Linux基盤「ALP」でケータイOSのエコシステムを構築:組み込み企業最前線 − ACCESS −(1/2 ページ)
ACCESSの「ALP(ACCESS Linux Platform)」がいよいよ離陸のときを迎えそうだ。この1、2年で携帯電話向けプラットフォームをめぐる状況は一変したが、同社は潜在力を秘めたグループの中心に立ち、オペレータ、端末メーカーとのエコシステムを構築する。
夏の“iPhone騒動”は一段落したが、携帯電話業界はこれからも激動し続けるだろう。
グーグル、アップルの新規参入。Linux、Symbian OS、Windows Mobile、OS X iPhoneといったオープン・汎用OSの浸透と、それに伴う端末の高度化。国内に限っては、市場飽和に販売奨励金廃止が追い打ちを掛けた結果、市場縮小に入る(2008年第1四半期、携帯電話大手3社の販売台数合計は前年同期に比べ2割減少)、さすがの“ガラパゴス”もこれまでのようにはいかない……。
そうした状況の中、携帯電話向けブラウザ「NetFront Browser」で知られるACCESSは、買収で手に入れたPalm OSを発展させた「ALP(ACCESS Linux Platform)」を擁し、列強がひしめく携帯電話向けプラットフォームの覇権争いで独自の立ち位置を取る。
「NetFront BrowserをはじめとしたNetFrontシリーズは現在、年間2億台の端末に搭載されるまでに成長したが、ALPも大きなビジネスにできるとみている。調査会社によれば、2012年でLinux搭載モバイル端末の年間需要は3〜4億台に達する。仮にALPで3分の1のシェアを取っただけでも1億台を超える」と、同社 取締役副社長兼CTO 鎌田富久氏は強気の姿勢を見せる。
グローバル標準の輪の中に飛び込む
ここ2、3年、ACCESSのALP事業をめぐる動きは目まぐるしかった。2005年末、携帯電話オペレータのオレンジ(フランス・テレコム)らとともにモバイル向けLinuxの標準化団体を立ち上げ、翌年2月にALPを発表した。転機は2007年末。自前プラットフォーム「MOAP(L)」を推進していたNTTドコモ(以下、ドコモ)のLinux陣営(ドコモ、NEC、パナソニック モバイルコミュニケーションズ)がALPへの乗り換えを決断したのだ。
それに呼応してACCESSは2008年2月、ドコモのLinux陣営がモトローラ、ボーダフォンなどと先に創設していた「Linux Mobile Foundation(LiMo)」へコアメンバーとして合流する。グーグル、アップルなど外部からの“侵食”に対抗するため、世界の携帯業界のオペレータ、メーカーが大同団結し、オープンソースの携帯電話向けLinuxプラットフォーム「LiMo Platform」をグローバル標準として推進している。その輪の中にACCESSも加わり、ALPにLiMoモジュールを加えたり、ALP上でLiMo APIをサポートするなどして、互換性を確保したのだ。
鎌田氏はLiMoの強みをこう話す。「Windows Mobile、OS X iPhoneはもちろんのこと、(アライアンス団体のOpen Handset Allianceがあるにせよ)グーグルが主導するAndroidとも違い、LiMoはオペレータが良い意味で口を挟めるオープンプラットフォームだ。端末メーカーにしても、特定企業の色がないので抵抗が少ないだろう」。
LiMo PlatformとAndroidのどちらがより開かれている(オープン)かの議論はさておき、LiMoは現在、50社を超えるメンバーが加盟しており、各地域の最大手オペレータの名前があるのは確かだ。米国のベライゾン・ワイヤレス、欧州のボーダフォン、そして日本のドコモなどである(ちなみに、ドコモはOpen Handset Allianceにも加盟している)。
ライバルはAndroidだけではない。現状、スマートフォン向けOSの7割近くを占めるSymbian OSも、シンビアンを完全吸収したノキアの戦略によりオープンソース化、「Symbian Foundation」が設立された。同時にノキア「S60」、ドコモ「MOAP(S)」など各社が独自開発してきたSymbianプラットフォームの統一、オープンソース化も図られている。これに対しても鎌田氏は余裕を見せる。「完成度の高いS60などがオープンソースとして使えるなら、飛び付く端末メーカーもあるだろう。しかし、もともと“ケータイ小型OS”として開発されたSymbian OSがこれ以上高機能になるのは容易ではないし、対応CPUがARM系だけなのもネックだ。それに対して、Linuxはマルチコア対応もすでに商用レベルで、対応CPUも多い。その差がこれから出てくるだろう」。
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