ゼロから始めるEnhanced Write FilterとHORM:Windows XP Embedded開発入門(1)(3/3 ページ)
Windows XP Embeddedによるシステム構築のキモとなるのが、EWFとHORMである。まず、この2つをマスターしよう
Hibernate Once/Resume Many概要
Hibernate Once/Resume Many(HORM)とは、XP Embedded with SP2より提供されている機能です。EWFを有効にし、休止状態ファイル(ハイバネーションファイル)から起動するように構成することによって、
- 起動時間の高速化
- システムの保護
- 特定のアプリケーション、サービスが実行されている状態での起動
という3つの機能を持つOSランタイムイメージの構築が可能となります。
HORMはさまざまな組み込みデバイスに採用されています。Web端末やキャッシュレジスタ、キオスク端末、オートメーションコントローラなどの固定機能を提供するデバイス、サービスブローカーなど機能的な役割だけを提供するデバイスなどが挙げられます。
また、HORMはEWFのRAM Modeを基に構築するので、RAM Modeで起動時間を短縮したい場合などにも適用されます。
HORM環境構築
HORMを構築するにはまず、ターゲットデバイスが「休止状態」をサポートしていることを確認してください。BIOS、デバイスなど、すべての要素が休止状態をサポートしていなければHORM環境は構築できません。ターゲットデバイスにXP Professionalをインストールして、休止状態に遷移するかどうかを確認するのが最善でしょう。
ターゲットデバイスが休止状態をサポートしていることを確認したら、HORM環境の作成です。Target DesignerでEnhanced Write Filterコンポーネントを組み込み、RAM ModeあるいはRAM Reg ModeでOSランタイムイメージを構成します。その際、Enhanced Write Filterコンポーネントの設定画面で[Start EWF Enabled]をオフにしておいてください。
次に、ACPI Multiprocessor PCやAdvanced Configuration and Power Interface(ACPI)PCコンポーネントなどのHALコンポーネントの設定画面を開き、[Enable hibernation support]をオンにしてOSランタイムイメージでの休止状態を有効にします。
また、休止状態に遷移させるために[Power Management Application]コンポーネントも組み込んでください。
この状態でOSランタイムイメージをビルドし、ターゲットデバイスに展開します。OSランタイムイメージが起動したらEWFが構築されていることを確認し、システムドライブ直下にresmany.datというファイルを追加します。このファイルは、休止状態ファイルから起動するようにNT Loaderに通知するために必要です。OSランタイムイメージの作成時点で、Target Designerを使ってファイルを追加しておいてもよいでしょう。
ここでEWFを有効にしてシステムを再起動します。再起動後に、任意のアプリケーションやサービスを起動させます。システムは毎回この状態で起動するので、その点を踏まえてカスタムアプリケーションなどを実行させてください。
最後に、Power Management Applicationで休止状態へ遷移させます。
xpepm /hibernate
を発行してください。
次回の起動から、システムは休止状態ファイルから起動します。また、EWFでシステム保護された状態であり、休止状態からの高速起動が可能です。
今回は、XP EmbeddedのキモとなるEnhanced Write Filterと、高速起動するためのHibernate Once/Resume Manyについて説明しました。EWFの設計は、XP Embeddedデバイスを開発するうえでストレージの構成やアプリケーションの振る舞いなどにも大きく影響します。デバイス開発の早い段階から、どのようなシーンで利用され、どのようなハードウェア構成とするかをまとめてEnhanced Write Filterの設計をすることをお勧めします。
次回は、Windows XP Embedded Feature Pack 2007について説明します。(次回に続く)
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