“丸パイプ同士”をやめて工数削減&コストダウン:事例で知るVA・VEのコストダウン手法ABC(5)(2/2 ページ)
丸パイプのほうが安全な感じがするから。先入観だけで丸パイプを選択してしまうと余計なコストが掛かってしまうだけだ
【設計課題10】パイプ組みのリンク機構
以下の図4a・bは、よく見掛けるパイプ組みのリンク機構の例です。
ここでも“丸パイプ同士”と“角パイプと丸パイプ”とを比較して説明していきます。
図4aの例は、丸パイプ2本でリンクを構成しています。コの字型プレートを丸パイプに溶接しています。単に丸パイプとコの字型プレートの構成だけであれば、位置の精度はそれほど要求されないでしょう。
しかし本課題のようなリンク機構となると相手方の位置関係に左右されるため、この丸パイプとコの字型プレートの位置出しをしっかりして溶接加工をすることが要求される場合が多いです。そのための精密治具も必要でしょう。
一方、図4bの角パイプと丸パイプでのリンク機構は角パイプの端末に軸を入れられるように加工するだけ(溶接の必要がない)でリンク機構ができ、また位置の精度も端末加工次第ということになるため、加工を標準化できます。
実際の部品をばらしてみると一目瞭然(りょうぜん)ですが、丸パイプ同士だと溶接加工が入り、熱変形も起こります。こういった加工は、熟練加工者でなければうまくできないため、加工単価は上がる可能性が高いです。さらに部品点数も角パイプよりも1点多くなるということは、それだけ管理品目が増えるということになり、間接費も多くなります。
どうしても譲れない部分だけ、丸パイプを
要求仕様に基づいたデザインや安全性を考慮したうえ、丸パイプを使った方がいいと判断する場合には使用する個所をできるだけ限定させて、ほかの部分を角パイプにすることで加工の難易度を下げていくことがコストダウン、納期短縮化、品質安定化につながるでしょう。
角パイプの中には、角部がエッジになっていたりR形状になっていたりするものもあります。これを採用しているメーカーは多く見掛けます。
事例サンプル
以下は、病院で使用するベッドの事例です。
図5aはパイプ部のすべてを丸パイプで構成しています。骨組みを丸パイプで製作しているため、安定性がよくありません。また、丸パイプ同士の接合部分が増えるため、加工性、加工時間ともに悪くなりコストダウンが難しくなります。
図5bでは骨組みを角パイプで製作して、人が触れる部分やマットレスを置く部分を丸パイプで製作しています。こちらだと骨組みのバランス(安定性)を確保しやすいことと、角パイプと丸パイプの溶接とすることにより加工性をよくし加工時間を短くすることができます。
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次回のテーマは、要求仕様を考慮して材料変更(鉄→アルミ、樹脂化)することでコストダウンを図る事例を紹介します。お楽しみに!
Profile
舩倉 満夫(ふなくら みつお)
製造業に生きて40年、省力化機器製造会社、プレス金型製造会社、半導体製造装置、金型製造会社、ワイヤハーネス用全自動端子圧着機製造会社と経験し、運良く工場内でメンテナンス、機械加工、組み込み、設計、品質管理、生産管理、購買部とものづくりのあらゆる工程を経験。この特異な経験と知識を生かした最適加工および工法により、数々の設計改善・コストダウンを実施してきた。さらにビジネスへと展開するべく、2001年、フナックス・エンジニアリングを設立し、現在に至る。モットーは「仕様に基づいた品質の追求」。
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