競合商品を設計分析で駆逐しようぜぃ! パート2:甚さんの設計分析大特訓(7)(3/3 ページ)
前回行った競合分析をもう1度やってみよう。普段何気なく使っているボールペンにも、さまざまな戦略が隠されているのだ。
次なるチャレンジャー
さあ、前ページのPOWER TANKにトレードオフ戦略で勝負を挑む商品の登場です。「元祖! 疲れを軽減する筆記用具」として人気を誇るボ−ルペンです(図8)。
通常のボ−ルペンの最大軸径が8〜12mmであるのに対し、図8のペンはその径が14mmもあります。これは「疲れを軽減する」という新たなコンセプトを確立した極太のボ−ルペンなのです。
重心付近へ重量を集中させることにより、操作性、つまり、スムーズな筆運びを最優先しているそうだ。
なるほど、これもよくできているなぁ。ボ−ルペンって単純な商品かと思っていたけど奥が深いのですね。
べらんめぇっ! ボ−ルペンの奥が深いんじゃねぇだろがぁ! 設計の奥が深いんだよ。オメェ、エリカちゃんといますぐ交代しろー! いますぐぅっ! いま……っ。
ホイサーッ!!
良君は、甚さんの鉄拳をかろうじて両手で受け止めました。頭をポンポン殴られては、これまで学習したこともぜんぶリセットしてしまいます。
ンモーッ! エリカちゃんとチェンジするわけにいかないんだってばっ! そして、ぶたないでっ! ちゃんと考えますってっ!
トレードオフ戦略
図9右図が、トレードオフ戦略による極太ボ−ルペンです。さて、どこをどうトレードオフしたのでしょうか。
例えば、図9のおける右側のボ−ルペンが先に市販されています
筆者注:トレードオフを理解するための筆者の想定を含んでおり、事実と異なる部分あります。
まず左側の加圧式ボ−ルペンにも、図示しない第4位以下に「操作性」があります。操作性とは、ノックの感覚やリフィルの交換作業性、そして「筆の運び」などがあると思います。図9の右図では、この「操作性」を優先第1位に設定したのです。この優先順位で新規参入する場合、強烈な性格を決定付ける第1位(操作性)で勝負を賭けます。
また繰り返しになりますが、トレードオフ戦略は、新たな「設計思想とその優先順位」の商品が市場に受け入れられるのか否かの市場調査のやり直しが必要です。「早く商品化をしなくては!」とあせる余り(あるいは自分たちのトレードオフ戦略に酔いしれる余り)、ここで手を抜いてしまう場合が多く、「何でもあり!」に変ぼうし、売れない商品や欠陥商品を生み出す場合があります。ここが大事な設計ポイントになります。
どうだ、良君! 設計者と呼ぶにはまたまだ先のようだが、よく頑張っているなぁ。オレのツレも元気になったし、今日はこれから、クイッと熱燗(あつかん)といこうじゃないかい。
はい、ぜひ! 甚さん……、今年もよろしくおねげぇしますだー!
設計の神髄とは
今回の内容は、どのくらい理解できましたか?
近年、3次元CADはますます進化を遂げていますが、設計者が部品の外観をモデリングするテクニックの習得に偏ってしまっている場合が少なくありません。もちろん、そのテクニックも重要ですが、いま一度、設計の神髄に戻ってみましょう。次回は、筆者の考える設計の神髄にちょっと触れたいと思います。(次回に続く)
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