身の丈に合った小さな改善をコツコツと:プロセス改善のセキララ告白(1)(2/3 ページ)
組み込みソフトウェアの開発現場では、ボトムアップ的に行われるプロセス改善が効果的といわれる。その成功事例を紹介しよう
初めの一歩は情報収集のスキーム
アクション 1
リーダーはまず、実際にどれだけの作業があり、それぞれにどれだけの時間がかかっているのか、また、計画時点とどれくらい差があるのを収集しようと考えました。
まずは、実際の作業時間を正確に知りたいんだ。
しかし、とにかく日々の作業に追われている現場です。不安材料はいろいろあります。
- ただでさえ忙しいのに、日々の実績を正確に報告してほしいといったら、メンバーから反感を買うだけなのではないか
- 本当は、どれだけ遅れているのかを知られたくないのではないか
- もし、このアイデアに協力してくれたとしても、効果が出るまでには時間がかかる
- 自分だって時間があるわけではないのに、続けられるのだろうか
リーダーの不安は尽きません。
何かやってみなければ、何も変わらない。
リーダーは、メンバーにできるだけ負担を掛けないようにしたいと思いました。負担「ゼロ」は無理でも、軽量で簡単なツールを見つけ、それを利用して事実を「測定」しようと試みたのです。メンバーは、ツールに設定した各作業の予定時間に対する実績を入力するだけです。ツールのほかの機能は気にしなくていい。ルールは「前日の実績を毎朝一番で入力する」。
リーダーはこのプランを実施するに当たって、メンバーに自分の「思い」を説明しました。全員が納得してくれないとしても、できるだけ理解してほしいと思ったのです。
まず、自分たちがどういう状況なのか、きちんと知ろう。仮に、大幅に遅れているという数字が出ても、作業工程に抜けているものがあっても、それが私たちのいまの実力だ。自分たちの現実を測定して、実力をちゃんと知って、そこから少しずつ良くしていこう。
いくら簡単なツールといっても、手になじむまでは違和感が付きものです。それに、いままで「丼勘定」でしか考えていなかった進ちょくを数字で表すのですから、慣れるまでは「面倒くさい」に決まっています。ぶつぶついいながら、右往左往しながら、それでも少しずつ活動は動きだしました。
アクション 2
みんなの遅れの原因は何だろう。
さて、朝一番の実績入力がだんだん身に付いてきたころ、リーダーは次の策を考えていました。それは、毎日の全員ミーティングです。ミーティングの重要な趣旨は、いま起こっている問題を報告することです。作業実績の数字からは見えにくい、その遅れの原因となっている問題を認識するのです。小さなプロジェクトが絡み合っているこの部隊では、そのプロジェクトの中だけで問題を解決できるとは限りません。1人のプロジェクトもあるのですから。
全員ミーティングでの問題報告は、1人1分が目安でした。朝一番に入力された作業実績を確認しながら、遅れの原因などを報告します。全員が報告したとしても、20人なら20分で済みます。この20分のおかげで、問題を全員が共有でき、リーダーは部署全体の問題を把握したうえで対策を講じられるというわけです。
まずこれが初めの一歩。これを続けてみよう。
リーダーはメンバーの現状を考え、この時点でこれ以上は望みませんでした。測定には、継続が必須です。負荷が掛かり過ぎて、続けられなかったら意味がありません。そして、1年。決して派手ではない、地道な取り組みは、1つの区切りを迎えました。
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