ソフト開発を重視しない業界体質に変革を:組み込み開発者の本音トーク(前編)(2/3 ページ)
座談会形式で組み込み開発者のホンネを大公開する。前編では、ソフトウェア開発の重要性を理解しない上層部がヤリ玉に挙がった
C氏 それに、ソフトとハードには共通語がないんですよ(笑)。それぞれが自分たちの専門用語でしゃべるので分からない。全体を理解している人がいればいいのですが。ハード屋もソフト屋も職人だと、プロジェクトは結構大変ですよね。
B氏 携帯電話では通話しながらメールを着信するといったことが当たり前になってきているので、そのときに何を制御するのか、逆に何をしてはいけないのかなどを知る必要があります。特にハードには職人的な人が多い(笑)ようで、自分の担当部分しか分からないということが多く、機能と機能の関連については、私たちがハードの人たちから聞き出して押さえておかなければなりませんでした。ハードの専門的なことは分かりませんが、自分たちにかかわる部分は、広く浅く、分かっておかないと。
―― ソフトウェア開発が大変になったのは、ハードとの関連が大きな理由ですか? ハード依存の部分だけでなく、より上位のソフト自体が高機能になって工数が膨らんだという話を聞きますが。
B氏 携帯電話では、発売の期間が短くて、開発のサイクルが速い。しかも、1モデルを発売するのにも廉価版、高機能版など、多機種です。流用できるところもありますが、単純に高機能版を作ってから機能を減らせばいいというものではなく、価格を下げるために別の制御が必要になったりします。
C氏 昔は、マルチタスクじゃなかったですからね。並行処理なし。でもいまは並行処理が当たり前。いくつもの処理を動かしながら、制御しなければならなくなっています。タスク制御は大変なんですよね。
A氏 大変という意味では、ハードは見えるから分かってもらえるけど、ソフトは見えないこともあって、大変さがなかなか分かってもらえないというつらさをとても感じますね。「あっちのソフトは1人で作ったのに、どうしてここは1人でできないんだ」といった議論になってしまうんですよ。じゃぁ、ソフトを見てくださいといっても、オレは分からないって(笑)。そういう意味では、外的な要因からソフトが厳しくなってきているともいえるのかな。
何かを変えようと思う前に、まず眠りたい……
―― 組み込み業界でもソフトウェア開発の重要さが叫ばれていますが、実際にはソフトの大変さを分かってもらえていないのでしょうか。
A氏 IT系とは全然違うと思いますよ。根本的に分かってもらえていないんだなと感じることもあります。納期は決まっている、ハードが遅れる、でも納期は変わらない、ソフトで何とかしなさい……というのがいつものパターンです。ソフト屋はソフト屋なりに、何をしなければならないか頭の中で考えてはいるのですが、ハードが遅れると開発の期間だけが短くなって、最後はどこを削るかという話になってしまう。また、作っている側としては問題があると分かっていても、いったん動いているところを見せてしまうと、動かなくなった状態を見せるまでは、完成していないということを分かってもらえない。分かってもらえないつらさ、目に見えないもののつらさはありますね。でも、ソフト開発者側も、分かってもらおうという努力が足りないかもしれないとも思います。ソフト屋が、いままで十分な説明をしたかといえば、していないし。ソフトウェア開発をやってきた私がプロセス改善の勉強を始めて、周囲のソフト屋と話をすると、当初はそんなものがあるのかという感じでしたよ。ソフトのプロセス改善の話なのに、ソフトの人がまったく知らない。完全に閉じこもった世界だったわけです。
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