2006年大会は“環境への対応力”で悲喜こもごも:ETロボコン2006へと続く道(4)(3/3 ページ)
タイムトライアル部門で急浮上した“設計変更のパラメータ化”とは? モデルはどこまで進化したか、など2006年大会の模様をレポートする
モデルと性能の相関は……
組み込み開発にUMLによるモデル設計を導入するメリットについて、何人かのETロボコン参加者に尋ねたところ、返ってきた答えはメンテナンス性の向上、記述ルールの統一によるコミュニケーションの取りやすさ、設計の抽象度を上げられる、レビュー性能の向上、といった声が多かった。一方、性能への貢献度は「ほとんどない」という厳しい意見もあった。
モデルと性能の相関は、前回のETロボコンを総括した渡辺審査委員長の@IT記事を参考にしてほしい。
残念ながら今年も相関は確認できなかったという。現段階では、詳細なデータ分析が終わっていないため、どのような要因がモデルと性能の相関を阻害しているのかは何ともいえない。上記記事にもあるとおり、今回から審査基準に「予測性能」を盛り込んでモデルと性能の相関を引き出そうとしたのだが、この狙いは不発に終わったといわざるを得ないだろう。
実際に、過去2大会連続でタイムトライアル部門に優勝した「ムンムン」は今回モデリング部門審査で「エクセレントモデル」を受賞したのだが、2回の走行ともに完走できず100位に沈んだ。逆に、タイムトライアル部門で優勝したチーム「O.R.C.」(オリンパスソフトウェアテクノロジー)は、モデリング部門審査で最終審査に残れなかった。
モデルと性能の相関のほかに、今回新たな課題として浮上したのは「走行性能と信頼性のバランス」だと渡辺氏は指摘した。これは会場の照明環境によって顕在化したものである。渡辺審査委員長は「タイムトライアル部門を制するためには、いままでの単純な性能追求型ではなく、環境変化への適応力を強化した戦略が必要」かもしれないと、モデル審査ワークショップで語った。
タイムトライアル部門で優勝したチーム「O.R.C.」のコメントを引き合いに出して「設計変更のパラメータ化」が来年以降のトレンドになるかもしれないと渡辺氏は締めくくった(図2)。
図2 新たな課題の発見。大会2日目の午後に行われた「モデル審査ワークショップ」で、渡辺審査委員長が行ったプレゼンテーション資料を転載。今大会で新たな課題として浮上したのは、走行性能と信頼性をいかに両立するかだった
ETロボコン2006はこの後、モデル審査部門の優秀チーム、タイムトライアル部門も上位チーム、および審査員の特別推薦チームを選出し、今週開催される組込み総合技術展ET2006のチャンピオンシップ大会に臨む。モデルと性能の相関、環境への対応力、イノベーションといった今回の課題がどのように克服されていくか、注目していきたい。
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