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実機を作る前にITで全力投球するメカ設計 イベントレポート(3)(1/2 ページ)

シーメンスPLMソフトウェアは、シーメンス傘下となってから初めての年次イベントを米国ボストンにて開催した。新製品発表と事例講演が行われた

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 2008年5月20日と21日の2日間、シーメンスPLMソフトウェアの年次業界アナリストイベントが米国ボストンにて開催された。旧 UGS PLMソフトウェアがシーメンス傘下(2008年5月4日に買収完了)となってから初めての年次イベントとなった。

 自社の経営およびマーケティング関連の報告や、CAD/CAM/CAEの「NX」と中規模企業向けPLMの「Velocity」シリーズの新製品発表のほかに、同社の顧客自らも製品導入の報告や、PLMやFA(ファクトリーオートメーション)関連の事例紹介が行われた。日産やフォルクスワーゲン社といった大手自動車メーカーのほかに、インドの産業ロボットメーカー PARI Robotics社、家庭用品メーカーのユニリーバ社(Unilever N.V、Unilever PLC)も登場した。

 フォルクスワーゲン社(Volkswagen AG)は「K-PDM」という独自の製造管理プロジェクトを持っている。またフォルクスワーゲン(VW)部門とアウディ部門で、「Tecnomatix」「Teamcenter」を採用した経緯を説明した。Tecnomatixは、組み立て、品質管理、工場内のロボット制御プログラムなど製造にまつわるさまざまなデジタルデータを一元管理するシステムだ。

 自動車製造には、商品企画、設計、品質保証、流通、営業、……とさまざまな部門が絡んでくる。そのうえ、同社の製品ラインアップは年々増え、複雑化してきている。そのような状況下で、各部門やサプライヤと業務協調する際、非効率やトラブルが生じやすくなった。そこで、製造にまつわるデータを1カ所に集約させ共有し、コントロールする必要に迫られたという。


写真1 Teamcenter 2007 の画面

 TecnomatixはPLM基盤のTeamcenter上に構築されている。この環境なら、例えばプロジェクトマネージャーが海外出張先から顧客要望を受けたとしたら、セキュリティ保護されたWebプラットフォーム上の3次元データを閲覧しながら、同じくそのデータをリアルタイムで見ている社内の設計者に対し設計変更の指示や提案ができるという(写真1)。

 またインドはグローバルな大手製造メーカーにとって重要な生産拠点の1つでもあるが、最近ではインド生まれの自動車メーカーも成長し、設計拠点としても注目されつつある。PARI Robotics社 マネージングディレクター マンゲシュ・ケール(Mangesh Kale)氏は「(NXが)設計作業や製造の効率を上げるためのみならず、人材教育に有効です」と話した。「自由でのびのびとした国民性を持つインド人たちを管理するうえでもPLMや3次元CADは重要なシステムです」(ケール氏)。

日本ユーザー代表は、Nissan

 日産自動車は2005年12月にNXの採用を決定し、2006年12月に旧UGS(現シーメンスPLMソフトウェア)と契約締結している。日本ユーザー代表ということで、日産自動車 エンジニアリングマネージメント本部 プロセス情報マネージメント部 部長 福士 敬吾氏が本イベントで講演を行った。

 まず福士氏はプレゼンテーションの冒頭で、かつて弾丸列車と呼ばれた「新幹線」の設計者 三木忠直氏の逸話を出す。三木忠直氏は、第二次世界大戦中に開発された爆撃機「銀河」の設計者だったが、終戦当時「私の設計が大勢の若者たちを傷つけてしまった……。これからのわが設計は平和のためにありたい」と考えた。


図1 三木忠直氏の言葉

 やがて三木氏は新幹線プロジェクトのチーフエンジニアとなるが、最初の走行テストを目前にしてプロジェクトを去ることになる。彼は「私の持っている技術はすべてつぎ込んだ。新幹線は、成功したも同然。私ができることは、もはやない」という言葉を残している(図1)。新幹線は1964年に開通し、無事故で44年の月日が流れ、いまに至る。

 ――三木氏と新幹線プロジェクトから学べることは何だろう? と福士氏は参加者に問い掛ける。

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