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零戦の要求仕様の優先順位を考えようじゃねぇかい!甚さんの設計分析大特訓(3)(3/3 ページ)

無理難題てんこ盛りな零戦を設計するため、三菱重工 堀越二郎がまず一番に注目したのは要求仕様の優先順位だった。

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零戦設計における堀越二郎氏のつぶやき

 前述の難題が盛りだくさんの「十二試艦上戦闘機(零戦)計画要求書」を海軍航空本部から受け取った堀越氏は、このようなことを考えたようです。

  • こんな要求、(当時の)航空界の常識ではとうてい実現不可能だ!
  • もしこんな戦闘機が本当に実現するのなら、世界で群を抜く戦闘機になるだろう。しかし、まったく虫の良い要求だ。
  • これらの要求のうちどれか1つでも引き下げてくれれば、ずっと楽になるのだが。

参考文献:『零戦 その誕生と栄光の記録』堀越二郎・著(カッパブックス)

※上記は筆者が参考文献を基にして本記事用にアレンジしたものです。



甚

天才・堀越二郎も、オメェと同じようなことを考えていたのだ! どうだ、天才・堀越二郎に親近感が持てるだろう!


良

甚さん、なんか僕、自信が付いてきました!


甚

もう気を落とすな。オレサマもいい過ぎたよ。素直なとこだけは認めてやんよぉ。それにオメェ、灯油ポンプの設計分析はきちんとできたじゃねぇか。それと同じ要領で設計分析してみればいいのだ。


良

ガッテン承知! がんばって設計分析してみます。


 悩みぬいた堀越氏の取った策は、「設計思想とその優先順位」、とりわけ、優先順位を設定したのです。その優先第1位は軽量化です。徹底した軽量化によってすべての相反する仕様に優先順位をもって応えたのです。

 その代表的な例がシート部です。当時は世界の常識であった防弾板(パイロットを背後の銃弾から保護するための厚さ10ミリの鉄板)を排除し、さらにパイロットのシートにまで軽量化のための多くの穴を設けたのです。


表1 良くんの設計分析 灯油ポンプと零戦とで設計思想を比較し、優先順位を設定する
良

甚さん! これでどうでしょうか?(表1)


甚

理解だけは早い! ちょいとは磨きが掛かってぇ、きたもんだ! また、ホッピーでもおごってやらぁ! っと、その前に今回のポイントをいってみやがれ。


良

設計とは……、設計思想を設定し、さらに優先順位を設定することです。これを『設計思想とその優先順位』といいます。


甚

学生みてぃにマル暗記するんじぁねぇ! オメェの上司みたくなっちまうぞ。体で覚えろ! よぉし、カンペェだ!


 次回は、筆者が現有する商品で設計分析してみます。ご期待ください。(次回に続く)

Profile

國井 良昌(くにい よしまさ)

技術士(機械部門:機械設計/設計工学)。日本技術士会 機械部会 幹事、埼玉県技術士会 幹事。日本設計工学会 会員。横浜国立大学 大学院工学研究院 非常勤講師。首都大学東京 大学院理工学研究科 非常勤講師。

1978年、横浜国立大学 工学部 機械工学科卒業。日立および、富士ゼロックスの高速レーザプリンタの設計に従事。富士ゼロックスでは、設計プロセス改革や設計審査長も務めた。1999年より、國井技術士設計事務所として、設計コンサルタント、セミナー講師、大学非常勤講師としても活躍中。Webでは「システム工学設計法講座」を公開。著書に「ついてきなぁ!加工知識と設計見積り力で『即戦力』」(日刊工業新聞社)と「ついてきなぁ! 『設計書ワザ』で勝負する技術者となれ!」(日刊工業新聞社)がある。



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