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余計な精密加工を省き、工数削減&コストダウン事例で知るVA・VEのコストダウン手法ABC(2)(2/2 ページ)

要求仕様に見合った加工手段を見極めることはコストダウン競走に勝つための重要な鍵だ。 その研削加工、本当に必要?

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【設計課題4】分割構造から一体構造に変更する

 設計課題4は、ベース上にある30本の細溝に、細長いバー(キー)30本を組み込み、60本の小ねじで固定しています(以下、図4)。

 このバーとバーとの間にできる溝の寸法精度が仕様上で重要であるとします。 このバーの位置決めを行うため、ベースの細溝には精密加工を施して寸法精度を上げ、組み込み工数そのものを削減してします。しかしこのままだと、設計に無駄が多く、コストも要求仕様に見合っていません。

  設計課題4では、部品の加工工数の削減を行い、かつ組み込み工数も削減する方法を検討します。


図4 設計課題4のベース

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*pdfデータを閲覧するには「Adobe Reader」の「7.0」以降のバージョンのインストール(無償)が必要

です

設計課題4のVA・VE


図5 溝形状の一部をなくす

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 まず上記の問題を解決するために、図5のように、黄色部を一段落とす切削加工を行うことで、溝部の精密加工領域を減らしてみます。バーを組み込むための位置決め用の溝は、両端にあれば十分のはずです。

 しかしこれだけでは、まだまだ問題がありそうです。


図6 バー

 バー(図6)は本課題の要求仕様である溝寸法を構成する要素なので、それ自体にも高い寸法精度が要求されます。しかしこのような形状だと、加工する際、切削だけだと「しなり」や「ねじれ」が生じます。なので何度もひっくり返しながら研削加工で修正をし、さらに研削で整える工程が必要となります。 この点をVAで解決すれば、大幅な加工工数削減へとつながります。

 さらに、このバーをベースへ組み込むときには、小ねじを60本使います。このタップ加工による不良発生が、さらにコストアップへとつながります。


図7 部品を一体化

 そもそも、複数のバーにより形成しようとしている溝の寸法精度が出れば、本課題の要求仕様を満たせるのです。よって、ベースに直接、細溝を精密加工により作りこむことでバーを廃止し、一体化構造としました(図7)。

 以上で、部品の加工工数の削減を行い、かつ組み込み工数も削減することができました。

今回のまとめ

 1つは一体である部品を分割化したことによるVA、もう1つは分割された部品を一体化したことによるVAでした。双方の手段は、相反していますね。

 いずれにしても今回の設計課題のような問題は、利用する加工現場の機械加工設備が精密加工用に片寄っている場合によく起きます。例えば、切削でも十分な品質が見込めるのに、研削加工で製作してしまうことになり、その結果、余計な工数が掛かってしまうというわけです。要求仕様に見合った加工手段を見極めることは、コストダウン競走に勝つための重要な鍵といえるでしょう。

 次回は、ユニットの部品点数を減らしつつも要求仕様を満たすにはどうしたらいいかを検討してみましょう。お楽しみに!(次回に続く)

Profile

舩倉 満夫(ふなくら みつお)

製造業に生きて40年、省力化機器製造会社、プレス金型製造会社、半導体製造装置、金型製造会社、ワイヤハーネス用全自動端子圧着機製造会社と経験し、運良く工場内でメンテナンス、機械加工、組み込み、設計、品質管理、生産管理、購買部とものづくりのあらゆる工程を経験。この特異な経験と知識を生かした最適加工および工法により、数々の設計改善・コストダウンを実施してきた。さらにビジネスへと展開するべく、2001年、フナックス・エンジニアリングを設立し、現在に至る。モットーは「仕様に基づいた品質の追求」。



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