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で、私たち生産管理者はこれからどうするの?誰も知らない生産管理の苦悩を徹底討論(3)(3/3 ページ)

日本が世界に誇るモノづくり文化の中で、おそらく最も地味な役回りを演じているのが生産管理部門だ。彼らはどんな苦労を抱えて日々の仕事をこなしているのか。普段聞くことのできない彼らの本音を語ってもらった。

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これからの生産管理者はどうあるべきなのか

村上 日本のモノづくりを良くしていくために、これから生産管理担当者は何をすべきでしょうか。会社が利益を上げるためには工場と営業は不可分ですから、生産管理はその接着剤役、あるいは仕切り屋として、うまく橋渡ししていかなくちゃいけないと思います。だから、もっと声を上げてほしい。現状は「その都度調整をしている」という程度ではないでしょうか。

B氏 生産管理センターというのは、そこの課長がトップで、その上には製造部長と工場長がいる。大体そんな組織になっています。だから、工場のナンバー3ないしナンバー4が生産管理です。それが工場のトップを乗り越えて営業と一緒になって何か行動を起こせといわれても、普通じゃできないですね。声を上げてくれといわれても、そんな場が用意されているのかなぁ。たまたま僕は、2つ目の工場ではナンバー2の立場だったので、「お前の思うとおりにやっていいよ」といわれてた。それで営業と一緒になって活動できた。でも、ごく普通の生産管理センター長だったら難しいのじゃないかな。

A氏 例えば予算会議の場などで、役割として生産管理者が発言を求められる機会はほとんどないですね。個人のパーソナリティとして何か発言を求められることはあるにせよ、役割としてはない。工場側としてこうしたいというものはあっても、それを営業に対して発言していないなぁ。長期的に見てこうしたらいい、みたいな提言をしようと思えばできるんですけど、もうあきらめちゃっているから。

C氏 うちは小さな規模の会社なので、割と営業に対してものをいいやすいですね。経営会議にも出席して、発言する機会もあります。しかしそれでも、Bさんがおっしゃるとおり、製造部長が上にいるので、そこを飛び越えて営業と一緒にアクションを起こすのは立場的にできない。営業と製造を巻き込んでいろいろと提言をしなくちゃいけない立場なんですが、日々のルーチンワークに忙殺されていて、段階を踏んで、根回しして、という芸当はなかなか……。

B氏 私は部下にだいぶ仕事を任せて、自分のスケジュールを空けられたので営業を巻き込んだ活動ができたようなもの。そういう環境でもなければ、なかなか生産管理者から何かを動かそうというのはできないでしょう。でも、生産管理が動かなかったら、誰も動かないでしょうね。

村上 TOCでは、会社が利益を上げ続けることをゴールとしていますが、それに関して生産管理担当者ができることは何でしょうか。

B氏 どうやって営業をコントロールできる生産管理者になるかが重要だと思いますね。私はある時期から工場内の生産管理は部下に任せてしまって、どうやって新製品を売るか、そればっかりやっていました。

A氏 それは工場が安定したから次のステップとして売ることを考えたのですか。それとも、工場を安定させるため?

B氏 工場の安定うんぬんじゃなく、黒字にするため。売らないと工場は生き残れないから。それで新しい商品を開発して、それを安定して生産できるようになった。次にやることといえば、売ること。でも営業はその新しいタイプの商品を売ったことがない。「どうやって売ったらいいの」というので、売り方のQ&Aを作り、営業全員を工場に集めて説明会を実施したんです。

村上 生産管理という立場の仕事として重要なのは、工場はどの製品を売りたいのか、どんな製品を作れるのか、生産能力はどうなっているか、といった情報を見える化していくことでしょう。正しい情報をどうやって社内に発信していくか。

B氏 営業だって、工場が正しい情報を発信するようになれば、「ああ、この製品ならいま発注しておけば手に入るな」「この製品は売ってもあまりもうからないのか」といったことを理解するようになります。

A氏 そういう営業支援的な側面の情報を発信するのはかなり攻めた生産管理ですけど、従来の在庫やリードタイムといった情報について、しっかり問題提起をしていく必要もあるんじゃないでしょうか。

B氏 そうですね。でも在庫とかリードタイムって、改善していくのにすごく時間がかかるでしょう。それより営業に「これは売って」「これは売らないで」っていう情報を提案するのは簡単だと思う。営業がそれを聞いてくれるかどうかは、普段の付き合い方で決まってくるでしょう。

C氏 そのとおりですね。

◇◇◇

村上 営業とうまく付き合うには、やはりある程度の信頼関係を築かなければいけないのでしょう。営業も工場も互いにサバを読み合うのですが、継続的に顧客満足を高めていくためには、営業から正しい情報を引き出して、工場も正確な情報を発信する。いわゆる「サバは集めて管理する」ことが重要ではないでしょうか。日々待ったなしの生産管理の仕事は困難の連続ですが、最終的にお客さまに迷惑をかけることなく、工場がこれだけ利益を出したということが、「自分はよく仕事をした」と誇れる瞬間ですね。皆さん、お疲れさまでした。(連載完)

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