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BOMの使いやすさを追求する国産PLM ― Obbligato IIものづくり支援ソフトウェア製品レポート(2)(2/3 ページ)

製造業を取り巻く厳しい経営環境の中で、高い次元のQCDを達成するにはITツールによる業務支援が不可欠である。本連載はPLM、ERP、SCMなど製造業向けの代表的な業務支援ソフトウェアの特徴をレポートしていく。

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中国市場を取る決め手は“セキュリティ”

 国内のPLM市場で大きなシェアを持つObbligato IIは、国内のものづくり企業へのセールスに関して、海外PLMベンダ製品はそれほど脅威に感じていないという。相馬氏によれば「海外PLMベンダ製品とコンペになること自体があまりないですね。特にBOM情報をものづくりの基幹システムとしてうまく管理したいという要望を持つお客さんには、Obbligato IIの強みが発揮されます」と自信を見せた。

 それではObbligato IIの販売は盤石なのかというと、実はそうともいい切れないようだ。日本のものづくり企業とともに歩んできたが故に、国内市場での強さとは裏腹に、海外市場での浸透が十分ではないようなのだ。「日本のものづくりと海外のものづくりでは、考え方が若干違っているようです。例えば、中国の製造企業さんにBOMは大事ですよといっても、なかなか理解してもらえないのです。アジアの新興国などでは2次元の図面を経験せずに、いきなり3次元CADを設計ツールとして使い始めています。そうするとPLMのようなデータ管理ツールを選ぶ際に、3次元という切り口から検討するケースが多いです。つまり、3次元CADツールを中心とした海外ベンダのPLMが競争力を発揮してくるのです」(相馬氏)。

 日本では2次元の図面に出図する文化が根強く残っているが、中国などではすべて3次元データだけでものづくりの工程を回しているそうだ。こうしたものづくり文化の違いが、Obbligato IIの海外浸透を遅らせる原因となっている。しかし、Obbligato IIは今後、海外市場での拡販を強く意識しているという。その切り札として2008年10月30日に発表されたのが「Obbligato II R9.1」である。その目玉となる機能強化は、情報漏えい対策だ。

 「中国市場への拡販で苦労した経験を基に生まれたのが、この情報漏えい対策機能です。中国などへ現地設計を展開している日本企業では、知的財産の漏えいの問題で非常に苦労されています。そこで3次元データで強い海外PLMベンダに海外市場で対抗する切り札としてこの機能を取り入れたのです」と相馬氏は機能強化の背景を語った。

 日本企業は情報漏えいを非常に気にして、設計業務自体を海外に出さない傾向が強いが、そうばかりもいっていられない状況にあるようだ。現地の顧客ニーズを取り込むためには、どうしても現地のエンジニアを設計に参加させざるを得ない。

 日本の自動車メーカーなどが中国に進出した結果、大手の部品メーカーもそれに引きずられて中国に拠点を移した。製品のベースとなる設計は日本に抱えてはいるものの、ローカライズ設計と呼ばれる領域は、現地のエンジニアに設計を依頼する必要が出てくるという。

 例えば工作機械では、日本での1日の稼働時間は8時間前後なのに、中国では3交代制で24時間連続稼働する。そうすると、消耗部品を強化するための設計変更は、現地のエンジニアに依頼せざるを得ないという。しかし、現地のエンジニアにCADデータを渡すと、すぐに社外へ漏れてしまうのだという。

 一般的な情報漏えい対策ソリューションでは、PCのUSBメモリやプリンタなどのデバイスを使用できなくすることが多い。しかしこのようにハードウェアを使用できなくすると、機密情報ではないデータの扱いが非常に不便になる。これに対してObbligato IIでは、機密扱いをするデータと通常のデータを共存させつつ、アクセス制限やコピー禁止を行いたい設計データなどはObbligato IIの機密データ領域に格納するという手法を採用した。機密データ領域に格納したファイルは、メール添付や外部メディアへのコピー、画面キャプチャなどをユーザー個別に権限を設けて禁止できる。それ以外の一般データは普通にコピーやプリントアウトが可能だ(図3)。

図3 情報漏えい対策(持ち出し制御)機能
図3 情報漏えい対策(持ち出し制御)機能
通常データの持ち出し(印刷・コピーなど)を制限をすることなく、機密データの情報漏えいを防止する

 「他社のソリューションでは、機密データの暗号化の手法を採用するケースが多いようですが、Obbligato IIでは暗号化を使わずに情報漏えいを防ぐ技術を開発した点も特徴といえます」(相馬氏)。この情報漏えい対策機能はR9.1から搭載されたオプション機能だ。アクセス権限の管理やアクセスログの監視機能はR9.1以前のバージョンでも可能である。

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