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社長に認めさせた“プロ改コンサル”起用プロセス改善のセキララ告白(2)(3/3 ページ)

転職先の現場には“開発プロセス”自体が存在しなかった! 悩んだ末に社外のコンサルタント起用を社長に直訴。その顛末は?

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現場の人間が参加した“オーダーメイド”のプロセス作り

 コンサルタントによる現場の支援は半年前に終了し、自らの力による定着に向けた新たな正念場を迎えています。成熟度を突き詰めようとするならば、まだまだ上はいくらでもありますが、少なくとも負のサイクルではなくなり、良い方向に向かうサイクルがゆっくり動き始めています。

成果

担当者によるばらつきが少なくなった
これは、基本中の基本ともいえる、成果物を規定したことによります。何を作るかだけでなく、必要な項目や粒度、尺度などの内容は最低限必要ですし、レビューや承認のプロセス、変更への対応など、その成果物のライフサイクルを含めて規定することで、より完成度を上げることができます。品質の向上を重視すると、ついテスト工程に目が行きがちですが、上流工程をしっかり押さえたこともポイントです。

プロジェクトの状態が見えるようになった
プロジェクト計画や各種仕様書、作業工程や進ちょく状況などを、関係者全員が見えるように工夫した結果です。これは、ツールをうまく利用したことにもよります。例えば、印刷した書類がファイリングされているだけでは誰からも参照されなくなりますが、ツール上で作業工程や成果物からリンクされ、容易に参照できるようにしたことで、手軽に確認できるようになりました。

問題解決や改善に対する意識が変わってきた
「意識」は、変えろといわれて変えられるものではありません。この事例では、プロセスを作成し運用していく過程で、問題に対する一歩踏み込んだ考えをする習慣や、より良くしようという意識が生まれてきています。これが「企業文化」として根付いてしまえば、最大の強みとなります。

プロセス改善、今回の教訓

 さて、この開発現場がプロセス改善への一歩を踏み出せた理由は何でしょう。

 1つは、過去のベストプラクティスを参考にしながら、プロセスを作っていったことです。明文化やルール化はされていなくても、いままでのやり方でうまくいったケースがあるはず。それをヒントにすることで、現場に合ったプロセスを作ることができました。ただ、ベストプラクティスを集めても、そこからルールを作り出すのは、正直な話、簡単ではありません。そこで、CMMIやPMBOKなどの工学モデルのポイントをプロセスの組み立ての参考にし、実運用の部分は現場の実例を基にルール化していきました。

 もう1つには、コンサルタントと現場との信頼関係が鍵となっています。「考え」や「あるべき姿」を示してくれるコンサルタントではなく、改善推進チームの一員として自らが改善を実践していくやり方が、この現場にはマッチしたようです。最初はコンサルタントがリーダーシップをとり、活動していく過程で、徐々に目の付け所や考え方をチームに伝えていきました。最終的には、自立し、自分たちで改善を進められるようにならなければなりませんが、このようなコンサルタントとの関係によって、最初の立ち上がりを早めることができたのでしょう。

 そして、この課長の熱意に拍手。そして、その熱意と自社の状況から「やるしかない」と決断した社長に拍手です。開発プロセスの改善に着手しても、すぐに経営的な効果が表れることはありません。最初は投資です。でも、社長の中にあった危機感と、プロセスを改善しなければ品質は上がらないと判断した課長の危機感は、同じ方向だったのかもしれません。具体的な策に踏み出せずにいた社長を、この課長の熱意が後押ししたのでしょう。

 タイミングも良かったのかもしれません。開発プロセスを改善したいまとなっては、改善しなかったらどうなっていたかは、想像する以外に知る方法はありませんが、おそらく品質の低下がさらに進んでいたことでしょう。信用を失ってしまえば、企業の競争力は落ちてしまいますし、問題はもっと深刻になっていたかもしれません。改善は気が付いたときを好機として始めるのがよいようです。「そのうち……」と考えて先送りにしても、何も効果は上がりません。



 この現場では現在、実運用の中で部分的な修正を行いながら、プロセスの定着を進めています。同時に、新たな目標として、CMMIのレベル認証取得も考え始めました。改善活動の目的は、CMMIではありませんでしたが、実のある改善活動の結果としてCMMIの認証も可能ではないかと考えています。

「ヒントは足元に転がっている」

「思い立ったが吉日」

「鉄は熱いうちに鍛えよ」

 では、また次回をお楽しみに(次回に続く)


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