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硬さを表すヤング率は“材料のバネ定数”仕事にちゃんと役立つ材料力学(7)(3/3 ページ)

バネにも、軟らかいバネと硬いバネがあるように、材料にも、軟らかい材料と硬い材料がある。その程度を表すのがヤング率だ。

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力の状態とタテとヨコとが織りなす弾性係数

 さて、ヤング率については、シッカリとイメージできましたか? ヤング率は別名、「縦弾性係数」であるということは説明しました。僕は初めてこの言葉を聞いたとき、「縦弾性係数があるなら、横弾性係数はあるのか?」と思いました。ここではそれについて解説したいと思います。

 実はこれまで何度も登場した応力-ひずみ線図であいまいにしてきたことがあります。これはどんな実験により得られたグラフなのか? ということです。

 部品には、さまざまな大きさの力がさまざまな方向から掛かるわけですが、いくつかの種類に分類することができます。「こんな力」「あんな力」といっても、力の状態を伝えるのには限度があるようで、大体5つに集約して力の状態をできるだけ正確に伝えます(図7)。

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図7 用語とその状態

 この5つの状態は、消しゴムで表現できますから、手元に消しゴムがある人はこの5つの状態を再現してみてください。同じ長さ分なら、引っ張るよりも圧縮する方が力が必要だったりします。消しゴムが外からの力に抵抗しているのが感触を通して伝わってきます(写真1)。

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写真1 消しゴムで試してみよう

 応力―ひずみ曲線はどんな実験により得られたグラフなのか。ヤング率つまり縦弾性係数の測定実験は、引張り力を掛けた状態で行います。古典的な方法から近代的な方法までさまざまな測定方法があります。これまで登場してきた応力―ひずみ曲線はその測定方法に従ってデータが採取されグラフが描かれているわけです。

 ここで測定方法を詳しく説明すると横道にそれるので、Webサイトの紹介で切り抜けたいと思います。

 このサイトではヤング率について、アニメーションなどを使いながら分かりやすく説明しています。ヤング率のまとめと整理という意味でも参考にしてみてください。このサイトの中にヤング率の測定方法の説明もあります。

 引張りの力の場では、垂直応力がメインとなります。つまり縦弾性係数は、垂直応力と垂直ひずみの間に成り立つ、比例定数ということになります。

 ここで最初の「横弾性係数はあるのか?」という疑問に戻りますが、その答えは「Yes」です。これはせん断応力とせん断ひずみの間に成り立つ、比例定数です。記号では「G」で表されます。せん断ひずみ、せん断応力については、これまでの回を読んで復習してみてください。

。oO 筆者のつぶやき

よく縦横っていうけど、どういう基準なわけ?

 「縦弾性係数」、「横弾性係数」の「縦」や「横」って、とても大ざっぱな言葉だと思いませんか? 何で「垂直弾性係数」や「せん断弾性係数」っていわないのかなぁと思っています。縦は、視線の上下方向を示す場合が多いようです。垂直方向もまさに同じ。横は、視線の左右方向を示す場合が多いですね。水平方向もまさに同じ。なんか考え出すと、思考の迷宮に入ってしまいます。いやあ、日本語ってホントに難しいですね。



 縦弾性係数と横弾性係数について、まとめておきます。1つ目の式は、ぜひ覚えておいてください。今回はギリシア文字で覚えておくといいでしょう。「シグマ、イコール、イー、イプシロン」と呪文のようにリズムで覚えてください(図8)。

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図8 縦弾性係数と横弾性係数のまとめ――「シグマ、イコール、イー、イプシロン……」

ヤング率に弟がいた。その名はポアソン比

 鋼材でできた円柱を想像してください。別に鋼材でなくても、ソーセージでも構いません。その円柱を両方から引っ張ると、円柱は伸びます。その円柱の直径はどうなるでしょう? 引っ張った方向とは直角に縮みます。直径が小さくなるので、円柱の断面積も小さくなるわけです。

 さっき写真で登場した消しゴムを引っ張ってみました。引っ張った方向に伸びるのと、引っ張った方向と直角方向に縮みます。


 伸びているのはハッキリと分かりますが、縮んでいるのが分かるでしょうか。でも引っ張れば、その方向とは直角に縮むのは直感的に理解できるでしょう。

 引っ張った方向のひずみを「縦ひずみ」、引っ張った方向とは直角方向のひずみを「横ひずみ」といいます。「ひずみ」とは、元々力を受けたときの変形量を元の長さで割ったものです。それに、縦と横という方向の概念が加わったのが、縦ひずみと横ひずみと思ってください。そしてさらにこの縦ひずみと横ひずみの比を「ポアソン比」といいます(図9)。

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図9 ポアソン比とは

 ポアソン比もヤング率と同じように、材料固有のものです。そしてヤング率と同じくらい大切な定数です。ヤング率の弟分くらいに思っていてください。

 今回は盛りだくさんの内容でした。ポアソン比をもう少し突っ込んで解説したいのですが、それは次回ということでご勘弁ください。

 とにかく、ヤング率とポアソン比は材料固有の値で、その材料の強さを表す重要な定数であるということをアタマの中に入れておいてくださいね。(次回に続く

Profile

栗崎 彰(くりさき あきら)

1958年生まれ。キャドラボ 取締役。1983年より24年間、構造解析に従事。I-DEASの開発元である旧 SDRC 日本支社、CATIAの開発元であるダッソー・システムズを経て現在に至る。多くの企業で3次元CADによる設計プロセス改革コンサルティングや、設計者解析の導入支援を行う。特に設計者のための講座「解析工房」が人気。解析における最適なメッシュ・サイズを決定するための「OK法」を共同研究で模索中。



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