複雑化した設計をこなすには従来のCADでは限界!?:エレメカ協調セキララ事情(2)(2/2 ページ)
複雑化したエレメカ協調設計に対応するには第3世代モデリング手法が有利。とはいっても、長年慣れ親しんだツールには思い入れもあるものだ。今回はCADLAB編
まだよく知られていない、第3世代のモデリング手法
――エレメカ協調設計に有利な3次元CADについて
最近の「CATIA」や「Caelum XXen」が取り入れている「ファンクショナルモデリング」と呼ばれるモデリング手法があります。これは「第3世代のモデリング手法」といわれ、これまでの3次元CADとは考え方がまったく異なる手法です。
具体的にどんな特徴があるかというと、ツリーに「基板を貫通するボス」「基板の熱を逃がすスリット」「10N/m2の荷重に耐えられるリブ」というふうな名前を付けられ、そのテーマに沿った形状をモデリングしていきます。1つのプロパティ窓の中で、座標や寸法、フィレット(ラウンド)、抜きこう配(ドラフト)、シェル形状などの設定が可能です。
この手法はエレメカ協調設計の際に有利だと思います。
――どのような場面で有利なのでしょう?
まず通常のパラメトリック系CADだとフィーチャーの順序を入れ替えたりするとモデルが化ける恐れがありますが、この手法だとフィーチャーを作る順序にまつわる因果関係がなくなります。
機械設計がまったく想定していない設計変更のリクエストが、突然、電子設計側からやって来た場合、特にモデルを作り込んだ段階での修正対応は非常にストレスですよね。
例えば、筐体内部の電子部品の逃げを移動したら、「リブが化けた」「リップ(勘合部)が化けた」「フィレットが掛からない」……などのモデリングトラブルに見舞われたりなどがあり得ますよね。ファンクショナルモデリング手法だと、修正の際におけるモデル化けの心配が最小限になります。穴を移動したとき、位置がリブとオーバーラップしてしまった場合も、リブは化けずに自動修正されます。
それから、ツリーの名称が機能そのものになっているので、第三者が修正したり指示を出したりなどがしやすいと思います。機能別になっているので、電子設計から来た指示にも対応しやすくなりますよね。例えばCCDカメラの位置が移動したなら、「CCDカメラの取り付け部」という「機能」を探して、その機能のプロパティ内の情報の変更を行えば調整が済むのです。
これで設計の作業がだいぶシンプルになるでしょう?
――第3世代モデリングが普及する過程において、引っ掛かりそうな問題はどういったことでしょうか?
いま普及している3次元CADの一部としてファンクショナルモデリングを取り入れるのは、ソフトウェア技術的に難しいと思います。あまりにアーキテクチャの違いがあり過ぎるからです。もし取り入れるなら、ほぼ作り直しとなるでしょう。CADベンダが今後、この機能の価値をどう評価し、どう対処していくのか、といった問題がまずあります。
それと価格の問題があります。これはまだ(*2007年12月現在においては)最先端技術なので、導入しようとすると、1ライセンスにつき数百万円以上となり、決して安くはない出費になると思います。
もう1つは、日本人の精神的な問題もあるのではないでしょうか。これは実際、現場の設計者さん何人かに聞いてみた話ですが……、長年使い手になじんだ道具(CAD)には、深い思い入れがあるものみたいで……。
そうですね……腕時計がいい例かもしれません。「もっと安くて、もっといい機能が付いた時計があるよ」と誰かに勧められると、「いや、自分はこの20年使っているこの時計がいい」っていう人もいるでしょう? そういった思いに近いんだと思います。日本人は精神的な部分を大切にする国民性ですから。
CADで寸法線上の値が自由に修正できるのも、いまは当たり前ですが、過去ではそれが最先端だと多くの人が思っていた時代もありました。“当たり前”となった瞬間の明確な境目に思い当たりがあるわけではなくて、「ハッ! と気が付けば、すっかりデファクト・スタンダード」という感じでした。また、IT技術の歴史自体も、常にそういうことの繰り返しだったと思います。これからのCAD市場も、きっと同様ではないでしょうか。
――お忙しいところ貴重なお時間をいただきましてありがとうございました。
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今日のような複雑化した設計事情に対応するには、昔からある3次元CADのアーキテクチャでは無理が生じてしまうようになってきたといえそうです。
最先端技術に見出した価値に対して、際限なくガンガン投資を行えば、理想に近い設計環境は得られるのかもしれません。しかしそうは簡単に行かない設計現場の現実があります。現場の現実も、現場の数だけあるでしょうし。設計現場同様、コンサルタント側も日々試行錯誤です。
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