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ジレンマを解くツールの使い方を詳細に学ぼうジレンマ解消! TOC思考プロセスの基本を学ぶ(4)(3/3 ページ)

TOCは工場の生産性を改善するだけの手法にとどまらない。相反するニーズの板挟みに悩まされる組織の「ジレンマ」を解消し問題解決を目指す体系的なアプローチ「TOC思考プロセス」を紹介しよう。

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論理に同意できない理由(論理性の検証)

 TOC思考プロセスでは、CLR(Categories of Legitimate Reservation)(注2)と呼ばれる論理に同意できない場合のチェックのガイドラインがあります。これは作成した図を検証するときのルールでもあり、チームで問題解決を行うときにコミュニケーションの鍵を握るツールでもあります。

 CLRは、TOC思考プロセスの各ステップにおいて箱の表現や、ツリーの作成、修正の実施をしたり、批判をしたりするときのルールです。このルールを適用することにより、思い込みによる見落としを避け論理的完全性を検証したり、感情的にならずに異論を尊重したり、意見の偏重を排除したりできるのです。ルールにはこれから紹介する8つがありますが、すべてを一度に適用するのではなく、段階を踏んで適用を検討していきます。


注2:Categories of Legitimate Reservation 本来、Reservationとは「留保」という意味合いで、この文章を直訳すると「正当性留保の分類」ということになります。簡単にいうと「論理性が正確でないから、納得できない(留保する)ものの分類」になりますが、ここでは単純に「論理性の検証」としてあります。


《第1段階の検討》……明瞭(めいりょう)性の検討

(1)意味の明瞭性

単語の意味が分かるか われわれが日常何げなく使っている単語でも、その理解は人それぞれのこともあります。表現の中で使われている単語の意味に関して、解釈の違いの恐れのあるものに対して、その具体的な意味を明確にする必要があります。特にわれわれが日常よく使う言葉には注意が要ります。例えば「標準化」や「○○管理」など、日常よく使われており聞き慣れているために、何の疑いも持ちませんが、いざ説明すると人によってまちまちであったりします。こうした言葉の具体的な意味をまず共通認識する必要があります

文の意味が分かるか 表現された文章が何をいいたいのかが、明瞭になっていることが必要です。そのためには、背景・状況が理解できるような説明を加えるとよいようです

因果関係ははっきりと理解できるか 因果関係は証明あるいは確認できることが必要です。矢印が成立することに関係者が納得できることが必要です

《第2段階の検討》……存在の検討

(2)実体(事実)が存在するか

完全な文章(主語+述語)になっているか 

1文中に2つの意味が入っていたり、複合文になっていたりしないか 1文中に「○○なので△△になる」というような因果関係が表現されていたり、2つ以上の出来事が表現されていないかということです。この場合は、1つ1つの文章に分けて、それぞれの箱として表現します

現実に存在しているか 箱は事実・実態を表します。従って証明もしくは確認できることが必要です。これは非常に重要なことです。説明したように言葉の背景には、「事実」「意見」「感情」がありますが、「意見」が多く出る傾向にあります。私たちは、事実そのものではなく、事実を基にした自分の判断を入れて表現しがちです。従って出てくる言葉には何らかのその人の考えが入っていると思って間違いないでしょう。特に「〜多い」「〜少ない」などの感覚的な言葉には注意が必要です。多い/少ないは、何かと比較した結果の判断ですし、事実ではなく「良い」「悪い」を表しています。この場合は、できるだけ具体的な事実を記入するようにしないと、関係者の間での共通認識が得られにくくなります

(3)因果関係の存在

その原因は、実際にその結果を引き起こすか  因果関係を、「もし○○(原因)ならば、そのときは○○(結果)である」と声を出して読み合わせをすることによって、筋が通っているかどうか検討します。 中間の箱が見落とされていないか 
図6 ツリーの正当性検証(明瞭性と存在の検討)
図6 ツリーの正当性検証(明瞭性と存在の検討)

《第3段階の検討》……因果関係の検討

(4)原因の不十分

 これは、アンド・コネクタで結ばれるほかの原因がないかを検討するものです。説明したように火を付けるには着火源と燃料だけで大丈夫か? かつ酸素が必要では?……という場合に、酸素は着火源と燃料とともに必要になり、火を付けるための着火源と燃料と同時に存在しなければならないアンド条件となります。次のような質問で抜けている原因を探し出します。

  • その原因だけで、その結果を引き起こせるか
  • 何か主要な原因が抜けていないか
  • その結果を引き起こすのに、ほかの原因が必要ではないか

(5)追加の原因

 この場合の追加の原因とは、アンド・コネクタで結ばれない原因がないか検討するものです。それぞれの原因が単独に同じ結果を引き起こす場合です。例えば、お金が増えるための要因として、支出が減る、収入が増える、宝くじに当たるなどの要因があり、それぞれが単独に「お金が増える」ことの原因となります。

  • その結果を引き起こすほかの原因はないか
  • その原因を取り除けば、その結果は絶対に起きないか

(6)原因と結果の逆転

 原因と結果の関係が逆転しているということですが、基本的には時間軸で整理すれば、原因は結果よりも先行している必要があります。そのことに着目して検討するのも有効です。

  • 原因と結果の関係が逆になっていないか
  • その原因は、結果の存在する理由・根拠になっているか

(7)予想される結果の存在

  • その原因は明白か、明白でないならば、その原因からほかの結果が予想できないか
  • その原因から必ず表れるほかの結果はないか

(8)同語反復/循環論理

 これは因果関係が循環して、どちらが原因でどちらが結果かが不明瞭になってしまう状況です。この場合、下記のような質問で検討しますが、1つの実体を違う角度から見たためにあたかも2つの箱になり、因果関係がつけられないという状況が多いようです。いわゆる同語反復の問題です。

  • 原因の正当化に結果が使われていないか
  • その結果のほかに、必ず表れる検証できる結果はないか
図7 ツリーの正当性検証(因果関係の検討)
図7 ツリーの正当性検証(因果関係の検討)

*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***

 次回は「それができれば苦労しないよ」を実現する方法を考えていきます。

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