日の製造業が抱えている根本問題は「大量・見込み生産の体制を残したまま、多品種少量の受注生産に移行しようとしている」ことにある。生産計画を困難にするさまざまな要因を乗り越え、より良い生産計画を実現する方法を検証してみよう。

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ある中堅部品工場の悩み

 少し前のことだが、知人の工場を訪問した。そこでは成型・組み立て・検査を中心とした工程で多種多様な品目を作っていて、特に自動車部品と電子機器部品が多かったが、特殊な性能を持つ自社製品も開発していた。開発技術力を備えた実力派の中堅企業である。一般消費者の手元に直接届く商品はないから世間的な知名度はないが、限られた業界内では海外でも名前が知られている。こうした企業群が日本のものづくり産業を支えているのだな、とつくづく実感した。

 ところで、その知人の経営者としての悩みは、製造にあった。それも別に品質や歩留まりの問題ではない。生産管理、特に生産計画の立て方にあった。知人いわく、悩みは「プッシュとプルの混在」にあるという。自動車部品製造は典型的なプル型生産であり、電子かんばんで納品指示が来る。納入は日に数回、時間指定で、かつ指示から納品までのリードタイムは24時間以内だ。それも1社だけでなく、大手の自動車メーカーすべてを相手にしている。小さな部品だが、保安上重要なものは全品検査が必要である。品質検査部門にはずらりと机が並んで、大勢の女性たちが1品ずつチェックをしている。

 その一方で、この会社には自社で計画を立てて生産し、自分で売りさばかねばならない製品もある。プッシュ型の生産品目というわけだ。こちらの方が当然利幅が大きい。ところが、自動車部品の方は問答無用、待ったなしで納品指示がくる。どうしても自社向けの製品の計画が攪乱(かくらん)されて、顧客に約束した納期が守れなかったりする。熟練した計画担当者がExcelで毎日スケジュールを書き直しているが、非常にやりにくい、何とか知恵はないものかと問い掛けられた。

 中堅企業である。大げさなERPシステムなど間尺に合わない。しかし廉価な生産管理パッケージもMRPが中心ロジックになっていて、プル型生産に合いそうもない。PCで動く生産スケジューラもいいが、複数工場の連携が難しいし、プッシュ型生産や資材購買の機能が手薄だ、という。確かに難しい問い掛けである。

 私は、この知人の問い掛け自体の中に、解決のヒントがあると感じた。「プッシュとプルの混在」というが、この問題の立て方自体、正しいのだろうか。そもそも何がプッシュで何がプルなのか?

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