メカ設計者も金型加工機の制約を理解しよう:米PTCのエグゼクティブが語るCAM(2/2 ページ)
メカ設計現場と金型加工現場との間のコミュニケーションは、結構悩ましいものだ。CAD/CAMのPro/TOOLMAKER 8.1を導入することによって、果たしてそれは解消されるだろうか?
そのR、大きくしたなら、どれだけコストダウン?
加工エンジニアが設計エンジニアに対して、設計モデルの切削部の角R寸法を大きくして欲しいとリクエストしたとする。
小さい角Rを作るには、小さなツール(刃先)を使う必要がある。でも、なるべく大きなツールを使った方が、いっぺんにたくさんの面を切削できるので、パスは短くなり、加工時間も早くなる。それは、切削加工の基本である。
設計エンジニアはそういった理屈を知っていても、設計上の制約によりR寸法を小さく追い込んでいる場合などには、加工サイドの修正要望を素直に了解できかねる場合もありえる。加工者のR寸法の変更リクエストを了解するにしても、折衷案を検討するにしても、「その変更が、どのくらい加工工数削減になり、その結果どのくらいコスト削減となるのか」具体的な根拠があったほうがいいだろう。
しかしながら、営業職と違い、日ごろ篭(こも)り仕事になりがちでコミュニケーションが不慣れなエンジニアにとっては、器用に説明するのは不得手であることが多いし、時間に圧迫されがちな中で、具体的に説明するための資料をかき集める時間を確保するのも難しいだろう。
ホーキンス氏は、「Pro/TOOLMAKERがあれば、設計エンジニアはRを大きくしたことで、『どのくらいの大きさの、どういうツールが』『どのような加工を行って』、その結果『パスがどのように短くなるか』を3次元モデルで根拠を確認でき、具体的な数字も把握でき、さらにパスから加工工数を算出して、さらにコスト計算もその場で自動で行える」と、解決策を提言した。
見積もりと加工工数そのものが短縮になるばかりではない。設計エンジニアが型加工現場に見積もりを依頼すれば、その結果を待つ時間があるが、この待ち時間も短縮されることになる。
また、「金型加工の工程データは、マクロとして登録できる。新たに部品の見積もり依頼を出しても、過去のマクロを引き出し、条件が合えば、加工工程を引用できるので、加工データ作成の手間が減る。つまり、見積りや加工の時間短縮となり、部品コストも削減することになる。また、それは加工者のミスの削減にもつながる」とホーキンス氏は説明した。
加工機の制約を理解した設計
「例えば、昔の車の形って、単純に丸っぽいだけだったでしょう。だけど、いまの車は、かなり複雑になってきている。そんな時代だから、加工機の制約や条件をしっかり理解して設計していくことも、すごく重要だと思う。よく理解していないという方は、加工現場を積極的に見に行くことをお勧めしたい。1度見に行くだけでも、かなり理解が深まるのではないだろうか」とホーキンス氏は話した。
設計エンジニアが実際の加工現場を見ることで、さらに、金型加工のデータへの理解を深めることができる。加工エンジニアもまた、設計エンジニアの考えを直接聞くことができ、設計サイドへの理解を深められる。お互いを信頼すれば、安心してお互いの業務に専念できるとホーキンス氏は考える。
また、「加工エンジニアは加工に、設計エンジニアは設計に専念してもらうために、PTCでは両サイドにとってベストなツールを提供していく」とホーキンス氏は述べた。
Pro/TOOLMAKERの追い込み加工の技術には、まだ課題があるそうだが、今後も改善に努めたいという。また、次のバージョンで同時5軸加工(ツール先端を自由に制御できる5軸加工のこと。通常はツールが一定方向に固定される)に対応する予定で、現状よりもっと複雑な形状の加工に対応できるようになるという。
価格は209万9000円からで、中小企業が多いといわれる金型加工業者にとっても現実的な値段である。また、スタンドアロンで動くことにこだわった。それは、加工現場の加工機のそばに置いてほしいからだという。Pro/TOOLMAKERもまた、PTCの提供するPDS(製品開発システム)の1パートである。加工現場と設計現場はもちろん、部品をめぐるさまざまな部門同士のコミュニケーションと信頼を深めるきっかけとなるかもしれない。
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