ロボット業界は、フォードの出現を待っている:解説! ロボット開発環境Robotics Studio(1)(1/3 ページ)
ロボット業界の現状と課題を説明するとともに、「Robotics Studio 1.0」の概念と各種ツールについて紹介する
本連載は、2006年12月にマイクロソフトから発表された「Robotics Studio 1.0(英語版)」の概要について解説します。連載第1回目は、ロボット業界の現状と課題を説明するとともに、Robotics Studio 1.0の機能についても簡単に紹介します。
ロボットのいま
はじめに、ロボット業界の現状について簡単に紹介します。
近年、ロボット関連のニュースをよく目に(耳に)するようになりました。工場の組み立てラインで単純作業を繰り返すロボットはもちろんのこと、宇宙ステーションで作業するロボット、深海探査を行うロボットなど活躍の場は産業分野の枠を超えて多岐にわたっています。さらに、欧米では2005年から胃腸の診断にロボットを使用することが許可されています。また、家庭環境においても介護、掃除、育児ロボットなどが使われているようです。このように、ロボットは専門分野だけでなく、私たち人間の生活環境にまで活躍の場を広げているのです。
最近でこそ、ホビー用の2足歩行ロボットなどが簡単に手に入るようになりましたが、上記で挙げたような高機能ロボットは、とても私たちが簡単に購入できるものではありません。筆者が調べたところ、ある家庭用ユーティリティロボット(http://www.banryu.jp/)の価格は200万円でした。ロボットに使用する部品やソフトウェアの開発費を考えると妥当な値段なのかもしれませんが、まだまだ気軽に購入できるものではありません。
自動車産業から学べ
突然ですが、ここで自動車産業発展の歴史をひもといてみましょう。なぜなら、この歴史の中にロボットを普及させるためのヒントが隠されているからです。
自動車が発明されたのは、18世紀の半ば「産業革命」のころです。ジェームズ・ワットの「蒸気機関」をヒントに、多くの発明家がいろいろな型の自動車を考案しました。しかし、いずれも実験段階から脱せず、普及には至らなかったようです。その後、ガソリン自動車の発明などにより、自動車の実用化が進みましたが、一般の人々が気軽に買えるような価格ではありませんでした。
20世紀初頭になると、米国のヘンリー・フォードが組み立てラインによる自動車製造を行い、大量生産を可能にしました。この生産方式によりアメリカでは爆発的に自動車が普及しました。
ロボット業界は、まさに自動車産業における「ヘンリー・フォードの出現を待っている」状態なのです。
現状のロボット業界は、各メーカーがおのおの独自の手法でロボットを製作している「群雄割拠の時代」といえます。ロボットの普及を実現するためには、ヘンリー・フォードの組み立てラインのようなメカニズムが必須であると筆者は考えます。
もちろん、自動車とロボットは同じではありません。歯車やモーターを統一して大量生産したからといって、ロボットの値段は下がりません(下がったとしても微々たるものです)。ロボット製造に掛かるコストの大部分は、部品などの「物理的なもの」ではなく、動かすための「アルゴリズム」、すなわちソフトウェアの開発にあるのです。例えば、障害物を検知して回避するアルゴリズム、人の言葉を聞いてそれに答えるアルゴリズムなど……。
これらのアルゴリズムを共通化して自由に使用できるようになれば、ロボットの値段は急激に低下すると思います。つまり、「ロボットを動かすソフトウェアの共通化」こそが、自動車産業における「組み立てライン(インフラ)」に相当するものなのです。
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Robotics Studio 1.0のアプローチ
なぜ、本連載でRobotics Studio 1.0を取り上げたかというと、Robotics Studio 1.0が群雄割拠しているロボット業界に対する「1つの新しいアプローチ」であると筆者は考えたからです。
ここで注意していただきたいのは、1つのアプローチとしてRobotics Studio 1.0の有効性を紹介するものであり「Robotics Studio 1.0こそが、ロボット開発におけるインフラ(組み立てライン)である」と主張するものではありません。
ちなみに、Robotics Studio 1.0(英語版)は、商用を除けばhttp://www.microsoft.com/downloads/details.aspx?FamilyId=3D706147-82E2-4B4A-AF12-DB7D3F8ACD8A&displaylang=enから無償でダウンロードできます。
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