組み込み開発でもEclipseを!:Eclipse Foundationのプロジェクト最新事情(3/3 ページ)
Eclipse Foundationでは、Eclipseを組み込み開発に応用する取り組みが行われている。その最新事情を紹介する
Eclipse 3.2とDSDPプロジェクトの展望
2006年6月にリリース予定のEclipse 3.2は、DSDPの各サブ・プロジェクトにとっても重要なマイルストーンになります。
Device Debugging
サブ・プロジェクトの参加者は、「Eclipse Debug Platform 3.1は商用デバイスのデバッグに使うには柔軟性が乏しい」と見なしていました。具体的には、下記の機能が望まれていました。
- デバッグ要素の柔軟な階層
- モデル駆動のビューの更新
- ユーザーインターフェイスとデバッグ・モデルの非同期の相互連携
- 変数ビューへの入力など、柔軟なビューの接続性
- 複数のセッションを同時にデバッグする機能
これらの要求に対応するために、Eclipse Debug Platformはさまざまなデバッガの独自実装をサポートし、広範なターゲット・システムとOSを連携できるようにする方針です。
Debug Platformのチームメンバーは、高い適合性を備えたインターフェイス層を含むソリューションを提案し、以下のことを可能にしようとしています。
- ビューとラベルコンテンツのカスタマイズ
- モデル駆動の更新
- ターゲットの変更を可能にするデバッガ操作
新しいデバイス・デバッグ・アーキテクチャは、Eclipse 3.2とともに実験的なAPIとしてリリースされ、幅広い開発者コミュニティに対してインターフェイスに対応するプロトタイプを作る機会を与え、1つのリリース・サイクルを経てから正式のAPIにする予定です。これらの新しいAPIプロジェクトの参加者は、この間にデバッガ・ビューの能力を強化することになっています。
Target Management
2006年1月、IBMはRemote System Explorer(RSE)の技術をオープンソース・コミュニティに公開しました。
Target Managementサブ・プロジェクトでは、Eclipse 3.2のリリースにより2つの重要なマイルストーンに対応する計画です。
- CDTの統合
- ターゲットの定義と選択、リモート・デバッグ起動設定
これらのマイルストーンにより、RSE技術をデバイス開発と本番運用に拡張できるようになります。
Mobile Tools for Java
このサブ・プロジェクトは、6月のEclipse 3.2のリリースの直後に、前述した技術のいくつかについて最初のリリースを行う計画です。このリリースには、モバイルJava開発に要求される鍵となる能力が含まれます。
- 実行環境の管理(複数のデバイス・エミュレータと実機環境)
- ビルド・プロセス(パッケージングと署名の強化)
- 本番運用
- プロジェクトやクラスの作成などに関する開発ツールの本質的な機能
6月のリリースに続いて、以下の問題に対処する予定です。
- ビジュアル・エディティング
- J2ME開発のためのスクリーン・フロー・ツール
- 開発者がデバイスのフラグメンテーションを管理するツール
- サポートのローカライズ
Native Application Builder
このサブ・プロジェクトでは、6月のリリースでWideStudioのアプリケーション・ビルダの技術をEclipse 3.2に移植する予定です。
次のステップでは、eRCP/eSWTプロジェクトのアーキテクチャおよびツール構成と共通化し、両プロジェクトが互いに親和性を持つ関係に発展させます。
将来の方向性
各サブ・プロジェクトは、Eclipse 3.2のリリース以後も長期にわたって開発を続けます。DSDPではさらに、組み込みソフトウェアの開発に有益なコミュニティ・プロジェクトをいくつか確認しています。その一部を以下に示します。
- ハードウェアの立ち上げ
- 半導体ベンダのツール・チェイン・サポート
- FPGAとDSPプログラミング
- シミュレーションとエミュレーションのツール
- OSとミドルウェアの設定
- EDA(Electronic Design Automation)
これらのサブ・プロジェクトの立ち上げは、組み込みソフトウェアの開発者や企業が積極的に参加するかどうかに掛かっています。Eclipse Foundationは常に新しい会員を歓迎し、組み込みソフトウェア開発の将来の方向に影響力を発揮できるように支援しています。
オープンソースを戦力化
4つのサブ・プロジェクトは、組み込みソフトウェア開発にとって大きな技術的挑戦課題になります。
オープンソース・コミュニティがソリューションを加速する以前は、個々の企業がこれらの問題に対処するために莫大な資源を投入していました。しかし、企業固有のソリューションが市場で生きられる期間は限られています。技術力を持つ企業が根本的な問題を協業して素早く解決するようになると、市場競争の土俵が変わります。つまり、どのように事を成し遂げるかは差別化要因にはならず、何を行うのかが重要になります。インフラに価値があるのではなく、インフラを使って作り出すアプリケーションに価値があるのです。
では、開発ツールを販売するビジネスは成立するのでしょうか?
答えは、「大丈夫」です。Eclipseフレームワークはオープンソースとともに、独自のプラグインを取り込むことができます。企業は開発環境を自分でカスタマイズしたり最適化できます。各社の優れた製品との互換性が高まると、自社の製品も使ってもらいやすくなり、関連製品にも関心を向けてもらうことができます。パートナーの製品も、自社製品の価値を高めてくれる存在になるのです。
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