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CPLDからFPGA、ASICまでそろうアルテラ組み込み企業最前線 − 日本アルテラ −(2/2 ページ)

PLDベンダとして業界第2位、日本では首位のアルテラ。日本法人は早くから独自の戦略で日本を重要なマーケットに育ててきた。さらにデバイス4本柱が確立し、それを補完するソフトウェア製品も充実している。

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2007年から65nm FPGAを量産

 MAXシリーズをもってCPLD市場でトップシェアを保持し、低コストFPGAのCycloneシリーズが伸びているとはいえ、アルテラの事業を支えるのは高性能FPGAのStratixシリーズである。現在は、90nmプロセスの「Stratix II」がデザインイン獲得の佳境を迎えている。ALM(Adaptive Logic Module)と呼ぶ新アーキテクチャを採用し、従来のLE方式に比べロジックの使用効率を高めているのが特徴だ。そのため、集積度や動作周波数をアップさせながら、FPGAの課題とされる消費電力を抑えている。

 Stratixシリーズは、そのコスト故にCycloneシリーズのように量産機器への搭載は限られてくるが、「あらゆる分野の機器が高度な映像処理を伴うようになっており、Stratixの適用分野は、確実に広がっている」(堀内氏)という。例えば、「PLD World 2005」では、医療機器の内視鏡システムで世界市場の7割以上を押さえるオリンパスメディカルシステムズがStratixを採用して次期製品の開発を行っていると発表。また、ホームシアタ向けとして人気の高い三洋電機のプロジェクタなどにも採用されている。

 Stratixシリーズでは、ALMアーキテクチャを継承しつつ、65nmプロセスへ移行する次世代「Stratix III」も発表された。65nm FPGAについては、ザイリンクスが先んじて製品体系を発表しているが、アルテラも「量産開始時期は変わらないだろう」(堀内氏)としている。

コラム:65nm FPGA「Stratix IIIファミリ」発表
2006年11月9日、65nmプロセスのFPGA製品「Stratix IIIファミリ」が正式に発表された。同ファミリは、Stratix IIファミリに対して2倍の集積度を誇り、25%高速化。そして消費電力は50%に低減されている。また、目的(必要なパフォーマンス)に応じてコア電圧を1.1Vあるいは0.9Vから選択可能。2007年第3四半期からサンプル出荷が開始される予定(プレスリリース)。

 アルテラの製品ラインアップの中で異色なのは、ストラクチャードASIC「HardCopy」シリーズだろう。FPGAはASICを置き換えるものとみられているが、やはりいまでも大規模回路での性能や消費電力、量産時のコストではASICに分がある。

 そこで、「Stratixシリーズのマスタスライス(量産)版」という位置付けでHardCopyシリーズを投入している。つまり、Stratixシリーズで試作品を開発し、量産が決まれば設計データをそのまま移植したHardCopyシリーズを開発し、量産化できる。FPGAとASICの利点を融合したHardCopyシリーズは、航空機の制御システムからハイビジョンテレビまで、幅広く採用されている。

Stratix IIの開発設計情報の必要部分のみをHardCopy IIマクロへマッピングすることで、効率的な移植が行える
図1 Stratix IIの開発設計情報の必要部分のみをHardCopy IIマクロへマッピングすることで、効率的な移植が行える

「FPGA+ソフトコア」を推進

 プロセッサを必要とする組み込みシステムに向けても、アルテラはソリューションを用意している。32bit RISCのソフトコアプロセッサ「Nios II」である。ロイヤルティ不要なので、アルテラのFPGA製品(およびストラクチャードASIC)を使うユーザーなら誰でも利用可能だ。堀内氏は「Nios IIは、世界で最も多く使われているソフトコアプロセッサ。日本ではμITRONをOSとするプロセッサシステムでよく使われている」と指摘する。前述した三洋電機のプロジェクタもNios IIを組み込んだStratixを使っている。

 Nios IIとFPGAを組み合わせれば、単純なプロセッサシステムからマルチプロセッサ構成の高性能なSOPC(System-on-a Programmable-Chip)まで柔軟に開発できる。カスタム命令、ハードアクセラレータといったプロセッサ性能を補助するハード機能も、FPGAなら簡単に論理回路を組める利点がある。

ソフトコア(CPU)をマルチ構成にしたり、補助ハード回路を組み込むことでCPU性能は柔軟に高められる
図2 ソフトコア(CPU)をマルチ構成にしたり、補助ハード回路を組み込むことでCPU性能は柔軟に高められる

 さらに2006年春から、Nios II向け統合開発環境「Nios II IDE」のプラグインとして「Nios II C-to-Hardwareアクセラレーション・コンパイラ」の提供を開始した。これはC言語で開発したソフトウェアの一部をNios II向けハードウェア・アクセラレータ(FPGA上の回路設計情報)に変換するもの。「ソフト上のボトルネックをすぐにハード化できる」わけだ。

「アルテラは売り上の約20%を研究開発費に投じている」
「アルテラは売り上の約20%を研究開発費に投じている」

 アルテラは、デバイスと一体のものとして開発支援ソフトウェアに早くから力を入れてきた。それがワンストップサービスを好む国内ユーザーに受けている面がある。その意味で、同プラグインの提供などは、FPGAにおけるソフトコアプロセッサ利用を推し進めそうだ。

 アルテラの最新製品には、すべて「 II」または「III」の名称が付く。これは従来製品から性能・機能を革新的に改良している自負の表れだろう。「2000年以降は毎年、売上高に対して20%近い研究開発費を投じてきた。従来の技術開発ペースでは半導体ベンダとして生き残れないという危機感がそうさせた」(堀内氏)。

 “IIシリーズ”がメインストリーム製品となりつつある現在、業界の勢力図がどのように変化するか興味深いところ。特にアルテラが強い日本市場が先行きを示しそうだ。


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