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Opera採用の影に最強の営業ツールあり組み込み企業最前線 − Opera Software −(1/2 ページ)

最近、組み込み分野への進出が目覚ましいOpera Software。同社のブラウザが採用されるのはなぜなのか。同社が語る戦略から、その理由が見えてきた。

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デスクトップ版と同じエンジンを持つフルブラウザ

 2006年になってから、にわかにモバイル/組み込み関連分野で「Opera」(編注)の名前を目にする機会が増えてきた。2005年以降、急速に進む「携帯電話へのフルブラウザ搭載」というトレンドに加え、Operaブラウザならではの特徴を生かしたユニークな端末への搭載も進んでいる。


※編注
以下、社名(Opera Software)を「Opera」と表記する。また、製品の総称を「Operaブラウザ」と表記するが、バージョン名などを付加した具体的な製品名についてはこの限りではない。

 まずはOperaの製品を整理しておこう。Operaブラウザには、

  • Opera for Desktop
  • Opera for Mobile
  • Opera for Devices

という3つのプロダクトラインがある。このうち後者の2つが、モバイル/組み込み向けの製品である。

Opera Software 日本法人代表 冨田 龍起氏
Opera Software 日本法人代表 冨田 龍起氏

 Opera for Mobileには、携帯電話やPHS上で動作する「Opera Mobile」やJavaアプリケーションの「Opera Mini」などが含まれる。Opera Mobileは、ハードウェアリソースが比較的豊富な携帯電話やPHSの上でネイティブ動作するフルブラウザである。Opera独自の「スモール・スクリーン・レンダリング技術」により、携帯電話の狭い液晶画面の幅に合わせてWebサイトを表示する。これにより、立てスクロールのみでWebサイトを閲覧できる。

 Opera Miniは、ハードウェアリソースがより限定された環境でのWebブラウズを実現するために開発されたJavaアプリケーションである。ワールドワイドで見た場合、日本の携帯電話のようにOpera Mobileが動作するほど潤沢なハードウェアリソースを持つ例はむしろまれで、多くはスペックも低く帯域幅も狭い携帯電話である。こうした端末でHTMLのレンダリングなどの処理を行うのは無理がある。そこで、HTMLレンダリングなど負荷が掛かる処理は「Opera Miniサーバ」というプロキシサーバが文字通り代行し、Opera Miniサーバから送られてきたデータを端末側のJavaアプリケーションが表示するという仕組みだ。非力な端末でも、Java VMさえあればOperaのブラウザ技術を享受できるというわけだ。

 Opera for Devicesは、“非携帯”“非PC”製品を前提に開発されている組み込み向けWebブラウザである。TVなどの家電製品やセットトップボックスといったコンシューマエレクトロニクス分野やキオスク端末など、多方面で幅広く利用されている。Operaの現在の主力分野はモバイルだが、今後はこのデバイス部門が大きく伸びていくと考えられる。同社は今後もデバイス部門の強化を進め、「いずれOpera for MobileとOpera for Devicesの比率が半々になるくらいまで上げていきたい」とOpera Software日本法人代表の冨田龍起氏は語る。

 一方で、現在も全体の3割を占めるOpera for Desktopの開発を継続して進めていくという。それはなぜか。

Opera for Desktop(for Windows)の最新版、Opera 9.01(2006年8月現在)
画面1 Opera for Desktop(for Windows)の最新版、Opera 9.01(2006年8月現在)。ウィジェットやスモール・スクリーン・レンダリングなどユニークな機能を搭載

 Operaの製品群は、携帯電話やゲーム機で動作するOpera for Mobile/DevicesからWindowsやLinux上で動作するOpera for Desktopまで、コアとなるエンジン部分はすべて同じである。つまり、Opera for Desktopで開発した技術がOpera for Mobile/Devicesにも転用されるということである。インターネットの世界において、最新技術がいち早く導入されるのは、やはりデスクトップつまりPC環境だ。Opera for Desktopの開発によって最先端の技術動向にもまれ、そこで蓄積したノウハウをOpera for Mobile/Devicesに生かすのが同社の戦略というわけだ。

 Opera for Desktopは、隠れたもう1つの役割を果たしているようだ。この後でOperaブラウザの採用事例を紹介するが、その多くがセットメーカーからOperaに対して「Operaブラウザを使いたい」とコンタクトしてきたことが始まりであるという。そこには、PCでOpera for Desktopを使っているエンジニアの意向が大きく働いている。つまり、Opera for Desktop自体が強力な営業ツールとなっているのである。これは、組み込み専業ではなくPCの分野も手掛けているOperaならではの強みといえるだろう。


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