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欧米のこだわり系ものづくりと3次元活用メカ設計 イベントレポート(6)(2/2 ページ)

作業を効率化してコストダウンを図りたい。だがものづくりへのこだわりは捨てたくない! そんな技術者の願いを実現するのが3次元設計だ

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複雑なタイヤ設計を効率化

 ブリヂストンはその創業者の名前「石橋」が語源であると誰もが知る日本企業である。このイベントにてPTCユーザーとして登場したのはブリヂストンのヨーロッパ技術センター(Bridgestone Technical Center Europe)だ。

 ブリヂストンでは、大本となる設計を日本で行う。そして数々の有名自動車メーカーが集うヨーロッパでは、主にローカライズ、評価・検証、生産を行っているとのことだ。自社のサーキット内で実際に走行しテストするほか、CAEによる解析も行っている。


画像5 3次元化されたタイヤの設計・製造

 タイヤの構造は、結構複雑である。タイヤは、主にトレッドという溝、放熱用のショルダ、ショックを吸収するサイドウォール、ビードという固定部などで構成される。また、それぞれが細かな部位に分別され、機能的役割を持っている。 複雑な構造なうえ、耐久性や耐摩耗性、防振性、フィーリングなど多岐にわたる項目が評価される。さらに、顧客によって、どこの項目に重点が置かれるのかがそれぞれ異なるという。また、EUの環境規制(ノイズや転がり抵抗)などにも対応させる必要がある。

 タイヤの設計・製造では、このように幅広く複雑な項目を見渡しつつ評価しなければならない。


画像6 タイヤ構造の3次元モデル

 中でもトレッドの設計は大変重要であるという。タイヤは車両の足であり、そのトレッドがすり減れば、車両の乗り心地や燃費が悪くなっていく。このトレッドは走行条件に合わせ、さまざまな種類が存在する。複雑な形状のトレッドには、サイプという細い溝が彫られている。これは路面に対するグリップをコントロールするほか、排水を助ける。トレッドだけ見ても精密である。


画像7 トレッド周辺の3次元モデル


画像8 3次元トレッドピッチ

 上記のようなたくさんの課題に効率よく取り組むには、3次元化は欠かせないわけである。「ブリヂストン ヨーロッパ技術センターでは、90年代半ばに生産部門の3次元化を行いました。開発部門の3次元化は、それより遅れて2000年になってからです」ブリヂストン ヨーロッパ技術センター IT部門マネージャ ユリシーズ・アントニニ(Ulisse Antonini)氏は説明した。

 現在は、自社開発のソフトによって2次元設計されたトレッドピッチ(トレッドのブロックのこと)を3次元モデル化するという流れになっている。タイヤの構造も細部にわたり3次元モデル化するという。複雑で独特なトレッド形状は、3次元CADのサーフェス機能で作成する。


ブリヂストン ヨーロッパ技術センター IT部門マネージャ ユリシーズ・アントニニ(Ulisse Antonini)氏

 ソリッドモデルはショルダ部の変形などの応力解析や耐久性解析に用いる。またソリッドモデルを利用して金型も作成する。金型サプライヤにも同じ3次元CADを導入してもらいデータをやり取りすることで、製品の品質を向上させたという。サイドウォールの打ち抜き加工では、設計データと金型データを連携できるよう、3次元CADのカスタマイズに取り組んだという。

 「従来よりも製品の品質や機能を高めながらも、生産期間が短くなりました。それに顧客の要求に対しても素早く対応できるようになりました」(アントニニ氏)。将来は、複雑な運動メカニズムの研究や、新タイプを設計する際の構想の再利用の際にも、3次元モデルを活用したいという。

 経済不況の真の正念場は2009年中だとよくいわれる。本イベント会場内では、PTCにしても、そのユーザーにしても、「不景気だ、不景気だ」と嘆く声よりは、「ベストな部分は、今後もしっかり維持をしよう」「いまがプロセス改革のチャンスだ」というポジティブな声が多かったと記者は感じた。確かに、この経済不況はプロセス改革のきっかけ――ITシステムの導入検討を進める良い機会ともいえるかもしれない。

 例えば1つの自動車メーカーの下には、おびただしい数のサプライヤや金型業者がぶら下がっている。製造業の多くはSMB(中小企業)といわれる。金型業者も、そのほとんどはSMBである。製造業をターゲットとするITベンダにとってSMBは大きな市場といえる。

 ここ最近、PTCなどITベンダは、SMBに対するプロモーションにも力を入れる傾向が見られる。従来のように大規模で高機能なシステムを提案するだけではなく、企業それぞれの状況にぴったりと合ったシステムを提供できるような体制を整えつつ、比較的廉価な製品も発表している。欧米ライクな大規模な統合型ITシステムに苦手意識を持ちがちだった日本企業にとって、それもまた良い機会といえるのではないだろうか

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