3次元CADをめぐる夢と現実を見極めよう:PLMは“勝ち組”製造業になる切り札か(2)(1/3 ページ)
長い不況を抜け、ようやく明るい兆しが見えてきたニッポンの製造業。しかし、国際競争の激化や消費者ニーズの多様化により、「作れば売れる」時代は過去のものとなった。いかに売れるものを素早く市場投入するかが勝負の現在、PLMという視点から製造業のあるべき姿を考察する。
3次元CADのメリットとデメリットを再考する
3次元CADの導入は進んでいるといわれるが、コストが削減されるなど、現実的な効果は上がっているのだろうか? 初めはファクト情報から入っていきたい。いろいろな調査結果を見ると、ほぼ80〜90%の企業が「効果があった、導入して良かった」と回答している。一方、メリットばかりではない。ネクステックの独自調査、および各種の調査資料を総合すると、その実態はこうだ。
メリット
- 設計業務の効率化が進んだ
- 設計者間や他部門も含めた情報共有が進んだ
- 品質向上と時間短縮に効果が見られた
3次元CADは形状を正確に把握できるため、デジタルモックアップによって試作を肩代わりできるなどのメリットはある。従って試作費用の削減に少しは寄与するだろう。部品間の干渉チェックなどは3次元CADの得意なところだ。さらに、CAE(熱・重量といった数値シミュレーションや解析)への素早い転用、CAM(NC加工用)活用などにも3次元CADは便利だ。
デメリット
- 設計工数が増えた
- 材料コストの削減にあまり効果がない
3次元CADの導入によって変更された新しい業務プロセスに慣れるまで、相応の時間がかかるという問題がある。業務プロセスの変更に伴って追加作業が発生し、かえって効率化の妨げとなるというケースもあるだろう。3次元CADツールを使いこなすすべを身に付ける手間も見逃せない。また何より、既存の2次元設計データを3次元CADに投入するのが難しく、工数が膨大であることもその導入や使いこなしの際の障壁となる。
以上の点を踏まえて、3次元CADを再考するに当たり、以下の3つの視点で整理していきたい(図1)。
- 3次元CADはどのような業務プロセスに適応しやすいか【業務】
- 3次元CADはどのような製品に適応しやすいか【製品】
- 業務を推進するに当たり、組織や人の意識をどう変える必要があるか【組織/人材】
世界同時開発を推進するには?:「グローバル設計・開発コーナー」
世界市場を見据えたモノづくりを推進するには、エンジニアリングチェーン改革が必須。世界同時開発を実現するモノづくり方法論の解説記事を「グローバル設計・開発」コーナーに集約しています。併せてご参照ください。
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