【問題20】 オペアンプによる増幅回路(2):完全マスター! 電子回路ドリル(22)
オペアンプの電圧増幅率は非常に大きいので、非反転入力と反転入力の電位差がわずかであっても負帰還は大きく掛かります
【問題19】の解答
【問題19】のようなオペアンプを用いた増幅回路において、入力信号が何倍に増幅されるか? 電圧増幅率AVを求めなさい、という問題でした。
皆さん解けましたか?
解けた方も解けなかった方も答え合わせをして、次項の解説までぜひ読んでみてください。毎週コツコツ問題を解いて、電気・電子回路の基礎知識を身に付けてください。
それでは、解答を発表します!
【問題19】の解説
オペアンプ(Operational amplifier)は、トランジスタ増幅回路をIC化して1つのチップに収めたアナログ素子です。
図1にオペアンプの回路記号を示します。
オペアンプは横向きの三角形で表し、2つの入力と1つの出力があります。2つの入力のうち、−(マイナス)記号が付いている方を“反転入力”、+(プラス)記号が付いている方を“非反転入力”と呼びます。
また、図1の回路記号には表記がありませんが、オペアンプには正負の電源端子があります。アナログ回路では正負に値が変化するアナログ信号(交流)を扱います。そこで、オペアンプでは図2(b)のような“正負対称電源”を用います(単一電源のオペアンプもあります)。
次に、オペアンプの機能を説明します。
オペアンプは“差動増幅器”です。いま、オペアンプの非反転入力に電圧VI+を加え、反転入力に電圧VI−を加えたときの出力電圧VOは、オペアンプの電圧増幅率をAとすると、
となります。
つまり、オペアンプは非反転入力と反転入力の電位差(VI+ − VI−)を増幅し、
- VI+ > VI−のとき、正の電圧
- VI+ < VI−のとき、負の電圧
を出力します。
それでは、ここまでの解説を基に【問題19】のオペアンプ回路の動作を検証してみましょう。
図3において、オペアンプの非反転入力はグランドに接続されているため、その電位は0Vです。
ここで、入力電圧viを加えると、その電圧は抵抗R1によってS点に伝わり、
- S点の電位が正のとき、出力電圧voは負
- S点の電位が負のとき、出力電圧voは正
に増幅されます。
voは抵抗R2によってS点に帰還されますが、それはS点の電圧変化を打ち消す方向、つまり負帰還が掛かります。
オペアンプの電圧増幅率Aは非常に大きい(ほぼ∞)ので、非反転入力と反転入力の電位差がわずかであっても負帰還は大きく掛かります。その結果、「オペアンプはS点の電位が0Vになるように、すなわち非反転入力と反転入力の電位差が0Vになるように働く」のです。
それでは、電圧増幅率を求めてみましょう。
図3においてS点の電位は0Vになるため、抵抗R1に流れる電流iは、
となります。
ここで、オペアンプの特長である
- オペアンプの入力抵抗は非常に大きい(ほぼ∞)
- オペアンプの出力抵抗は非常に小さい(ほぼ0)
から、電流iはそのまま抵抗R2に流れます。つまり、
となり、これにより電圧増幅率AVは、
となり、「2倍」の反転増幅であることが求められます。
次回までの宿題 ― 【問題20】
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